映画、飲食、アミューズメント、不動産など幅広く事業を展開するOS グループの中核を担うオーエス株式会社。阪急東宝グループの創業者であり、日本の財界のレジェンドとも言える小林一三氏によって設立されたオーエス株式会社が、ブランドメッセージ「Your Smiles, Our Smiles.」を体現するべく、経営トップから従業員まで一丸となって取り組む「健康経営」とはなにか、健康経営推進メンバーにインタビューしました。
映画、飲食、アミューズメント、不動産など幅広く事業を展開するOSグループは、働く全ての人の幸せと地域に暮らす人々の幸せを同時に追求し、豊かな生活文化と未来づくりに貢献したいという願いの下、「Your Smiles, Our Smiles.」というブランドメッセージを掲げています。また、その「Smiles」の土台には「健康」があるという信念のもと、2021年には「健康宣言」を行ない、すべての従業員が自分自身やその家族、そしてまわりの仲間やお客様の心身の健康に積極的に心を配り、健康に対して高い意識を持った企業風土づくりを目指しています。
その実績として、2022年より「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」には3年連続で認定、2024年には上位法人500社である「ブライト500」に選出されています。
阪急東宝グループの創業者であり、日本の財界のレジェンドとも言える小林一三氏によって設立された歴史あるオーエス株式会社が目指すゴールイメージと健康経営®について、健康経営推進を担当する人事総務部の道林さん、中井さん、大沼さん、経営企画部の高橋さんにお話を伺いました。
「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
健康経営優良法人の認定をOSグループの付加価値向上に活用
――― 皆さんのお仕事と、健康経営の推進における役割を教えていただけますか。
道林:私、道林と中井、大沼は人事総務部に所属し、健康経営を担当しております。健康経営推進の中心的な役割を担っているのは私ども人事総務部になりますが、健康経営は当社にとって広報に関わる重要な部分でもありますので経営企画部と一緒に取り組んでいます。
高橋:経営企画部の高橋と申します。企業としてブランド価値の向上や外部発信といった広報活動の観点から経営企画部も健康経営の推進に加わっています。
――― それでは、健康経営優良法人認定の取得に取り組んだ経緯などについて教えていただけますか。
道林:実は、当社では「健康経営」として取り組むことになる数年前から働き方改革に力を入れており、ワークライフバランスの改善などいろいろと試行錯誤を重ねながら進めてきていました。
たとえば従業員の中でも結婚や出産、育児などでライフステージが変化してきますよね。その他にも、家族の介護という課題が出てくるケースもあるわけですが、当時は短時間勤務制度などもまだまだ充分ではありませんでした。会社の人員構成をデータ化し「見える化」することで、10年後には時間的制約のある従業員の割合がかなり増えることが明確になりました。会社としてかなりの危機感を持ち、働き方の見直しが必須課題であると考え、従業員からのヒアリングなどもしながら制度の拡充を図っていきました。
短時間勤務の拡充やテレワークに対応できる社内イントラネット導入に続き、段階的にフレックスタイム制度の導入、テレワーク勤務制度などが整備されていきました。本社は大阪にあり多くの従業員がそこで働いているのですが、事業所のひとつである神戸の映画館のバックヤードオフィスを活用し、サテライトオフィスとして利用できるようにもしています。イントラネットの整備や社用携帯電話を全従業員に支給するなどインフラを早めに用意していたことで、働きやすい職場環境づくりがスムーズかつ着実に進んできたと思います。
健康経営優良法人の認定を申請した理由というのは、こうした取り組みの客観的な評価を企業ブランディングやリクルーティングなど、OSグループの付加価値向上にも活用できるのではと考えてのことです。
――― 健康経営優良法人(中小規模法人部門)に3年連続で認定、2024年度にはブライト500にも選出されていますね!認定企業約1万6000社の中で、トップ500に入るための御社ならではの施策や努力などがありましたか。
