成長のカギを握るのは健康経営
ヘルスケア製品の信頼性を支えるアイメックRD

株式会社アイメックRDはCRO(開発業務受託機関)※として、ヘルスケア関連企業が開発する製品の有効性や安全性試験の支援を行なう会社です。2019年の健康企業宣言を契機として、健康優良企業の「銀」の認定および「金」の認定を次々と取得し、今年3月には「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)」の認定を受けています。この数年間に本格化した健康経営について、その取り組みのきっかけや成果、さらに今後の課題についてお話を伺いました。

 

※CRO(Contract Research Organization)とは、開発業務受託機関のこと。食品・製薬会社などから依頼される製品開発段階での臨床試験や製造販売後調査についての業務を指します。

 

健康経営優良法人の認定は、健康経営を進展させる推進力に

取締役 須藤 幸子さん

 

―――アイメックRDさんはヘルスケア領域のCRO(開発業務受託機関)ということですが、具体的にはどんなことを行なうのでしょう。

須藤:食品を主としたヘルスケア製品の研究・開発における臨床試験の支援を主な事業としています。2018年に前身企業のアイメックが株式会社RDサポートの一員となり、現在のアイメックRDが設立されました。なので、前身企業からの実績を踏まえると約20年の実績があります。

例えば、メーカーがサプリメントや健康食品を製造販売する際には、研究開発の段階でヒト臨床試験を実施し、人に摂取していただくことで、どのような作用や効果があるかを確認していきます。そこで得られたエビデンスをもとに開発のサポートすることが我々の主な業務です。

 

―――健康経営優良法人の取得は、どんなことからスタートしたのですか。

須藤:弊社を含めてRDグループの事業は、そのほとんどが健康、ヘルスケア、そしてライフサイエンス領域に関連しています。「私たち自身が健康でなければならない」という弊社代表の理念のもと、働きやすい職場環境の整備や社員の健康管理には以前から注力してきました。

また、現在は優秀な人材の確保・育成・定着がこれまで以上に重要な課題となっている中で、健康経営は企業の成長を支えるカギとなる要素と捉えています。その中で健康経営を目指すことはごく自然な流れであり、「健康経営優良法人」という明確な目標を掲げ、戦略的に取り組むことで社員の意識向上が期待でき、健康経営の推進にもつながると考えています。

そして私たちは、2019年に「健康企業宣言」を行い、同年内に「健康優良企業・銀」の認定を取得しました。

 

「健康優良企業・銀」の認定とスペシャリストの加入で、取り組みが一気に加速

管理部 善積 綾子さん

 

―――「健康優良企業・銀」の認定から「健康経営優良法人」の取得まで、順調に一気に進まれたように感じますが、その成功のポイントはどのような点にあったのでしょうか。

須藤:そうですね、明確に目標を設定することが非常に重要だと思います。「銀」の認定を取得したら「金」の認定を目指し、その先へと進めていく中で自信や勢いがつき、社員の協力も得やすくなります。もうひとつ大きな要因としては、その頃に管理栄養士資格を持つ善積がこのプロジェクトに入ってくれたことです。彼女のような専門知識を持つ人材がいなければ「銀」の認定で足踏みしていたかもしれません。彼女が加わったことで順調に進めることができたと思います。

 

―――「健康優良企業・銀」の認定後、取り組みに加わった善積さんの印象はどうでしたか。

善積:社内的なコンセンサスはまだ固まっていなかったものの、基本的な部分はすでに整っていたように思います。その時点で必要だったのは「健康経営優良法人」の取得に向けた社内への周知と喫煙対策などの取り組みでした。

アイメックRDの社員は、医療分野の知識を持つ方が多く、真面目な方が多いので、健康診断やストレスチェックを受けることなども、自発的にしっかりと行ってくれます。社員全員がとても協力的で本当に助かりました。

 

須藤:善積が健康経営の担当として加わってくれてから、2022年にも健康優良企業「銀」の認定、2023年に「金」の認定、その半年後くらいに「健康経営優良法人2024・中小規模法人部門」の認定を取得できました。善積の加入を起点にそれまで以上にスムーズに進みました。

 

善積:健康優良企業「銀」の認定から「金」の認定へと、具体的な成果としてカタチになっていくことで会社が本気で健康経営を推進しようとしている姿勢が社員にも伝わったのだと思います。「健康経営優良法人」の認定を受けてから「認定ロゴマークが名刺に記載されるんですか?」と嬉しそうに尋ねてくる社員もいて、社員の意識が高まっていることを実感しました。

 

健康経営推進の鍵は「伝え方」

 

