同僚と長く一緒に働きたいから。
ライフサポートサービスの健康経営の秘訣とは

埼玉県川口市にあるライフサポートサービス株式会社は、巡回(出張)健康診断を中心に、企業の健康経営推進サポートやはたらく従業員の健康管理を積極的にフォローする様々な提案をしています。事業の柱としている健診運営サポート事業においては、手軽に受けられる健診現場の提供、安心・快適・おもてなしの心をもった健康診断、加えて様々な情報提供することにより健康管理に関する意識を高め、場合によっては病気の早期発見・早期治療の機会をつくり、皆様が将来の健康に不安を抱くことのないようサポートしていくことを目標としています。

近年注目されている、企業の「健康経営」推進のサポートにも力を入れています。ライフサポート株式会社は、一企業としても経済産業省の実施する健康経営優良法人認定制度の中小企業法人部門にて、2021年より4年連続で「ブライト500」*に選出されており、より具体的な実践サポートの相談にも対応可能です。

今回は、健診運営サポートを軸に、企業の健康経営を支えるライフサポートサービス株式会社が、一企業としても取り組んでいる健康経営の施策や実際の課題などについて、検診Ⅰ部課長の上原さんに話を伺いました。

*「ブライト500」とは、健康経営優良法人の中から「最も優れた企業」かつ「地域において、健康経営の発信を行っている企業」として、全国上位500社に選ばれたことを指します。

 

巡回健診で10万人以上をサポートするライフサポートサービスの取り組み

 

ーーー ライフサポートサービス株式会社の事業内容についてお聞かせください。

上原:弊社、ライフサポートサービスは、企業や学校、市の施設などを巡回(出張)して健康診断を運営する会社です。スタッフは60名ほどで、埼玉県を中心に関東全域を回っていますが、受診者数は年間およそ11~12万人くらいです。法人市民検診の他、小学校から高校まで学校関係を多く請け負っています。学校となると、一日に2,000人以上の受診者さんがいらっしゃることもあります。

また、「健康診断+α」から始める健康経営をお勧めしており、企業の健康経営推進のサポートも行っています。

私は健診部に所属しており、普段は現場での運営責任者という立場で動いていますが、自社の健康経営推進にも携わっており、新しい施策の企画・立案などを担当しています。

 

ーーー 健康経営優良法人の認定を受けるに至った経緯をお聞かせください。

上原:社長が同友会という経営者層の集まりの機会に、健康経営の話題になって、話を聞いてきたのがきっかけでした。健診運営をする会社として、私たちの会社でも積極的に取り組んでみてはどうだろうかとなって、調べてみると、健康経営優良法人などの認定制度もあると知り、改めて自分たちに足りていない点などを精査するところから始めることになりました。

健康経営推進プロジェクトとして、組織体制も整えています。私は、「健康診断、運動、食事、睡眠」に関わるあたりの施策立案などを担当していますが、まずは自分や仲間が興味・関心を持ちやすいものから、例えば、ボルダリングやシュミレーションゴルフ、キャッチボールなどのカラダを動かすことから少しずつ始めるようにました。毎年の恒例行事や各種申請手続き、社内検診、ストレスチェックなどの運営は企画部と分担し、負担が偏らないよう工夫しています。各自、実務もありますので、健康経営推進の活動は経営層とも分散しながら取り組んでいます。

 

ーーー 健康経営において、手応えを感じられた施策はありますか?

上原:これはガツンと効果を感じた!みたいなものは、正直難しいところがあります…。
健康というものがそもそも、短期間でぱっと目に見えて効果が表れるものではなく、さまざまな角度から底上げをしていくというイメージかもしれませんね。

社員に評判が良いのは健診日に行っている「軽食提供」です。健康診断の日は、朝ご飯を抜いてくる必要がありますよね。会社内で健康診断を行っているので、終わった後に朝食や簡単なヘルシーメニューを摂れるように、その場で作って提供しています。例えば、夏にはそうめん、冬は豚汁に味噌田楽など。半年に一回の健診時には毎回準備をしていて、みんなに喜ばれています。

 

ーーー 半年に一回の健康診断をしているんですね。

上原:はい、冬の健診を軸にしていて、法令に沿った内容に加えてバリウムなどの生活習慣病検診や追加検査なども含めてしっかり行っています。夏場は、法令検診だけのシンプルな内容で確認を行っています。

健康診断では、半年ぐらいのペースでチェックしておいたほうが良い項目もあるので、他社さんにもお勧めしているんですが、あんまり積極的にやってくれるところはないですね。
検査結果に気になる点が出てきたとしても、生活習慣に気を付けてみたり、ダイエットを始めてみたりと努力してみてもそこから一年続けられる人は多くないじゃないですか。そういった意味でも、自分の指標が半年に一度くらいのペースで可視化できるのは良いかと思います。

