心理学や行動科学の観点から「はたらく人」と「組織」に 課題解決策を提供するピースマインド株式会社。1998年の創業当時から、‟はたらく人が抱える「不」を解決する“ことで、一人ひとりがいきいきと働くことを目指しており、ピースマインドの「はたらくをよくする®」事業を通じて、心豊かな未来を創るという企業理念を掲げています。
心と身体の健康を支援するプロフェッショナル企業として永続的に貢献し続けるためには、ピースマインドのメンバー一人ひとりが心身ともに健康で、働きがいを持って、いきいきと働いていることが不可欠という思いのもと、一企業としても健康宣言を行い、積極的な取り組みが行われており、2019年には健康経営優良法人認定を取得し、2021年には経済産業省の実施する健康経営優良法人認定制度の中小企業法人部門にて「ブライト500」に選出されています。
今回は、「はたらくをよくする®」プロフェッショナル企業として、ピースマインド株式会社の健康経営実践の具体策などについて、エンプロイーサクセス部 部長 小薬さん、エンプロイーサクセス部 人事総務グループ グループ長 小島さんにお話を伺いました。
全ての人の「はたらくをよくする®」 ピースマインドの取り組みとは
―――ピースマインド株式会社の事業内容についてお聞かせください。
小薬:当社はEAPサービスと呼ばれる従業員支援プログラムの提供をしています。EAPとは、職場のパフォーマンス向上を目的として、心理学や行動科学の観点から「はたらく人」と「組織」に 課題解決策を提供するサービスのことです。具体的には、契約企業様に所属している従業員の方々のメンタルケアをはじめとした、ウェルビーイング関連サービスを提供するBtoBtoE事業を行っています。従業員は100名ほどです。
弊社のロゴを見ていただくと「A」のところが微笑んでいるように見えませんか?この文字には、弊社のミッション‟はたらく人が抱える「不」を解決し、心豊かな未来を創る”という代表・荻原の思いが込められています。
私たちの提供するサービスは2つの方向性に大きく分けられます。一つは従業員の方が自分自身の健康をマネージメントしていくセルフケアに関すること。もう一つは組織として従業員の健康状態やメンタル面を会社がどうケアしていくかということですね。
前者は、臨床心理士や精神保健福祉士など心理の専門家が従業員のみなさんが働くうえでの悩みを聞き、問題解決を共に目指し、一緒に課題を整理していきます。お悩みとして圧倒的に多いのは、職場の人間関係やキャリアについてですね。後者は、人事の方へのコンサルテーションや研修の実施なども含まれます。個々のメンバーのヘルスリテラシーやセルフケア方法は、それぞれ抱えているテーマが異なりますので、課題に沿ってコンサルティングを実施します。そこが、EAPが健康経営に役立つ点だと思います。
それから、ストレスチェックの義務化に伴って、サービスの提供から課題の分析、改善提案などのコンサルティングも包括的に提供しています。
―――皆さんの業務や健康経営における役割について教えてください。
小薬:まず私どもが所属しているのがエンプロイーサクセス部という部門名です「はたらくをよくする®」という企業理念のもと、カスタマーサクセスを重視しつつ、私たち「エンプロイ側のはたらくも良くしていかなきゃね!」という意味で付けております。この部門には2グループがあり、人事総務グループと、Working Better Togetherグループという社内コミュニケーションの活性化をメインミッションとして担っているグループで構成されています。
小島:私は、人事総務グループにおりまして、文字通り、人事と総務の業務を担っています。健康経営の観点では、人事の方では働き方の部分で、従業員が働きやすいと感じてくれるような規定への改訂や対応を行っており、また、総務の方では働く環境を整えるなど、健康経営推進事務局も担当しています。
より良いサービスを提供するために、自社の「健康経営」から
―――「ブライト500」にチャレンジされたきっかけはありますか。
小薬:お客様の「はたらくをよくする®」ために、私たち自身が良い環境で働いて、より良いサービスを提供する。そのために健康経営と十分に向き合い、実践していく姿勢を示すという意味合いもあって、「ブライト500」を目指してみようというのが最初のきっかけでしたね。
