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高齢化人口の増加に伴う要介護者の急増を背景として、家族の介護に専念するために仕事を辞める人が増えています。企業にとっては中核となる従業員・働き手を失うこととなり、また、離職した当人も後悔するというケースは少なくなく、介護離職はひとつの社会問題になっています。介護離職を防ぐために、企業にはどのような支援ができるでしょうか。
ここでは介護離職防止のための支援制度や実施手順を紹介します。
介護離職とは
介護離職とは、家族の介護のために仕事を辞めることを指します。厚生労働省の調査によると、40~60代の中高年層に多いとされています。社会全体で高齢化が進み、要介護・要支援認定を受けている人も増加するなか、家族の介護を理由に離職する人は今後も増えていくでしょう。
企業にとっては、離職者の増加は痛手となるでしょう。特に、介護離職者の多くは知識や経験のある企業の中核を担う層であり、失った人材を補うのは容易ではありません。
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介護離職の原因
働きながら介護をする人が介護離職を決める理由には、「仕事を辞めて介護に専念したい」のように、本人の希望による場合も多くあります。しかし、一方で「自身の健康状態が悪化した」といったやむを得ない事情であることも多いようです。
また、「勤務内容・シフトの関係で両立が難しかった」「介護を理由に勤務条件を調整してもらうことが難しかった」など、職場環境を理由に離職を選ぶ人もいます。
介護離職によるメリットとデメリット(個人)
家族の介護に直面した時、介護と仕事の両立にかかる心身の負担が大きく、仕事への責任感があるほど、離職するしかないと考えてしまいがちです。メリットもありますが、デメリットが大きくなるケースもあるため慎重に判断する必要があります。企業側としても、長期的な視点で従業員の状況や意向を確認し、最適な支援を検討しましょう。
介護離職のメリット
- 介護に専念できる
これまで仕事につかっていた労力や時間を介護に投入できるため、身体的な負担を抑えられます。介護と仕事との両立における悩みやストレスから解放され、介護に専念できるでしょう。
- 介護にかかる費用を抑えられる
家族が介護をすることで、介護サービスにかかる委託費用を減らせます。ただし、安定した収入が見込めなくなると大きなメリットとはなり得ないかもしれません。
介護離職のデメリット
- 収入がなくなる
毎月の給与はもちろん、年金や退職金、ボーナスなど、生涯でもらえる収入にも影響が及ぶでしょう。
- 介護をする家族の人生設計が変わる可能性がある
キャリアが途絶えてしまうだけでなく、結婚や出産、引っ越しなどを諦めなくてはならない場合もあります。
- 離職前の条件での再就職が困難になる
年齢などの条件によりますが、正社員登用が難しくなるほか、これまでと同じ待遇での再就職は困難になるケースが多いでしょう。
- 介護者につきっきりになり負担が増す
常時介護となると家族の負担は増し、かえって精神的にも肉体的にもストレスがかかってしまうかもしれません。さらに、社会とのつながりが絶たれていると、介護の不安や疲れから孤独を強く感じることもあります。
介護離職を防ぐための支援制度
仕事を辞めれば介護に専念できるため、介護者の負担が減らせると思われがちです。しかし、実際には離職前よりも心身の負担が増えて、後悔しているという声が多いのも事実です。
ここからは、介護離職を防ぐための支援制度を紹介します。
介護休業制度
怪我や病気などにより、2週間以上にわたって介護を要する家族のいる従業員は、介護休業を取得できます。介護を受ける対象の家族1人につき3回まで、通算93日までの休業が可能です。介護が長期的に必要となる見通しの場合は、この休業期間を活かして介護サービスの選定や導入、施設の入居契約をするなど、仕事と介護を両立できるような環境づくりをするとよいでしょう。
なお介護休業は、開始予定日の2週間前までに従業員が書面等で申し出る必要があります。事業主側は、申し出を受けたら速やかに介護休業開始日や終了日を労働者へ通知しなくてはなりません。
参考:仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~ |厚生労働省
介護休業給付金
介護休業給付金は、家族の介護のために介護休業を取得した従業員のための経済的支援です。介護休業期間中に、休業開始前の賃金日額の67%相当額が支給されます。雇用保険に加入していることが条件のほか、雇用保険の加入期間など一定の受給要件があります。
従業員が介護休業を取得したら、事業主は休業終了日(介護休業が3か月を経過したときは介護休業開始日から3か月経過した日)の翌日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日までに、申請書とあわせて休業開始時賃金月額証明書をハローワークに提出しなければなりません。
介護休暇
