進和テックが抗ウイルスエアフィルター「ウイルスガード」をコロナ禍前に開発できた理由

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空気環境対策に欠かせない部品のひとつに、エアフィルターがあります。空気清浄機だけでなく、実は普段意識しないような場所にもエアフィルターが使われているのです。

進和テック株式会社は、そんなエアフィルターを製造・販売する業界のリーディングカンパニー。最近では抗ウイルスエアフィルター「ウイルスガード」を開発・販売するなど、時代のニーズを素早く取り入れています。

 

今回は、進和テック株式会社の代表取締役社長である渡邊裕元さんと代表取締役副社長の渡邊保孝さん、営業本部マイスターの加藤辰夫さんに、エアフィルター事業と抗ウイルスエアフィルター「ウイルスガード」の開発エピソードのほか、同社の空気環境対策の考え方を伺いました。

 

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エアフィルターを扱うようになったきっかけとは?

 

――まずは、空気環境対策に関わる事業を始めた経緯について教えてください。

 

渡邊裕元:弊社の歴史は、1946年にさかのぼります。エアフィルター事業を始めたきっかけは、私の祖父である創業者の渡邊武男がアメリカを訪問した際、たくさんの高層ビルがそびえていたことに大きな衝撃を受け、そこで使われているエアフィルターというものを知ったことでした。

窓の開かない高層ビルで、どうやって空気を入れ換えているのか聞いたら、外の汚れた空気をきれいにしてから中に取り入れるエアフィルターを使っていると。

 

進和テック株式会社 代表取締役社長 渡邊裕元さん

 

――当時の日本には高層ビル自体がありませんでしたからね。

 

渡邊裕元:そうですね。祖父はそれを見て、これから日本も高層ビルが建設される時代になり、エアフィルターの需要も高まるだろうと考えました。そこで、アメリカのエアフィルターの輸入・販売を始め、空気清浄の概念を初めて日本に持ち込んだのです。その後、1960年には日本エアフィルター株式会社を設立し、弊社でもエアフィルターを開発・製造するようになりました。

 

――御社のエアフィルターはどのようなところで使用されているのでしょうか?

 

渡邊裕元:エアフィルターにもさまざまな製品があります。例えば、HEPAフィルターと呼ばれる高性能なフィルターは、病院の手術室や半導体工場など、小さなゴミやちりが一切許されない場所で使用されています。また、あまり知られていないところでは、発電所の給排気システムにもHEPAフィルターが使用されています。HEPAフィルターをつけることで発電効率を上げられるのです。発電所のエアフィルターに関しては、弊社のシェアは8割に上ります。

 

――エアフィルターといえば空気清浄機やエアコンが思い浮かびますが、発電所でも使われているんですね。

 

渡邊裕元:はい。もちろん商業施設や博物館といった施設でも使われていますし、地下鉄でも弊社のエアフィルターが使用されているんですよ。地下鉄が走るたびに鉄の線路と鉄の車輪が削られて鉄粉が舞い上がってしまうので、換気システムに特殊なエアフィルターを使用して、ホームをきれいにすると同時にきれいな空気を大気に戻しています。地下鉄でのエアフィルターのシェアは、弊社がほぼ100%です。

エアフィルターは高性能であればいいわけではない

 

――エアフィルターにもさまざまな製品があるということですが、製品によってどのような違いがあるのでしょうか?

 

加藤:エアフィルターは空気を取り込む際に、ゴミやほこり、細菌などを通さないようにする役割があります。フィルターの目が粗ければ、大きなゴミやほこりしか捕まえることができませんが、ゴミなどによる詰まりが少ないので、交換の頻度が下がり、コストを削減できます。目が細かいと細菌や花粉までも捕捉できますが、目が詰まりやすく、交換頻度が上がって、コストもかかります。

 

進和テック株式会社 営業本部 マイスター 加藤辰夫さん

 

――エアフィルターの目は細かければいいというわけではないのですね。

 

加藤:そうですね。必ずしも高性能のエアフィルターを使えばいいというわけではなく、何を防ぎたいのかという目的と、コストとの兼ね合いになります。例えば、スギ花粉の大きさは30μm(1,000μm=1mm)ほどといわれていますので、スギ花粉だけを防ぎたいのであれば、30μmを通さないエアフィルターで十分です。

PM2.5は大きさが2.5μm以下の物質も含まれるので、PM2.5を防ぐのであれば0.5μmをしっかりキャッチするレベルのエアフィルターが望ましいですね。

 

――細菌やウイルスについてはいかがでしょう?

