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新型コロナウイルス感染症の位置づけはこれまで、「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」とされていましたが、令和5年5月8日から「5類感染症」になりました。
政府が一律にマスクの着用や検温、外出自粛を求めることがなくなったことになりますが、新型コロナウイルス感染症が完全終息したというわけではなく、私たちは日常生活において、基本的な感染症対策に自身で取り組み、自分で身を守る、会社を守るということが必要です。
新型コロナウイルス感染症への適切な対策として、厚生労働省は、1.「窓開けによる換気:換気回数※を毎時2回以上(30分に一回以上、数分間程度、窓を全開する。) とすること。」 2.「空気清浄機の併用:空気清浄機は、HEPAフィルターによる濾過式で、かつ、風量が毎分5㎥程度以上のものを使用すること。」 3.「二酸化炭素濃度の計測:必要換気量を満たしているかを確認する方法として、NDIR式の二酸化炭素濃度測定器を使用し、室内の二酸化炭素濃度が1000ppmを超えていないかを確認すること。」などを有効策として発表しています。
この記事では、電気通信大学大学院情報理工学研究科の石垣陽・特任教授監修の動画コンテンツをもとに、「エアロゾル感染を防ぐ空気清浄機と正しい使い方」を解説します。
(参考: 「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法|厚生労働省)
参照動画はこちら➤ 空気清浄機の光と闇!
エアロゾル感染対策にはHEPAフィルター搭載型空気清浄機が有効
新型コロナウイルス感染症の感染経路の1つであり、喫緊の課題として対策強化が必要とされたのがエアロゾル感染です。エアロゾルは、空気中に漂う粒子のことを指し、飛沫よりも小さく軽いため、長時間浮遊するのが特徴です。そのエアロゾルの浮遊する空気を停滞させず、新鮮な外気と入れ替えることで感染拡大を防ぐためにも、「換気」が重要であることは広く知られていることでしょう。
しかしながら、暑い夏日や冬の寒い時に、窓開けによる換気を実行することは、かえって体調を崩すことになるリスクやエアコンなどの無駄なエネルギー使用になるケースも考えられ、適切な対策とは言えません。
そこで、より有効な対策が空気清浄機の活用になります。
エアロゾル感染対策として、WHOや厚生労働省が推奨している空気清浄機は、HEPAフィルターを搭載した機種です。HEPAフィルターとは、花粉やほこりをはじめとする空気中のごく小さな粒子や最も除去しにくいとされている0.3ミクロンの微粒子を捕集することができる「高性能な微粒子エアフィルター」のことであり、エアロゾル感染の原因となるウイルス飛沫核を99.97%除去できると実証されています。
HEPAフィルター搭載の空気清浄機(進和テック製のウイルスガードウォール)に、スモークマシンでエアロゾルを噴霧している様子。ウイルスガードに搭載したHEPAフィルターはJIS規格で定められているとおり、99.97%エアロゾルを吸着します。(参照:石垣教授コンテンツ動画より https://www.youtube.com/watch?v=7oEyh7QhYYg&t=289s)
空気清浄機の正しい置き方とは
JIS規格のHEPAフィルター搭載型空気清浄機は、ウイルスをはじめとする、粒径が0.3㎛の粒子に対して99.97%以上の粒子捕集が可能となり、感染症対策には有効な手段です。ただし、その空気清浄機の設置位置や設置向きが正しく、清浄機能が最大限に発揮できているかどうかが大切です。
空気清浄機は一見、メーカーのロゴや操作パネルのついた面が正面と思われがちで、その向きで室内に設置しているケースも多く見受けられます。しかし、空気を取り入れるのは格子上フィルターのついた面で、主に背面側であることが多く、フィルターを通して汚れた空気を吸い込み、浄化させた空気を室内に排出するという仕組みです。有害物質を吸着するためのフィルター側を、壁面に接するように設置すると空気清浄効果が半減してしまう可能性があるため注意が必要です。
機種によっては、側面や表面に空気取り入れ口がある製品もあるため、よく確認して設置するようにしましょう。
また、家族や施設に感染者が出た場合などは、感染源となりうるエアロゾルを発生する可能性のある人の口元に空気清浄機の空気取り入れ口(フィルター)が近ければ近いほど効果的です。
クラスター発生を防ぐためにも、空気清浄機の設置場所や向きを適切に検討しましょう。
(参照:石垣教授コンテンツ動画より https://www.youtube.com/watch?v=7oEyh7QhYYg&t=289s)
