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感染症対策などのために室内の換気をするとき、空気の入れ換えがしっかりできているのか不安に感じることはないでしょうか。空気は目に見えないものだけに、何を目安にして換気をすればいいのかがわかりづらいものです。しかし、実は装置を使ってCO2濃度を測定すれば、空気の状態や換気をするタイミングがわかるようになります。
ここでは、オフィスや店舗、住宅でも役立つ、上手な換気方法について見ていきましょう。
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CO2濃度やppmとは?
まずは、CO2濃度という言葉の意味と、濃度の表記などで必ず出てくる「ppm」といった単位の意味について解説します。
CO2濃度とは、二酸化炭素が1㎥中に含まれている割合のこと
CO2とは二酸化炭素のことで、通常は空気中に約0.03%含まれている、色もにおいもない気体です。そして、ppmは、大気(空気)中の微量物質の濃度を示すときによく用いられ、CO2濃度の単位として使われています。
ppmは「parts per million」の略で、日本語では百万分率のこと。「100万分のいくつ」という割合(比率)を示します。1ppmは「100万分の1の割合」という意味です。
なお、大気中の物質の濃度は、「体積比」を用いて表されます。体積比とは「1㎥の中にその物質がどれくらい存在するか」ということです。濃度を表す場合は「体積濃度」といい、1㎥の大気中にその気体がどれくらい存在するかを意味します。体積濃度の場合、厳密には体積比であるため「ppmv(parts per million by volume=体積百万分率)」を用いますが、慣例として「ppm」で表現されることが多いです。
ですから、1㎥の大気中にその物質が100万分の1(1c㎥分)存在する場合、その物質の濃度は1ppmとなります。
CO2濃度の場合も同様で、1㎥の大気(空気)の中に、どれだけ二酸化炭素が含まれているかでCO2濃度が決まります。CO2濃度が1ppmの場合、1㎥分の大気にあるCO2だけを集めると、1c㎥になるということです。
■気体の濃度を表す1ppmとは?
1ppmを%に換算すると0.0001%
ppmと同様に割合を示す単位に、%(パーセント)があります。こちらのほうが、なじみがあるのでわかりやすいかもしれません。%は日本語では百分率といいます。ppmは百万分率なので、%単位をppm単位に換算する際には、値を10,000倍します。
1%は10,000ppmです。また、1ppmは0.0001%となります。
例えば、CO2濃度400ppmというのはCO2濃度0.04%と同じです。1㎥(100万c㎥)の大気中に100万分の400、つまり400c㎥分のCO2が含まれている状態を示しています。
CO2濃度を測る必要性
室内のCO2濃度は、1,000ppm以下に抑えるのが目安とされています。なぜ、CO2濃度を測る必要性があるのか、なぜ1,000ppm以下なのか、詳しく見ていきましょう。
CO2濃度が上がると人体に影響が出る
ビル管理法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)には、室内環境を維持するための空気環境条件として、浮遊粉塵の量や一酸化炭素の含有率などとともに、CO2濃度(二酸化炭素の含有率)を1,000ppm以下に抑えるようにと定められています。
■ビル管理法における空気環境基準(空気調和設備を設けている場合)
項目 | 基準 |
---|---|
浮遊粉塵の量(※) | 0.15mg/㎥以下 |
一酸化炭素の含有率(※) | 100万分の10以下(=10ppm以下)
特例として外気がすでに10ppm以上ある場合には20ppm以下 |
二酸化炭素の含有率(※) | 100万分の1,000以下(=1,000ppm以下) |
温度 | 17℃以上28℃以下
居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと |
相対湿度 | 40%以上70%以下 |
気流(※) | 0.5m/秒以下 |
ホルムアルデヒドの量(※) | 0.1mg/㎥以下(=0.08ppm以下) |
※機械換気設備を設けている場合は遵守する必要がある。 |
なぜ、CO2濃度の基準が1,000ppmなのかというと、CO2濃度は高くなると、人体に良くない影響が出始めるからです。具体的には、1,000ppm以上で知的活動(問題解決能力や意思決定能力)の低下が現れ始め、濃度が上がるにつれて心拍数や血圧に変化が生じ、息苦しさや頭痛、眠気、倦怠感などを感じたりするようになるといわれています。CO2濃度が、オフィスなどの生産性に影響が出てしまうのです。
なお、ビル管理法における1,000ppmという基準値は、元々、世界保健機関(WHO)の報告書を参考に設定されたと考えられています。当時はエビデンスが十分とまではいえなかったのですが、現在では学術的にもこの数値は妥当なものだと認められています。
出典:一般社団法人室内環境学会「空気環境中における二酸化炭素の吸入曝露によるヒトへの影響」(2018年8月)
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換気をしないとCO2濃度が上がる
人がいる室内のCO2濃度は、換気をせず密閉された状態だとだんだん上がっていきます。これは、人が呼吸して吐く息(呼気)に、多量のCO2が含まれているためです。人間が安静にしているときよりも、動いているときやスポーツなどをしているときのほうが空気中のCO2の量は多くなります。
また、当然ながら、狭い場所にたくさんの人が集まるほどCO2濃度は早く上昇し、調理などで火が使われれば、それもCO2増加の原因になります。
CO2濃度が感染症対策の目安にもなる
CO2濃度は、感染症対策として室内の換気状態をチェックする際の目安になるとも考えられています。
厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、新型コロナウイルス感染症対策の一環として、商業施設等の管理者向けに「冬場における『換気の悪い密閉空間』を改善するための換気の方法」という資料をとりまとめて公表しています。
この資料には、「必要換気量を満たしているかを確認する方法として、二酸化炭素濃度測定器を使用し、室内の二酸化炭素濃度が1,000ppmを超えていないかを確認することも有効です」とあります。
出典:厚生労働省「冬場における『換気の悪い密閉空間』を改善するための換気の方法」(2020年11月)
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必要換気量とは?