 

加藤:例えば、インフルエンザウイルスの大きさは0.1μmですが、ウイルスは人の呼吸に含まれる水分とともに空気中を漂います。咳やくしゃみで空気中に飛び出す際は5μmよりも大きいことが多いですね。

 

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抗ウイルスエアフィルターを生み出した技術屋の熱意

 

――コロナ禍になって空気環境を気にする人も増え、御社の事業にも影響があったのではないでしょうか?

 

渡邊裕元:一般的なエアフィルターに関してはコロナ禍で売上が大きく伸びたかというと、そうでもありません。コロナ禍以前から、すでに弊社の製品はあらゆる場所で使用されていましたので。むしろ、ホテル業界などでは、宿泊客の減少によって客室のエアフィルター需要も減っている状況です。

一方で、加藤が主導して開発した、抗ウイルスエアフィルター「ウイルスガード」の需要は高まっています。

 

――コロナ禍になって抗ウイルスエアフィルター「ウイルスガード」を開発されたのでしょうか?

 

渡邊裕元:いえ、そうではなかったのです。弊社が1993年に抗菌エアフィルターを発売して以来、抗菌剤や抗カビ剤なども専門的に分類されて世の中にたくさん出てきました。そこで2018年頃に、抗菌エアフィルターの後継製品を作ろうというプロジェクトがスタートしたのです。そのプロジェクトで製品化が決まったのが、抗カビエアフィルターでした。

 

――抗ウイルスエアフィルターではなく、抗カビエアフィルターだったんですね。

 

加藤:実はそのとき、私は抗ウイルスエアフィルター「ウイルスガード」の製品化も提案したのです。しかし、社内会議では「ウイルスはいつ流行するかわからないから、抗カビエアフィルターの製品化を進めよう」と決まり、抗ウイルスエアフィルターの提案は却下されてしまいました。

しかし、どうしても抗ウイルスエアフィルターをあきらめられなかった私と開発チームは、水面下でこっそり開発を進めていたのです。そして、試作品が出来上がったのが、2019年の12月でした。

 

――2019年12月は、まだ新型コロナウイルス感染症が流行する前ですね。

 

渡邊裕元:そうなんです。その後、新型コロナウイルス感染症が流行しはじめたので、社内の会議で「今から抗ウイルスエアフィルターを開発したら、どれくらいで製品化できる?」と加藤に聞いたのです。すると、加藤からは「もうできています」と。そこで初めて、加藤たちがこっそり開発を進めていたことを知りました。怒るに怒れなかったですよね(笑)。

 

――加藤さんは、なぜ抗ウイルスエアフィルター「ウイルスガード」の開発にそれほどこだわったのですか?

 

加藤:私が技術屋だからでしょうか。売れるか売れないかという点では、これまで世の中になかった物ですから、売りにくいのはわかります。しかし、日本でも世界でも初となるかもしれない技術への開発チームメンバーの挑戦を、あきらめさせることはどうしてもできなかったのです。

 

渡邊保孝:結果としては良かったですが、会社としては認めていないですからね(笑)。

 

渡邊裕元:加藤らしいと思いましたね。実際に完成した製品も、類似品と比べて性能は圧倒的に良いことが実証されたので、「世界で最も優れた抗ウイルスフィルター」とうたって販売しています。

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空気を可視化することで「本物」を選べるようになる

 

――コロナ禍をきっかけに、世の中の空気環境対策への意識が高まってきていますし、抗ウイルスエアフィルター「ウイルスガード」の需要が増えているのもわかりますね。

 

進和テック株式会社 代表取締役副社長 執行役員 渡邊保孝さん

 