弊社では、保険指導対象者が減ってきています。そんなに大きな会社ではないので、数人ぐらいの差ではありますが。社員の個人情報までは見られませんので、具体的な数値で何が良くなったとか細かいデータまでは分かりませんが、全体感として向上しているようです。

私自身、筋トレが好きなので、周囲にも勧めてきました。「この姿勢で、このパターンでトレーニングをすると筋肉がつくから、代謝も上がりやすくなって、きっと1年後には成果を感じられると思うよ」って。やっぱり体を動かすと、気持ちが良いし、心身の健康バランスを整えるのにも良いじゃないですか。それが苦手だという人ももちろんいるとは思うので、様子を見ながら声がけするようにしています。そんな私の草の根活動の成果も出ているといいのですが。(笑)

 

健康施策で着実な成果を。ブライト500認定までの道のり

 

ーーー 健康優良法人16,000社ほどの企業から見事上位500社である「ブライト500」に選ばれています。周囲の反応などはいかがですか。

上原:メディアからの反応が大きいほか、運送会社や建設業などの一般的に勤務環境が厳しいイメージをもたれる業界の人たちから、どのような取り組みを?と聞かれることが多くなりました。

具体的な取り組みでは…、

認定基準の項目の一つに「PDCAサイクルを回そう」というような内容があるんですが、健康経営に対しての施策の①計画②実施③反省④振り返り、ですよね。例えば、一年で健康診断の結果なんて劇的に良くなったりはしないし、むしろみんな歳を取重ねていくわけで数値的にも悪くなっていく可能性さえあります。そこをどう改善していく工夫ができるかで悩んでいたんですが、まずは出来ることからすこしずつ始めようと思って。初年度から”ウォーキングイベント“を始めたんです。 1~2ヶ月の期間を定めて、期間中の累計が目標歩数に到達したら会社からプレゼントがあります!という企画が毎年恒例になりました。初年度は、達成者が10人くらいだったのが、現在は20人以上になり、参加者も毎年すこしずつ増えてきているので、社内意識の向上を感じています。今年はスマートウォッチやスポーツウェアなど、みんなの健康づくりにつながるようなものでちょっと豪華な商品を出しちゃおうかな…と考えています。

よく言われている1日の目標歩数は8,000歩ですが、始めた当初に社内メンバーの歩数を調査してみたら、みんなの1日の平均歩数が4~5,000歩だったんです。この状況でいきなり、「目標8,000歩!」は心理的に負担かなと思い、1日7,000歩を目標として決めました。また、毎日8,000歩かなくても1ヶ月で累計210,000歩けていれば良しとして、みんなが越えやすいハードルを提示するようにしています。私も全然歩数が足りなかった時、言い出しっぺが未達成なのはまずいと思い、最終日に東川口駅から会社まで1~2時間歩いて無理やり目標達成させました(笑)。

 

ーーー ブライト500を目指すにあたって苦労した点はありますか。

上原:健康経営優良法人認定は、評価項目が毎年アップデートされるんですよね。同じことをやっていればいいではなくて、やはり施策のPDCAで進化していくことも大切です。ただ、一番頭を悩ませているのは、発信活動のところですかね…。「ブライト500」の申請項目の約半分くらいが自社の健康経営活動の発信に関することで、出来ているかいないかではっきりと判断されてしまうので。積極的に取材を受けたり、社長も学校などでの講演機会を増やしたり、実務以外にもやるべき活動が増えているという点はあります。

また、私どもの繁忙シーズンがやはり健診期の春と秋になるので、毎日継続的な取り組みをすることが難しいというタイミングもあるので、やり方の工夫などは今後も課題になると思います。

ただ、次もブライト500を目指したい! せっかく前向きに取り組んでいるのでずっと続けていきたいよね、 という意識ではいます。

 

健康施策の秘訣は「各世代を巻き込んで地道にアプローチすること」

 

ーーー 施策を進めるなかで、社内のハレーションなどが生まれることはありましたか。

上原: あまりないですね。ハレーションが起きるほどならいいんですが、興味がない人からは反応も得にくいので、多少の反発はあったほうが嬉しいくらいです。

例えば、近くの体育館で「バスケットをしよう!」と声をかけても、集まるのはいつも決まった人ですし、個別に話をしてみても、新たに運動を取り入れなきゃいけないというのは障害になってしまうようです。地道に声をかけ続けていると、たまに一人増えて…とかはあるんですけどなかなか難しい。他にも、社長が毎年、川口市のマラソン大会に出ているので「一緒に走ろうよ!」と周知しているんですが、例年8~9名ぐらいで、そこもなかなか増えはしないですね。(笑)

 