厚生労働省の資料などに出てくる「必要換気量」とは、室内の空気を清浄に保つために必要と定められた換気量のことで、「1人あたり毎時30㎥」を確保することが必要とされています。
しかし、実際に換気を行うときには、この必要換気量の数字を参考にするよりも、「CO2濃度1,000ppm以下」をチェックして、必要な換気が行われているかを判断したほうが簡単です。厚生労働省も、このやり方を推奨しています。
ただし、感染予防に関しては、CO2濃度が1,000ppm以下なら防げるというわけではありません。換気の悪い密閉空間は、新型コロナウイルス感染症のリスク要因のひとつに過ぎず、感染予防にはほかにも人が密集した空間や密接な接触を避けるといった対策を施す必要があります。あくまで、室内空間の換気の目安であると捉えておきましょう。
換気のタイミング
二酸化炭素濃度測定器を使ってCO2濃度をチェックし、1,000ppmに近づいていたら早めに換気をします。これが換気の程良いタイミングです。
測定器はCO2測定器、CO2センサー、CO2モニター、CO2濃度測定器といった名称で検索することができます。
株式会社UPDATER(旧社名 みんな電力株式会社)のエアテック事業「みんなエアー」では、CO2濃度を計測してクラウド上で管理し、事業者へのサイネージ表示や管理画面での分析・通知、アフターサポートまでついた「MADO(マド)」という空気のDXサービスを提供しています。こうした総合的なサービスを利用すれば、確実に室内のCO2濃度と空気環境をコントロールすることが可能です。
上手な換気の方法
最後に、住宅およびオフィスや店舗における、上手な換気のコツをご紹介します。窓がある場合は定期的に窓を開放する、窓がない場合は空調設備を活用するなど、それぞれの方法で上手に空気の入れ換えを行ってください。
住宅の上手な換気方法
2003年の改正建築基準法により、2003年7月以降に建てられたすべての住宅には、24時間換気システムが設置されています。まず、この24時間換気システムを常時オンにして、正しく使用してください。加えて、台所の換気扇を使うのも有効です。そのときは、台所のそばにある窓は開けないようにします。
窓を開けて換気する場合は、なるべく対角線上にある2ヵ所の窓を開けて空気の通り道を作りましょう。窓が1つしかない場合はドアを開け、さらに扇風機を窓の外に向けて部屋の空気を逃がすのがおすすめです。窓がない場合は、部屋のドアを開けて扇風機やサーキュレーターを部屋の外に向けて設置し、室内の空気を外へ出すと効率良く換気ができます。
■部屋の窓が対角線にある場合と窓が1つのみの場合の換気方法
オフィス、店舗の上手な換気方法
オフィスや店舗の場合も、まずは設置されている換気設備を確認しましょう。換気設備や換気口がどこにあるかを把握し、物の陰に隠れていないか、汚れていないかをチェックし、正しく換気設備を使って換気します。
窓やドアを開けて空気の通り道を作る場合も、住宅と同様です。なかなか風が入りにくいときは、空気の入り口を小さく、出口を大きく開けると風が通りやすくなります。窓を開ける広さなどを調節してみてください。
窓がない会議室などは、ドアを開けて扇風機やサーキュレーターを置きます。その際、換気口が部屋の外にあるときはサーキュレーターなどで部屋の外に空気を出し、換気口が部屋の中にあるときは部屋の中に空気を送り込んでください。
■窓がない会議室の換気方法
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CO2濃度を測定して換気の目安に
CO2濃度を測定して換気の目安にすることは、職場の生産性低下を防ぎ、感染症対策の一環にもなります。オフィスや店舗などの空気環境を可視化して、安心と安全をしっかり確保しましょう。
株式会社UPDATER(旧社名 みんな電力株式会社)のエアテック事業「みんなエアー」では、空気環境を可視化し、データの分析・通知・アフターサポートまでを行うクラウドサービス「MADO」を提供しています。「MADO」は、オフィスや店舗の空気中に含まれる二酸化炭素をはじめ、PM2.5、揮発性のガスといった物質を計測し、クラウドに送信。事業者のコンピューターやタブレットなどのデバイスに表示し、その空間の空気がどのような状態なのかを可視化できるため、換気やその他状況に応じた対策を行うことが可能です。
オフィスなどのCO2濃度や空気環境が気になる方は、ぜひご利用を検討してみてはいかがでしょうか。