室内に潜む見えないリスク!石垣陽特任准教授に聞く空気環境対策

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コロナ禍になって以降、空気環境対策の重要性が世の中に知られるようになってきました。空気環境対策を行うためにまず大切なのが、室内の空気環境を可視化すること。そして、空気環境の可視化には、二酸化炭素濃度測定器(CO2センサー)を使う必要があります。

今回は、空気環境の可視化にCO2センサーが必要な理由やCO2センサーの選び方について、電気通信大学大学院情報理工学研究科の石垣陽特任准教授に話を伺いました。

 

 

市民が見えないリスクについて知ることを手助けしたい

 

 

 

――まず、石垣先生の研究分野について教えてください。

 

石垣:私の研究分野は「リスク環境学」で、世の中に環境のリスクについて正しく伝えるということを行っています。例えば、1950年代に水俣病が起こりましたよね。その原因について、専門家は有機水銀だとわかっていたんですが、当初、地元の人たちはその原因を知りませんでした。有機水銀のセンサーもなかったので、原因について広まるまで長い時間がかかってしまったんです。

 

――今のようにSNSなどもありませんでしたからね。

 

石垣:そうですね。SNSやセンサーがあれば、水俣病はそこまで広がらなかったのかなと思っています。なので、ITやメディアを使って環境リスクについて知ることを手助けできればと思い、環境センサーを作ったり、それを普及させたりという活動を行っています。

 

――石垣先生はさまざまなセンサーの監修を行っていますが、どのような思いで活動されているのでしょうか?

 

石垣:私は「市民目線」ということを心掛けているのですが、市民が主体となって環境を測定し、疑問があったら専門家が手助けできればいいと思っています。そもそも環境にリスクがあるということを、知らない人もたくさんいるんです。その気づきのためにも、市民が測定できるということが重要だと思います。

 

 

ウイルス感染の原因を探るには、現場を調査することが大切

 

 

 

――石垣先生はコロナ禍でクラスターが発生した病院や保育園などの施設に対して、ボランティアで助言や指導をされているそうですが、なぜそのような活動をされているのでしょうか?

 

石垣:クラスターが発生した後も、対策が不十分な施設がたくさんあるからです。そもそも日本では、クラスター発生時の検証や指導が十分にできていません。感染者数を報告したり統計を取ったりするだけでなく、現場を調査することが最も大切なのですが、それができていないのです。

クラスターが発生した現場を見てみれば、例えば、換気扇が壊れていたのでしっかり換気できていなかったといった理由がわかりますし、ほかの場所でも未然に防ぐために原因や対策を共有しなければなりません。でも、誰もやらないので自分でやるしかないと思って調査しています。

 

――調査した結果、空気環境改善のためにどのようなアドバイスをされるのでしょうか?

 

石垣:例えば、新型コロナウイルスに感染する理由は、接触感染と飛沫感染、エアロゾル感染の3つです。このうち、接触感染は消毒や手洗いで防げます。飛沫感染はマスクやアクリルパネルで対策している所が多いですよね。問題はエアロゾル感染です。呼気に含まれるウイルスが空気にのって拡散してしまうのですが、エアロゾル感染を防ぐ方法はマスクと空気清浄、気流制御、そして換気しかありません。

 

――マスクはもう多くの人が対策できていますね。

 

石垣:はい、なので空気清浄、気流制御、換気を行うことが大切です。空気清浄機を設置し、窓を開けて自然換気を行うといったことを指導します。また、病院などでは気圧管理も大切で、気圧管理などができていないと、室内の空気が気圧の低い通路などへ流れていってしまい、そこで感染が起こってしまうということもあるんです。そうならないような気圧管理のアドバイスを行ったり、換気口を清掃してほこりを取ったりするアドバイスをしています。

 

 

人間はCO2を体感できない!CO2センサーで空気環境を可視化

 

 

 

――換気ができているかどうかは、どのように判断すればいいか教えてください。

 

石垣:判断の基準となるのは空気中のCO2濃度です。CO2は人の呼気に多く含まれているので、室内のCO2濃度が高ければ、人の呼気が室内に滞留していて換気ができていないということなのです。

例えば、新型コロナウイルス感染症の感染者は、CO2も吐き出していますが、ウイルスそのものも吐き出しています。そのため、CO2濃度を計測することで、ウイルスに感染するリスクの指標にもできるというわけです。ちなみに、屋外でのCO2濃度は400ppmだといわれていて、日本では1,000ppm以下であれば換気の悪い空間にはあたらないとされています。

 

――CO2濃度は体感できるものなのでしょうか?

 

石垣:あまりにもCO2濃度が高くなるとあくびが出るといったこともありますが、基本的にはCO2濃度を人が体感することはできません。だからこそ、CO2センサーを用いてCO2濃度を計測することが重要なのです。

 

――確かに、数値で見えるとわかりやすいですね。CO2センサーを購入する場合は、どのように選べばいいでしょうか?

 

石垣:みんなエアーのMADOで採用しているセンサー機器と同じNDIR方式という光学式のセンサーを選ぶことが大切です。それから、CO2センサーは長く使うと計測値がずれてくるので、それを補正できる機能がついているものを選ぶといいでしょう。

また、あまりにも安いCO2センサーはおすすめできないですね。安価なCO2センサーの中には、正確にCO2濃度を測れないものもあります。CO2ではなく空気中のにおいやガスの量を計測しているので、アルコールで消毒した手指を近づけるだけでもCO2濃度を誤検出してしまうのです。

 

――具体的にどれくらいの価格のCO2センサーを購入すればいいのでしょう?

 

石垣:感覚的には、最低でも1万円くらいのものを選んだほうがいいのではないでしょうか。値段だけでは判断しにくいですが、粗悪なCO2センサーが出回っているということは、認識しておいたほうがいいと思います。

 

 

潜んでいるリスクを知るために、CO2センサーを活用しよう

 

 

 

――CO2センサーの効果的な使い方についても教えてください。

 

石垣:CO2センサーは感染症対策のひとつですが、マスクやアクリルパネルと違うのは、ただ設置しただけでは意味がないということです。CO2センサーはあくまでもCO2濃度を可視化するためのものです。そのため、濃度が高くなったらどう対策するかということまで含めて考えておく必要があります。また、できれば1週間くらい、定期的に数値をチェックして記録することも大事ですね。データ収集を続けると、そこから見えてくることもあるからです。

 

――例えば、どういったことが見えてくるのでしょうか?

 

石垣:しっかりと換気されている飲食店で、特定の時間だけCO2濃度が大きく上がるというケースがありました。調べてみたところ、閉店した後にお客さんはもういないからということで、換気を全部やめてしまっていたんです。CO2センサーは、こうした隠れた課題に気づくきっかけにもなります。

また、定点で観測することだけでなく、室内を面で見ることも大切です。風上と風下を把握して、どこに空気清浄機を置くかといったことを検討したほうがいいでしょう。

 

――測定しなくても、なんとなく空気環境が悪そうだとわかるような室内の特徴はあるのでしょうか。

 

石垣:換気が悪いとにおいが残るので、時間が経っても食べ物や人のにおいが残っている所は換気が悪いといえるでしょうね。あとはカビが多い部屋のほか、インフルエンザや風邪にかかる人が多い部屋なども挙げられます。

空気環境が悪い所にはリスクがあるということを理解し、MADOなどで空気環境を可視化することで対策を行ってほしいですね。

 

 

空気環境についてのお悩みは、空気の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

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