介護休暇は、対象家族が1人の場合は年5回、2人以上の場合は年10日まで休暇を取得できる制度です。1日または時間単位で取得が可能です。通院の付き添いや介護サービスの手続きなどに活用できます。
参考:介護休業制度|厚生労働省
労働時間の制限
従業員は開始予定日の1ヶ月前までに書面などで請求します。従業員から申請があった場合、企業は勤務時間の制限をはじめ、勤務体制に配慮しなくてはなりません。ただし所定外労働・時間外労働・深夜業の制限については、事業の正常な運営に支障をきたす場合、労働者からの請求を拒めます。
- 短時間勤務等の措置
事業主は「短時間勤務制度」「フレックスタイム制度」「時差出勤制度」「介護費用の助成措置」のうち、いずれか1つ以上の制度を設けなくてはなりません。従業員は対象の家族1人につき、利用開始の日から連続する3年以上の期間で、2回以上利用できます。
- 所定外労働の制限(残業免除)
所定外労働の制限、いわゆる「残業」を免除します。利用期間は1回につき、1か月以上1年以内の期間で、介護が終了するまで回数の制限はありません。
- 時間外労働の制限
1か月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働を制限します。利用期間は1回につき、1か月以上1年以内の期間で、介護が終了するまで回数の制限はありません。
- 深夜業の制限
午後10時から午前5時までの深夜間、勤務を制限します。利用期間は1回につき、1か月以上6か月以内で、介護が終了するまで回数の制限はありません。
仕事と介護の両立支援の実施手順
介護離職を減らすためには、国の各種制度を周知させるだけでなく、社内の支援制度の創設・見直しが求められます。ここからは、社内における仕事と介護の両立支援の実施手順を紹介します。
1.従業員の仕事と介護に関する実態を把握する
介護をしている従業員、または、今後介護をする可能性のある従業員が社内にどの程度いるか把握しましょう。さらに、仕事と介護に関する不安や要望などをヒアリングすることで、自社に必要な両立支援が可視化されます。
厚生労働省のWebサイトにて実態把握調査票や実践マニュアルが配布されているため、活用するとよいでしょう。
参考:仕事と介護の両立支援 ~両立に向けての具体的ツール~ |厚生労働省
2.制度の設計・見直しを行う
国策の育児・介護休業法では、仕事と介護を両立するための各種制度について基準を定めています。自社の支援制度が法律の基準を満たしているか一度見直してみましょう。例えばどれかひとつ、短時間勤務等の措置としてフレックスタイム制度を採用している企業の場合、そのほか時差出勤制度や介護費用の助成措置など、各従業員の状況に応じた柔軟な働き方で持続可能な両立方法を複合的に検討してみることもおすすめです。
同時に、仕事と介護の両立支援制度を周知するための体制を整えます。従業員が介護休暇などの支援制度が社内に存在することを知らなかったというケースは多く、周知が十分でなかったために離職者が出てしまう事態を防ぐことが目的です。具体的には、周知する対象者や周知方法を検討します。
3.両立支援を実施する
介護に直面している従業員にヒアリングを行い、介護の実態や仕事との両立における不安を聴き取ります。従業員の望む働き方を把握し業務量を調整するほか、必要に応じて地域包括支援センターなどの専門施設を案内しましょう。ここでは事務的な作業に留めず、できるだけ従業員のメンタルヘルスケアを行えるよう細やかにサポートすることが理想です。
また、今後介護をする可能性のある従業員に対しては、両立支援制度について制度の内容や手続きの方法、問い合わせ窓口の案内を実施しましょう。そのほか、従業員から相談を受けたときの対応について人事担当者や管理職にも周知し、フォロー体制を整えていくことが重要です。
4.勤務における改善策を検討する
介護や育児の制度だけに頼らず、どの従業員もワークライフバランスを考えた働き方ができるように工夫をしていきましょう。例えば、システム導入により業務の属人化を解消する、チーム制を導入して複数名で業務を行う、リモートワークを導入する、などがあげられます。介護施設等からの急な呼び出しで従業員が早退・欠勤になっても他のメンバーでサポートできるような体制を整えておくことが重要です。
また、介護を理由に早退・欠勤することに後ろめたさを感じる人が出ないよう、困ったときはお互いさま、と休みを申し出しやすい職場風土を醸成していきましょう。
適切な支援の実施で介護離職による企業損失を防ごう
介護離職は企業にとっても損失が大きいため、「介護と仕事の両立に理解のある職場作り」が必要です。国の支援制度を活用するほか、自社の業務内容に応じた柔軟な勤務体制を用意し、従業員が介護に直面しても離職を選択せず仕事を続けられるように、制度設計と見直しを継続していきましょう。
株式会社UPDATERは、パートナー企業とともに、【企業向け介護コンシェルジュサービス みんなケア 】を提供しています。介護が必要になった従業員の相談対応から、各種手続きの代行・サポートまでを引き受け、しっかりとバックアップ。いざという時も、人事担当や管理職の方がコア業務に専念できる環境をご用意いたします。 ぜひご相談ください。