―――お話聞いているとトントン拍子と進んでいったように感じますが、何かご苦労された点はありましたか。

須藤:最初の「健康優良企業・銀」の認定に取り組んだときは、少し懐疑的な、「本当に意味があるのか」というような雰囲気を感じましたね。お願いをすればちゃんとやってくれましたが、自分たちのためというよりは、管理部門が何かやっているな、という距離感もあったと思います。でも、それまでの取り組みが「銀」の認定という成果で見える化されると、社員一人ひとりが「ジブンゴト」として捉えるようになり、そこからそれまでの運営側の管理部門と社員という距離感が縮まり、一体感が生まれたことを強く感じました。

 

善積:社員へのアプローチやコミュニケーションの方法に関しては、どんなやり方がベストなのか確信が持てない、迷うこともありました。特に個別の健康診断結果を基に次のステップを促す場合などは難しさがありました。心身の問題、悩みは他人に見られたくないことも多く、業務以外のセンシティブな話ですので、専門のしかるべきところへ繋ぐまでの間も、どこまで踏み込んでいいのかバランスを取るのはとても難しいです。

 

―――確かに、でも伝えていかないと次のステップに進めないですよね。

善積:最初はどうしても「余計なお世話だ」と嫌がられるんじゃないかと心配になります。でも、受診勧奨をすることは会社の義務であり、法令でも推奨されていることです。特定保健指導や、2次検査の受診勧奨にしても、相手に納得して貰わなければ行動にはつながりません。これは私なりの伝え方ですが、時間をかけて、そして自信を持って話すことが大切だと思っています。

 

須藤:善積の伝え方の素晴らしいところは、相手を嫌な気持ちや怒らせることなく伝えられるところです。特にメールでの伝え方にはその工夫や想いが光ります。たった一言でも、不適切な言葉選びで、相手に不快感を与えることがあります。「なんでそんな言い方されるんだ」と思われると、相手が頑なになり、話が進まなくなります。一方で、へりくだり過ぎても相手を動かすことは難しくなります。だから彼女は本当に良く考えて慎重に言葉を選び、最適な表現で相手に伝えることを心がけているのだと思います。

 

善積:前職で管理栄養士として保健指導を行っていた経験が、現在の業務にも活きていると思います。当時は、まずは伝えるべきことを明確に伝え、その上で「改善がなくても構わないので、経過だけでも連絡して欲しい」とお願いしていました。改善経過を把握しているだけで次のステップにつながるからですつながり。そして特に心掛けていたのは、介入し過ぎないこと。精神的にも時間的にも、社員にできるだけ負担をかけないことが大切だと考えていました。こういった経験をもとに、現在の健康経営においても、社員とのコミュニケーションに活かせているのだと思います。

 

―――残業時間の削減や健康維持の取り組みの成果について教えてください。

須藤:以前からテレワークやフレックスタイム制を導入するなど、働きやすい環境作りに取り組んできました。その結果、残業時間は月平均で13~15時間まで減少しましたが、まだまだ減らす努力を続けています。

有給休暇の取得については、業務の性質上、土日も勤務があるため振替休日が優先され、有休が取りにくい状況があります。対策として、飛び石連休の間を有給奨励日にしたり、年末年始の休暇を増やしたりしています。健康維持に関しては、健康診断の受診や、ストレスチェック、インフルエンザの予防接種など、必要な対応は問題なく実施できています。

ただ、緊張感のある業務の影響か喫煙者をゼロにすることが難しいです。喫煙はあくまでも個人の嗜好なので、強制的に禁止するのは難しいですよね。でも、禁煙を促すために禁煙のご褒美制度のような仕組みを導入すると、非喫煙者との不公平感が生じてしまいますなので、現時点では具体的な施策を講じるには至らず、アドバイスに留まっているのが現状です。この点が今後の課題だと考えています。

 

運動、食、コミュニケーション。5年後、10年後を見据えたサポート

 

―――御社ならではの施策や取り組みなどがあれば紹介してください。

善積:今年から「歩こうキャンペーン」を始めました。昨年のストレスチェックでは、社員に「活気がない」「疲労感がある」という結果が出てしまったんです。加えて、健康保険組合の健康カルテにも「運動機会が不足している」と指摘を受けました。

PCと向き合う業務が中心なので、どうしても座りっぱなしになりがちですし、社員の多くは真面目で黙々と仕事をするタイプ。業務外でのコミュニケーションが少ないことも疲労感の一因ではないかと感じました。今はまだ若いので健康診断の結果に大きな問題はありませんが、5年後、10年後を見据えたときにこのままでいいのかと考えたんです。

そこで、運動不足解消の一つの策として始めたのが「歩こうキャンペーン」です。基準月を設定し、その月の歩数を基準として、1日10分(1,000歩)増えたらギフト券500円、さらに3,000歩増えたら1,000円のギフト券が貰える仕組みです。社員が無理なく取り組めるよう、小さな達成目標を設けて継続を促しています。

 

須藤:以前、全社員を対象に参加必須で健康施策を実施したこともありましたが、やはり嫌がる人もいますからね。自由参加にした方が社員も無理なく続けられるだろうと考えました。まずは2~3割の社員が参加して、少しずつ広がっていけばいいと思っています。

 

―――運動以外にも取り組んでいることはありますか?