小島:代表からも事業の土台作りとして、やってみないかという声がけがございました。現場と上層部、どちらにも取り組んでみようという思いがあって、挑戦することになったんです。
先述のとおり、お客様へのより良いサービスを提供するにあたって、支える私たちの労働環境が良くなっていないと、説得力がないというのももちろんあります。また、「ブライト500」は2021年(3月)選出に向けて新しく創設された制度ですが、その時に認定にかかるチェック項目を確認していったところ、弊社の取り組み内容であれば既に「ブライト500」を十分に目指せるような状況と感じました。もともと社内の意識が高かったというのもありますが、もし認定を受けられたら、働くわたしたちにとってさらなるモチベーションになっていくという思いで進めていきました。
―――健康経営優良法人を目指すなかでハードルになったことはありますか。
小薬:社内メンバー間での意識の差というのはほとんどありませんでした。会社のミッションに共感して入ってきているメンバーがほとんどですので、そういった意味では自分たちの働く環境をより良くしていこうというのは共通認識だと思います。ただ、新型コロナウイルスが流行した後、働き方が非常に変化しました。在宅勤務がメインになって、なかなかメンバーの勤務状況に目が届かなかったり、どういった生活をしているのかわからなかったり。そういう苦労はありましたね。
小島:先ほども申し上げたとおり、最初に健康経営優良法人の認定を受けたのが2019年度のことで、認定と前後してコロナウイルスが日本国内でも流行り始めました。その前に、東京オリンピックの関係でテレワークが推進されていたのもあって、社内のチャットツールやオンラインツール、勤怠管理システムがたまたま整備されていたので、2020年5月の緊急事態宣言のときにはほぼ全員在宅勤務ができる状況が整えられていました。ただ、やはり入社したての人はいきなり在宅勤務と言われても、チームメンバーのことも分からないわけで。どうやってオンボーディングしていくかが非常に大きな課題となりました。たとえ、オンラインの画面越しで顔が見えていても対面に比べてお互いに得られる情報量は少ないですし、コミュニケーションもマネージメントも難しいと感じました。あとは通勤がなくなった分、運動量が減って、体重が増えてしまった人が続出するといった健康問題も発生しました。
小薬:コミュニケーションに関しては、毎朝コミュニケーションツールを使って、朝会を10〜15分程度行うとか、やりとりする場を意識的に作るようにしている部門が多く存在します。現状、一番の課題としては運動不足と食生活なので、常により良い改善策を検討していきたいです。
全員参加の健康経営 ~ピースマインドのインナーブランディング~
―――これから取り組んでいきたい課題などはありますか。
小薬:今、喫緊の課題としては心身の健康ですが、そこはコミュニケーションを工夫しながら取り組めていると感じています。将来的な課題としては、フィジカルの健康をどうやって後押しするかというのが重点項目であると思います。
小島:例えば、照度。オフィスでは基準をクリアしていますが、在宅環境では各家庭によって異なりますよね。眼精疲労や、それに起因する肩こり、頭痛等に繋がることかと思います。自宅の仕事環境をメンバーそれぞれにどう改善してもらうか、また在宅勤務時の安全確保はどのようにするのか、メンバーそれぞれのリテラシー向上のためにはどんな働きかけが重要か等をエンプロイーサクセス部としては明確な課題点として認識しており、まずはメンバーの意識から変えていく必要があると考えています。産業医の先生にも相談しながら、衛生委員会でも討議しつつ、PC環境の整え方セミナーを開催したり、ウェルネスリテラシー向上のためのセミナーを実施するなど、メンバー自身で対応できることを増やしてもらえるようにしているところです。
小薬:制度としては、在宅環境を整えるための手当を支給しています。それから、衛生委員会では、フィジカルの健康にどう向き合っていくかについて、司会からメンバーに答えやすい質問を投げかけながら、みんなを巻き込み議論を活性化していっています。気兼ねなく意見できる環境づくりや風通しの良さを心がけるようにしています。