渡邊保孝:確かに、空気環境への関心は高まってきたと思います。例えば、とある小学校からご依頼を受けて、卒業式と入学式の会場に弊社の抗ウイルスエアフィルターウイルスガード」を搭載した空気清浄機を設置しました。コロナ禍で人が集まることが難しい状況ですが、先生や保護者の方の想いもあって、弊社の技術でサポートさせていただきました。

ほかにも、スポーツの大会などで弊社の製品が使用されるケースも増えています。おそらく今後、コロナ禍が収束したとしても、この流れが止まることはないでしょう。いつかまた、新たな感染症が出てくるかもしれないのですから。

 

渡邊裕元:私たちが支援できることもあると感じましたね。まだ新型コロナウイルスワクチンを接種できない子どもたちの教育現場など、抗ウイルスエアフィルターのウイルスガードがあれば浮遊物を吸い込む可能性を最小限にとどめることができます。オンライン授業など必要な対応は進んではいますが、子どもたちには対面で元気に遊んだり、学んだりと、たくさんのことを経験して成長してもらいたいですね。

 

――空気環境への関心が高まる一方で、課題に感じることはありますか?

 

渡邊裕元:空気は目に見えないものです。ウイルスも目に見えないので、感染経路がはっきりとはわかりません。目に見えないということが、空気環境対策を難しいものにしていると感じています。つまり、空気環境対策の効果もわかりにくいということです。なので、さまざまな製品が出てきますし、中にはさほど効果がないものもあります。

 

――確かに、目に見えないと効果はわからないですね。

 

渡邊裕元:ですから、重要なのは空気環境を可視化することだと考えています。空気環境を可視化できれば、しっかりと効果がある「本物」 である弊社の製品を選んでもらえるようになります。

また、私たちのような企業が、正しい情報を発信していくことも必要なのかもしれません。日本の空気環境対策がしっかりと前に進んでいけるように、私たちもしっかりと取り組んでいく必要があると考えています。

その新しい取り組みのひとつとして、2021年10月、株式会社UPDATERと資本業務提携をしました。エアテック事業であるみんなエアーのIT技術を活用した「空気の見える化」と、私たちの長年培ってきた「本物」の技術で、空気環境の可視化や指標などの課題にも挑戦し、より安心・安全に納得いただける空気環境づくりを実現させていきたいと考えています。

 

――1946年創業の歴史を誇る空調業界のパイオニアと、「空気の見える化」に取り組む新規事業みんなエアーとの業務提携は新しい挑戦ですね。

 

渡邊裕元:弊社は私たちの代で3代目となりました。祖父兄弟が創り上げ、父兄弟たちが守ってきたこの会社で、私たちはさらなる進化に挑戦していきます。みんなエアーとパートナーシップを組み、双方の持つ強みを活かすことで、世の中に新しいソリューションをつくりだしていきたいのです。

2012年に私が代表取締役社長に就任し、会社機構も一新しました。「Challenge」「Teamwork」「Rank up」をビジョンに掲げ、社員全員がさまざまなことに挑戦し、協力し合い、レベルをどんどん上げていくことができる社風があります。

 

渡邊保孝:私たちはビッグカンパニーではなく、グッドカンパニーを目指しています。社員や仲間と共にこれからも、「人のために、環境のために」挑戦、成長し続けていきたいと思っています。

 

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<プロフィール>

渡邊裕元

進和テック株式会社 代表取締役社長

2012年4月、代表取締役社長に就任。就任後は会社機構を一新し、これまでの経験や技術力を活かしてみんなエアーとの提携など躍進を目指す。

 

渡邊保孝

進和テック株式会社 代表取締役副社長 執行役員

兄である社長の裕元さんをサポートしつつ、財務関連を担当。日本エアフィルター株式会社の代表取締役社長も兼任している。

 

加藤辰夫

進和テック株式会社 営業本部 マイスター

抗ウイルスエアフィルター「ウイルスガード」を開発。営業本部で全体を統括するだけでなく、マイスターとして開発に携わる。

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