「食」の面からも健康をサポートするために、オフィスに「健康おやつ」をいています。どうせ食べるなら身体に良いものを、という考えから、ナッツやカカオ比率の高いチョコレート、夏場には梅干しなどを用意しています。社員からも「手軽に健康的なものが摂れる」と好評です。

 

 

善積:もう一つ「食」の取り組みとして社員の提案から実現したヘルシーカレーがあります。これは取引先が手掛けているカレーで、小麦粉やバターを使わず、スパイスなどの素材にこだわったヘルシーなカレーで、希望すれば白米をキャベツに変更することもできます。今はまだ週1回のデリバリーですが、バリエーションも豊富で、値段も600~800円と手頃なため社員からも好評を得ています。栄養面でも小麦粉やバターを使用していないため、カロリー控えめで健康的だと感じています。

 

須藤:当社は銀座にオフィスがあるため、ランチタイムは混雑しますし、外食の値段も高めです。そうした状況の中で、このヘルシーカレーは時間とお金を節約できる良いアイデアだと思っています。さらに嬉しいのは、こうした提案が社員から自然に出てくるようになった点です。健康経営の考えが浸透してきたからこそ生まれた取り組みであり、管理側としても本当に嬉しい限りです。

 

―――社内コミュニケーションの活性化という課題にはどう取り組んでいますか。

須藤:業務以外での交流が職場内でのコミュニケーションを深めると考え、RDグループ全体でサークル活動を積極的にサポートしています。現在、スポーツやグルメなど社員主体で運営されているサークルが7つあります。全国の美味しいお酒を楽しむサークルやスポーツを楽しむサークルもあります。活動内容は専用のサイトにアップされ、社内の誰もが自由に目にすることができるようにしています。

 

善積:健康優良企業、健康経営優良法人どちらの認定申請にもメンタルヘルスの項目があり、その中でリフレッシュ施策の一環としてサークル活動が評価されていると感じています。実際、サークル活動を通じて社員同士のコミュニケーションが活発になり、良い効果を生んでいると実感しています。

 

須藤:例えば、スポーツサークルの中に「モルック」という競技に取り組むグループがあります。メンバーはお昼休みに近くの日比谷公園で練習をしたり、運動機会が増えているようです。何気ない会話も必然的に増えていきますしね。その結果、メンバーもよりいきいきとしているなと感じています。これは数値では測れないことですが、目でみて感じる変化も健康経営を推進してきた成果の一つだと思っています。

 

 

2030年・2040年問題に備え、健康経営への取り組みをさらに強化

 

―――取り組みを通じて感じられる、はっきりとした変化はありますか。

善積:以前に比べて健康診断の再検査が必要な社員の数が確実に減りました。また、ストレスチェックの結果でも2023年度にはハイリスクと判定される社員がゼロになるという成果が見られました。

 

須藤:仕事のやりがいだけでなく、働きやすさや楽しさを大切にしてきたことが、採用のしやすさや離職率の改善にもつながっています。かつては離職率が25%~30%と高い状況でしたが、健康経営を進めてからは数%まで改善しました。現在では、1~2人が退職をする程度で、これは通常の範囲内と考えています。これらの変化は、組織全体の安定と成長にも良い影響を与えていると思います。

 

―――今後、健康経営の取り組をどう発展させていきたいとお考えでしょうか。

須藤:少子高齢化が進む日本では、今後さらにヘルスケアの重要性が高まっていきます。それに伴い、より優秀な人材を確保する必要性も高まると感じています。現在、社員の平均年齢は30代後半ですが、これから先は生活習慣病や健康リスクの増加が懸念されます。また、2030年・2040年問題※という採用や雇用の課題が間近に迫っていることも、重要なテーマです。これらの課題を乗り越えるために、私たちは会社全体での取り組みをさらに強化し、社員一人ひとりの健康に対する意識を高める発信を続けていきます。健康経営の理念をより深く浸透させることで、社員が心身ともに健康で、長く活躍できる職場環境を築いていきたいと考えています。

 

※2030年問題 2040年問題:少子高齢化・人口減少により、2030年~2040年に表面化が予想される労働力不足や社会問題の総称。

 

 

―――本日はお忙しい中、ありがとうございました。

 

 

<プロフィール>                                                         

株式会社アイメックRD https://imeqrd.co.jp/

取締役 須藤 幸子  管理部 善積 綾子    

 

 

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