―――健康経営を会社全体で進めていくことについて、御社ではどのようにお考えですか。
小薬:私どもは会社として、「健康経営」に関する事業を展開していますので、自分たちで会社を挙げて取り組むからこそ、お客様にとっても良い情報提供ができるという点では、社外に向けてのブランディングにも繋がると考えています。しかし、まずは、社内構築のためのインナーブランディングのほうが大事だと考えておりますので、今年度は社内活動に力を入れているところです。
―――健康経営の取り組みのなかで、改善している点、難しい点などはありましたか。
小島:産業医の先生にもご相談しながら「健康経営戦略マップ」を作り、推進しています。健康経営推進の一例では、働き方の見直しとして、中抜けでも時間休を取れるようにしました。もともと有給消化率は低くはありませんでしたが、こういった柔軟な働き方ができる施策を取り入れることで、2023年度には有給取得率が83.6%と高い水準になりました。5日間の有給取得義務についても、衛生委員会の方で数字を随時確認・共有しながら、毎年社内で頻回にアナウンスしているので、年度末に取得できなかったという人はいません。それは明確な改善点といえます。
小薬:それから在宅勤務を始めたばかりの頃は、過集中になって時間外勤務が驚くほど増えてしまったことがありました。身体への影響も懸念されますし、当時のマネージャーに時間外勤務についてタイムマネジメントをするよう指示しました。それがどう反映されていくかを調べるという意図で、ストレスチェックの追加設問に睡眠時間の項目を入れました。結果、時間外労働を管理することで睡眠時間が伸びてきました。取り組みの結果が健康に関する数値として明確になるまでに時間を要することもあるということですね。
産業医との連携で戦略的な「健康経営」を推進
―――特定保健指導に関して悩みを持たれている企業が多いのですが、いかがですか。
小島:いわゆるメタボなどの生活習慣病予備軍の対応などは難しいですよね。ただ、弊社では産業医が必ず結果をすべてチェックしており、保健師さんとの面談の場を提供できるようにしています。健康診断は、ただやれば良いというものではないので、その結果をもとに何をするのかが重要ですから、衛生委員会とも課題を共有しながら各部署に持ち帰ってもらって、一生懸命声かけをしております。
ウェルネスセミナーでも、産業医としてもご活躍されている職場環境に詳しい先生から生活習慣病予備軍の怖さや癌などの病気の怖さ、女性特有の問題などをテーマにお話いただいているので、少しでも特定保険対象者を減らす一助になればと思っています。
―――産業医の先生との連携が素晴らしいですね。
小薬:産業医の先生とのお付き合いは長く、弊社の歴史までもわかってくださっている方です。先生は産業医領域で、「働く人々の健康問題」について専門分野として研究もされているので、先生の方から「こういうことはやっている?」と具体的にアドバイスをいただいたりもします。
小島:先ほど申し上げた「健康経営戦略マップ」をもとに、目標と現状を確認しながら健康経営の推進に取り組んでいますが、メンバーから積極的に意見をあげてくれることも多いです。ウェルネスセミナー実施後には振り返りとして必ずアンケート調査を行っていますが、最後に「どのようなテーマでセミナーをやってほしいか」と尋ねるようにしています。その結果をもとに、メンバーの心身共なるリテラシー向上に繋がるテーマを取り上げています。
―――最後に御社の今後の展望について、お聞かせください。
お客様に高付加価値のサービスを提供できるような体制を作りあげることを主眼とし、エンプロイーサクセス部として何が必要かをそれぞれの担当する業務の目線から自分ごととして考え、提案し続けたいと思っています。今後も、メンバーの心身共に健康な状態を目指すウェルネスリテラシー向上をはかりながら、「健康経営」のベンチマーク企業となるべく、頑張っていく所存です。
<プロフィール>
株式会社ピースマインド https://www.peacemind.co.jp/
エンプロイーサクセス部 部長 小薬理絵 エンプロイーサクセス部 人事総務グループ グループ長 小島真理