ーーー お仕事柄、みなさんの健康リテラシーは高そうですがいかがでしょうか。

上原:私もこういった施策を具体的に始めるまでは、「医療機関で働いているし、健康リテラシーは高いだろう」と思っていたんですが、実はそんなこともなくて。新型コロナウイルスが流行した時は、ヨーグルトが話題になればみんなヨーグルト食べていました。(笑)そういった意味では、他の業種の方たちと大きく変わらないのかもしれません。だからこそ、弊社のような医療機関であっても、健康経営には社内への地道な情報発信やみんなを巻き込んだ活動が大事だと思います。

 

効果実感が難しい健康経営、次に目指すのは労務の見直し

 

ーーー 特定保健指導の取り組みにお悩みの企業が多いようですが、御社ではどのように対策されていますか。

上原:弊社では上長から本人に特定保健指導対象者通知を直接手渡したあと、すぐにチャットで面談の日程候補を送っています。後回しにせずに、良いタイミングでスムーズに進められるような流れを作っていますね。業務スケジュールもある程度把握したうえで、日程を決めたら社内の管理栄養士さんに予定を伝えて。ここまでノンストップでいくようにしています。

通常であれば、業務を優先にして空いた時にやるように促してしまいがちだと思うんですが、会社として優先順位をどっちにするかっていうことなのかなと思います。

 

ーーー 項目にもありますが、御社の「喫煙率削減」についてはいかがですか。

上原:会社としては、喫煙する人に関しても、それは個人の権利だというふうには捉えてはいます。ただ、社内は全面禁煙にしています。会社の敷地内の少し離れたところに喫煙可能な場所を作り、利用できる時間も絞りました。勤務時間中に喫煙したい場合は、ちょっと手間がかかるよっていう策にはしているんですけど。

ただ、自ら禁煙をしたいという人も一部いるので、そういった人たちの手助けになるよう、禁煙外来の受診料を負担するなど、費用控除のサポートをしいます。決意が揺らいでいる人には、健康のために禁煙するメリットが書かれているような本をお勧めしてみたり。おかげで全体の喫煙率は下がっていて、半数ぐらいになりました。会社として本気で0にしたいとかであれば、極端にやらなきゃだめだと思うんですけど、喫煙率に関しては強制的に下げるのではなく、数年かけてでも禁煙できたという人が数人出てきてくれたらいいな、くらいの位置づけにしています。

 

ーーー 健康経営はコストだと考える意見もありますが、どのようにお考えですか。

上原:施策にかかわる費用をコストだと言えばそのとおりですが、従業員の健康が脅かされた時、コストは目に見えないところも含めて増大してくるわけじゃないですか。その捉え方の違いじゃないかなと思います。コストだけの問題ではなく、さまざまな部分に影響は出てくるわけで。見えないコストが長く続いていくか、従業員の心身の健康を考えた先行投資をするかっていうだけの意識の違いなのかなと。当然ながら、みんながイキイキと健康に働けたほうが会社にとってもメリットです。

「健康経営」って絶対に良いことしかないから続けているんですよね。会社としてはもちろん、自分たちの施策に効果を感じられたことは、ブランディングや新たな商品化の足がかりにしたいといった意図もあるかもしれませんが、一方では、家族よりも長い時間を共に過ごしている同僚たちと長く一緒に働いていけたらいいなという思いがあります。これから新しく入ってきてくれる人たちも安心して働いてもらえる環境が作れたらいいなと。

 

ーーー 最後に、今後の課題や取り組んでみたいことはありますか。

上原:「健康経営」は、目に見える変化が少ないため周囲に効果を実感してもらいにくいことは課題だと感じます。じわじわと、ちゃんと前進しているんですけれども。例えば、‟50円割引クーポン“をもらってもそこまで嬉しくないじゃないですか。(笑)企業側からしたら費用をかけて準備して、いっぱい贈っているつもりだけど。だから、従業員が「こんなにしてもらっているんだ」って思えるぐらいインパクトのあるものも何かやりたいっていうのは、ありますね。

今後は、‟特別休暇“とか、そういった労務に関する部分の見直しや新しい施策も積極的に進めていき、会社として本気の取り組みなんだなという姿勢を社員に示していきたいという話も上がっています。

会社は、「社員の幸福な顔が見える経営」という経営理念に基づき、社員が心身ともに健康で働いて、高いパフォーマンスを発揮してくれること、生涯にわたって健康で長生きできることを目指しています。

そのために、日々の健康意識を高め、健康増進する活動を実践する社内環境や風土を作っていきたいと思っているわけですから、その想いが社員にしっかり根付いていけるようにしたいですね。

 

 

 

<プロフィール>                                                         

ライフサポートサービス株式会社 https://www.lifesupport-service.com/

健診1部 課長 健康管理アドバイザー・第一種衛生管理者 上原弘樹

 

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