空気清浄機取扱いの注意点
家庭用空気清浄機で使われているものにはエレクトレット方式で作られたものがあります。エレクトレットHEPAフィルターは、捕集力が高くコンパクトで安価という特長があります。しかし、一つだけ注意しなければならない点があります。エレクトレットHEPAフィルターの場合、静電気で空気中の粒子を捕集しているため、アルコールをかけると除電されてしまい、微粒子の除去性能が半分以下になり、二度と元には戻りません。掃除や除菌のためにアルコールを使用してのふき取りはもちろんのこと、空気清浄機本体の近くで手指消毒などのアルコール利用も避けなければなりません。石垣教授の調査*によると、空気清浄機(エレクトレットHEPAフィルター)へのアルコールの禁忌については約9割の人が知らず、医療従事者の約4割が空気清浄機にアルコール噴霧した経験があるという回答があったそうです。(n=500)(*参照:プレプリントmedRxiv April 11, 2022.公開)
エレクトレットHEPAフィルターは、日本国内で流通している多くの空気清浄機に採用されているため、特に注意が必要です。ただし、グラスファイバーHEPAフィルターはアルコールによる影響を受けません。市販品では多く出回っていないものの、購入の際には指標にするのもよいでしょう。
空気清浄機の選び方
空気清浄機を導入する際に迷うポイントとして、部屋の広さに対しての空気清浄機の大きさや性能(何畳対応のものを買えばいいのか)があります。しかし、エアロゾル感染対策においてはメーカーが示す「何畳に対応しているか」よりも、風量を確認することをおすすめします。風量とは、空気清浄機により濾過されたキレイな空気の出てくる風の量のことであり、1時間に何㎥の空気を濾過できるかという指標で表されます。
厚生労働省が感染症対策に推奨しているのは、1時間あたり300㎥以上の風量をもつHEPAフィルター搭載型の空気清浄機です。ビル管理法によると、1人あたりの換気能力は1時間あたり30㎥を指標にしています。したがって、空気清浄機の風量が1時間あたり300㎥だとすれば、10人程度の浄化能力があると判断できます。
このように、空気清浄機の風量の数値を30(1人/hあたりの換気能力)で割ることで、1台でおよそ何人に対応できるのかを判断することがおすすめです。
また広い部屋の場合、サーキュレーターを併用すると、浄化された空気が広がりやすく効率的です。ただしサーキュレーターを使用する場合は、万が一感染者がいた場合には風下感染のリスクがあるため、直接、風を人に当てないようにしましょう。室内の空気を循環させる目的や、入り口に設置して汚い空気を押し出すために使用することが有効です。
(参照:石垣教授動画コンテンツより 「進和テック製 ウイルスガードウォール(空気清浄機)でのシミュレーション」 https://www.youtube.com/watch?v=7oEyh7QhYYg&t=289s)
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石垣教授動画コンテンツ 「これが国産最強HEPA ! 病院密着取材」
捕えたウイルスを99.99%以上死滅させ撃退できると謳うHEPAフィルターを搭載した空気清浄機 「ウイルスガードウォール(進和テック製)」は、多くの医療現場で採用されています。東京・調布市にある東山病院にウイルスガードウォールが導入された際の密着取材では、浄化テストの様子も紹介。その威力もご覧いただけます。
感染症対策の空気清浄機にはJIS規格のHEPAフィルターを
HEPAフィルター搭載型空気清浄機と謳っていても、JIS規格に適合しない製品も度々販売されているため、購入時には注意してください。気になる場合にはメーカーに問い合わせるのがよいでしょう。
また、イオン・オゾンなどの付加価値をつけた空気清浄機については、エアロゾル感染対策の観点からみると効果的である証拠となる研究結果はまだ発表されていません。エアロゾル感染対策に重きをおいて空気清浄機を選ぶ場合は、JIS規格のHEPAフィルター搭載型で、1人/h あたり30㎥の風量を確認できるものを優先して選ぶことをおすすめします。
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空気環境対策にはHEPAフィルター付き空気清浄機などの活用が大切!
国立大学法人 電気通信大学 石垣陽特任教授
YouTubeチャンネル
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研究室サイト・人類のためのデザイン研究室
https://www.design4humanity.com/