道林:ありがとうございます!そうですね、最初に優良法人の認定を受けてから他社さんとのつながりができまして、ブライト500を取ってらっしゃる会社さんにもお話を伺って、当社の取り組みとの違いなどもチェックしていくようにしました。保険会社さんにも対策や申請の方法などを教えていただいたりもしていますね。ブライト500への選出は、健康経営優良法人の認定を取得してから毎年、出来ていないところを一つひとつ地道に改善していった結果だと思います。
15年間、入社3年目までの離職率ゼロ。新たな働き方ABW*の導入
――― 健康経営優良法人の認定で、社内の変化や社外への効果などはありますか。
道林:最も実感するのは新卒者の採用ですね。健康経営に積極的かどうか、そこを重要視する学生さんがとても多いんです。ホワイト企業の証と言いますか、学生さんに選ばれるポイントになっていると感じます。
――― なるほど!学生さんの意識も変化しているのでしょうね。社員の皆さんの反応などはいかがでしょうか。
中井:全員が画一的な働き方をしていた頃は、結婚や出産を機に退職してしまう従業員もやはり一定数いましたが、企業としてライフワークバランスという意識が上がってきていることや働き方改革に伴う制度見直し等により、長く働きたいと考える従業員が増えたのではないかと思っています。経験を積んだ従業員を失わないというのは、事業運営にも大きな影響があると思います。
大沼:離職率に関しても、新卒社員は入社3年目までに辞めてしまいやすいというのが一般的ですが、この15年間で入社3年目までの新卒者に限っては離職者ゼロなんですよ!
――― 離職者ゼロは素晴らしいですね!先ほども、健康経営優良法人のチェック項目への地道な改善の結果というお話がありました。特にここは力を入れた、こだわった、というような施策がありますか。
道林:先ほどお話した通り申請以前から改革には取り組んでいましたので、チェックリスト項目に関しては、全てではないにせよほぼ問題なくクリアできていました。定期健康診断に加え、再検査や特定保健指導の従業員へのフォローも確実に行ないますし、女性従業員には2年に1度婦人科検診の受診勧奨をしています。また、メンタルヘルス対策として年1回のストレスチェックと外部講師による定期的な研修、社内相談窓口の設置、メンタルヘルス不調者の復帰に向けた支援体制も整備しています。
ユニークな施策としては、ABW(Activity Based Working)*という新しい働き方を導入しています。多くの会社は、人事総務部だったら人事総務部の部屋やスペースを決め、そこで仕事をしますよね。一方、ABWは従業員がこれから行う仕事に基づいて働く場所を自立的に選べるというものです。たとえば今日は〇〇部〇〇さんとの打ち合わせがあるからその方と近い場所で仕事をしようとか、集中したいから個室ブースでとか、在宅勤務ももちろんOKです。
つまり、それまで部内の人間とばかり顔を合わせて仕事をしていたのが、隣に座る人が毎日違うということもあるわけです。このABWを取り入れたことによって、所属部門を超えたコミュニケーションが生まれ、社内の活性化や業務効率化にも役立っていると感じています。
ABWを取り入れた主な目的である仕事の生産性や創造性を高めること、 コミュニケーションの質・量を向上させることの実現とともに、健康経営にとっても大いにプラスに働いていると思っています。今後はさらにオフィスを活用して、従業員の食生活や運動習慣を向上させるような取り組みを進めていきたいです。コミュニケーション×食に関する取り組みなんかもできたら面白いなと考えています。
*ABW (Activity Based Working):社内外を問わずオフィスの場所やデスクの位置を固定せず、業務内容に応じて仕事に取り組む場所を社員が自由に選べるワークスタイルのこと。
自主的な参加につながる 「見える場所」でのセミナー開催
中井:当社は映画を事業にしていることもあって社内に「シアタースペース」という場所を設けています。そこには大型スクリーンを設け、上映作品の予告編などの映像が流れる中で仕事をしたり休憩したりできるオープンスペースなんですが、健康経営に関するイベントもそこで実施するんです。たまたまイベントをやっているのを見て、飛び入り参加するという人もかなりいて、毎回、盛況なんです。普段は来客対応にも使えるスペースであり、他の会議室への導線にもなっているため、通りがかったお客様に興味を持っていただくことも多いです。
――― 「シアタースペース」というのは御社ならではですね。
高橋:この「シアタースペース」で行なわれる施策は、従業員に健康経営に関する学びの場を提供するためのものですが、そのひとつに「Wellness ゼミ」という健康講座があります。これまでには、「肩と腰のセルフケア」、「かつおぶしを通じて食生活を見直す」、「質の良い睡眠をとるには」、「意外と身近な病“乳がん”」といったテーマで実施してきました。
この講座は知識としての学びだけでなく、毎日の生活にすぐに活かせる内容であることにこだわっているので皆さんにもとても好評です。現場勤務の従業員もいますから当日に全員が受講はできないので、講座やイベントの内容は可能な限り、後日アーカイブ配信もできるようにしているんですよ。
道林:先日はその「シアタースペース」に運動指導士の方に来ていただいて身体の歪みを調べて、バランスを整えるという企画を実施しました。従業員それぞれに「あなたは、身体がこうなる癖があるので、こういうストレッチが効果的ですよ」というような指導をしてもらうんですが、これが思ったよりも飛び入り参加者が多くて好評でした。「シアタースペース」のような多くの人に「見える場所」でのセミナーやイベントはとても効果があると感じています。
――― こういったセミナーやイベントはどのように企画を立てられているのでしょうか。
道林:ここにいる4人のメンバーで年間計画を立てて、どういったイベントやセミナーを行なっていくかを考え実施しています。 もちろん内容も重要ですが、なるべく多くのメンバーが参加できそうな時期や日取りを慎重に選んで計画を立てています。 みんな通常業務の他にも研修などいろいろスケジュールが入っていますから、それらを考慮することも大切だと考えています。
――― 御社は映画から不動産まで事業の幅が広くグループ会社もたくさんありますよね。取り組みを浸透させるためにどんな工夫をされていますか。
中井:やはりイベントやセミナーなどへの参加は、本社内(コーポレート部門)にいる社員がどうしても多くなります。 エンタメや不動産など各事業部門になると業務の関係上、どうしても参加が難しいケースもありますから、現在はZoomで参加してもらうなどのサポートも行なっています。これからはさらに新しい視野でなにか考えていけたらと思っています。
難しい禁煙対策を社内イントラの活用で成功へ導く
――― どの企業さんでも対策が難しいとおっしゃる“禁煙対策”ですが、御社はどのように取り組まれていますか。
道林:そうですね、やはり、禁煙対策がいちばん難しいところですね。これまでもいろいろ働きかけをしてきましたが、未だに喫煙している人は基本止められないことがほとんどです。それでも最近、禁煙に成功したユニークな例もあります。
高橋:大阪市からの補助金が出る禁煙プログラムがあって、ある従業員さんに「やってみませんか」とお声掛けしたところ、「じゃあやってみるか」くらいの感じでスタートしたんです。そこで、この方の禁煙チャレンジを社内イントラで伝えていくことにしたんです。「〇〇さんが禁煙チャレンジするので応援しましょう」って。そうしたら従業員のみんなから応援メッセージがたくさん来て、見事達成です!まあ、あんなに応援してもらったら達成するしかないよねという盛り上がりでした(笑)。この後、グループ会社の従業員の中にも「自分も禁煙しよう」という声があがって2人目の禁煙宣言につながりました。
――― なるほど、社内イントラで禁煙の進捗を伝えるというのは良いアイデアですね。
道林:実は、禁煙だけではなくダイエット宣言する従業員も登場したんですよ(笑)。こうした取り組みを続けてきたことで、健康経営を自分事として捉える気風が少しずつできてきていると思っています。ただ、禁煙チャレンジしてくれる人がもっと増えてくれると嬉しいなぁと思うんですけどね。
――― では、こちらも課題としてよく挙げられる“特定保健指導”についてはいかがですか。
道林:私がこの人事総務部に配属されてからは、特定保健指導は絶対に受けなければならないことにしています。これは健康経営とは関係なく、です。よく「どうしてもですか」って言われますけど「絶対です」と伝えています。私が担当になってからは、受けないという選択肢はありません(笑)。「特定保健指導が入るので仕事のスケジュール調整をしてください」というメールを送ってどんどん進めています。もちろん業務時間内に受けていただけるようには調整していますし、遠方であったり、どうしても都合がつかなかったりというケースは、オンライン実施や健保協会の方との調整やサポートもしています。ですから特定保健指導についての悩みはありません(笑)!
毎年の施策は健康診断の結果とPDCAアンケートから策定、従業員からのアイデアも採用
――― 特定保健指導については、もう力業ということですね(笑)。
ところで、健康経営については毎年、新しい施策を打ち出していくと思うんですが、どのように決めているのですか。
道林:年間の活動計画のベースとなるのは毎年の健康診断の結果ですね。たとえば2024年度でいうと、健康診断の分析結果からLDLコレステロール値やBMIなどが基準値を超えている人、高血圧や高血糖の人、このあたりが増えているという課題がありました。もうひとつ、従業員の睡眠の質があまり良くないという指摘もあったんです。これらの健康診断で見えてきた結果を基に、対策する活動計画を作っていきます。
とくに睡眠は健康の資本でもありますし、仕事の質や効率にも影響を与えますから、これはしっかり改善しなければなりません。私ども健康経営の担当としては、やはり適切な運動と食生活の改善が良い睡眠にもつながると考えていまして、これに向けて取り組みを強化していく施策を練っているところです。
高橋:健診結果の他にも社内アンケートを取るなどして、課題を洗い出しながら目標を設定するようにしています。アンケートには従業員からこんなことをやって欲しいというリクエストもありますので、それも検討して年間計画を策定しています。
――― 従業員の皆さんからの提案があるというのは素晴らしいですね。
道林:従業員からの提案で実施したものには「かつおぶしセミナー」がありましたね。業務でお付き合いのある“鰹節”の会社さんに講師になってもらい、“本物の出汁のおいしさを知って塩分の摂り過ぎを予防する”という観点で実施したんです。
一般的に売られている顆粒出汁のようなものって、ほとんどが本当の出汁ではなくて塩味などで旨味を演出しているので、どうしても塩分の取り過ぎにつながってしまうらしいんですね。セミナーでは本物の出汁との飲み比べもやってみたんですが、純粋なものは味付けなしでも本当においしい。いくら健康に良いって言われても、おいしくないと長続きしませんからね。
健康診断の結果からも食に関する施策を考えていましたし、なによりも従業員の皆さんにとても好評だったので、やって良かったなと思うセミナーでした。こんなふうに、今後も従業員からの提案も取り入れて年間の計画を立てていきたいと考えています。
社長も役員も、積極的に健康経営の推進に参加する企業風土
道林:当社の健康経営への取り組みは、社長をはじめとして人事総務部の担当役員が先頭に立って進めていることがすごく大きいと思います。担当役員は自身が健康経営アドバイザーの認定を受けるくらい積極的ですし、「Wellness ゼミ」などのイベントには社長自ら積極的に参加するなど、意識の高い全社的な取り組みになっています。そういった企業風土もあり、従業員メンバーも皆、個々人の健康維持という視点だけではなく働き方の改善にもつながっていることを理解しているので協力的です。
――― 素晴らしいですね。それでは最後に、これから御社の健康経営が目指すものをお聞かせください。
高橋:やはり、ブランドメッセージである「Your Smiles, Our Smiles.」の精神に基づいています。これからもOSグループで働くすべての人々とお客様、地域で暮らす人々と笑顔が循環するような時間や空間づくりを目指していきます。Smilesの土台になるものは、なによりも健康であることですので、健康経営を積極的に推進していくことに変わりはありません。
従業員が心身ともに健康で、イキイキとした笑顔で仕事に取り組む。それこそがOSグループの業績や企業価値の向上につながってくと考えています。
<プロフィール>
オーエス株式会社 https://www.osgroup.co.jp/
人事総務部 道林 千佳 中井 里江 大沼 秀登
経営企画部 高橋 真帆