中小企業でも攻めの経営を!ビットのウェルビーイングに対する取り組みとは

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株式会社ビットは、30年以上にわたりソフトウェア開発・運用サービスを行ってきた横浜のIT企業です。2021年に代表取締役により「健康経営宣言」を制定し、健康経営の推進を発表。2023年には経済産業省の実施する健康経営優良法人認定制度の中小企業法人部門にて「ブライト500」に選出されました。

「ブライト500」とは、健康経営優良法人の中から「最も優れた企業」かつ「地域において、健康経営の発信を行っている企業」として、全国上位500社に選ばれたことを指します。

今回は、短期間で成果を上げている株式会社ビットの健康経営やウェルビーイングへの取り組み内容について、代表取締役の鈴木さん、取締役の宮本さん、経営管理部リーダーの石田さんにお話を伺いました。

 

 

「離職による経営悪化の悪循環を変えたい」 ~取り組み内容と効果とは~

 

写真右:株式会社ビット 経営管理部 リーダー 石田奈穂子さん

 

ーーー まずは、健康経営に取り組まれようと思ったきっかけをお聞かせください。

宮本:弊社では、2021年7月に鈴木が3代目の社長として就任しました。そのタイミングで改めて気付いたのが、新卒採用はある程度成功しているのに辞めている社員も一定数いて、社員数が増加していないということです。

鈴木:入社3年以内とかで辞めていく人が多かったんです。どこの業界でもそうですが、会社に入って一人前になるまで時間がかかるわけですよね。2~3年かけて社員教育をして、これから貢献してもらいたいという時に辞められてしまうと企業価値は向上しない。そこで、過去の退職者の理由を調べたところメンタル不調者が多く、これは会社として取組むことで防げる、と思いました。ただ、単に社員が辞めない会社じゃ魅力がない、働く社員にとって魅力や働きがいのある会社にして、より生産性を高め、社員の給与アップや企業価値の向上につなげたい、ということで健康経営を実施しようということになりました。

 

ーーー どのようなことから始められたのですか。

鈴木:まずは健康習慣アンケートを実施してビット社員の健康状態を把握することから始めました。それから健康経営プロジェクトチームを立ち上げ、若手からベテランまで参画するチームを作り、社員やその家族に向けた健康にまつわるいろいろな活動を提案してもらいました。チーム対抗のウォーキングラリーで歩いた距離を競ったり、ボウリング大会を実施したり、今年の秋には運動会を企画しています。

石田:今は12、3人のメンバーで健康経営推進を担当しています。そのなかでワークライフバランスチームと部活動サークルチーム、私が所属している健康診断再検診補助チームの3つに分かれて、さまざまなイベントを考えています。

宮本:推進メンバーには、入社1年目から役員まで、年齢や役職を問わず幅広く参加してもらっています。性別も国籍も多様で、すごくバランスがいいですね。

鈴木:在宅やリモート勤務が増えてから、やはり必然的に運動量が減ったし、健康診断の数値悪化や改善の必要な健康課題が増えつつあったんです。僕もそうですけど、体型も変わってきちゃうんですよね。そこでインストラクターの方を呼んでオフィスでストレッチをやろうという企画もしました。これに関してはビル側も協力してくれて、空いているテナントスペースを貸してくれてみんなで広々とストレッチ運動を実施しました。

 

ーーー 体感している効果はありますか。

鈴木:まだ二極化状態ではあるけども、健康に気をつけている人も増えています。例えば社内にウォーターサーバーを設置したんですが、甘味料が入っているものを好んで飲んでいた人も健康に気をつけて水を飲むようになって。だから最近では、ウォーターサーバーの横に何種類かのお茶を置いてみています。

それから社内の雰囲気がいいですね。顧客先での業務が大半なので、そもそも社内に社員が複数集まっていることが多くなかったけれど、さまざまな取り組みを重ねてきて、会話がすごく増えたように感じます。

残業もかなり減りました。生産性が高まっている証拠だと思います。品質も維持しながらスケジュール通りに進めて、お客さまの評価をいただいています。健康経営はもちろん、品質管理に対しても社員が本気で取り組んでいるのがわかります。

 

ーーー 取り組み始めてからどれぐらいで成果が出ましたか。

宮本:2~3年くらいです。まだまだ道半ばなんですけど、健康経営を実施してから毎年実施している社員満足度調査で、大幅に平均値があがりました。しかも2年連続で。1年目は健康経営の影響だとは思わなかったんですが、さらに翌年も数値があがったときに、これは健康経営の取組みの影響かなと思いました。数年でも効果を実感しています。

 

 

離職対策ではなく、幸せな職場作りを目指したい

 

株式会社ビット 代表取締役 鈴木雅巳さん

 

ーーー 取り組まれていくなかで苦労された点や気をつけた点はありますか。

鈴木:私から毎年トップメッセージを発信しています。業績の話が中心ではありますが、健康経営プロジェクトチームが取り組んでいるイベント開催のお知らせも含めて、年に3回から4回。社員に対して話せることは全てオープンにして、社員と役員との壁を取り払いつつ、社員たちを不安にさせないよう気をつけています。また、イベントはアンケートをとりながら無理やり参加させないようにもしています。やっているうちに「何をやっているんだろう」って見に来るような、そういうスタイルでやればいいかなと。

石田:私は企画をするたびに参加率がすごい気になって、悩んだ時がありました。宮本さんから「全員が全員、参加する必要はないよ。ちょっとずつ人が増えていけばいいんだよ」と言ってもらってすこし気持ちが軽くなりました。在宅やリモートの社員も多いので、セミナー研修などのタイミングでイベントをやるなど、参加しやすい環境づくりを工夫しました。

宮本:健康経営プロジェクトのチームメンバーも増やしていきたいです。みんなプロジェクトをもちながら担当しているので、スケジュール調整が大変ですが、時間の使い方を工夫して活動し、もっといろいろな意見を取り入れていきたいと思っています。

 

ーーーブライト500の認定を受けるうえで、意識して取り組んだ項目などはありますか。

宮本:社員がやりたいと思うことをやろうと言って始めたので、認定を受けるために特別意識したことはないですね。みんなの意見で取り組んできたことが、認定に必要な項目を満たしてきた結果です。強いていえば、ホームページを改修しなきゃとか玄関に賞状飾らなきゃとか、そのくらいです。(笑)

 

ーーー 社員の健康や福利厚生はコストと捉える意見もありますが、どのようにお考えですか?

鈴木:社員の健康に投資することで生産性が向上する、というのはもうエビデンスがたくさん出ているんですよ。幸せな職場作りは、営業利益ベースで生産性が上がっているというのが出ているんです。だからもうそこは経営者がしっかり投資していくべきだと思っています。

 

 

ウェルビーイング経営からはじまる新たな取り組み

 

株式会社ビット 取締役 経営管理部長 宮本由美子さん

 

ーーー 今後取り組んでいきたいテーマ・カテゴリーはありますか。

鈴木:そうですね、今までは社員の離職をゼロにしたいという思いからやっていましたが、今後はより幸せな職場づくりを実践していきたいです。守りから攻めのウェルビーイング経営をしていきたい。                       CHO(チーフハピネスオフィサー)も今年度から設置しました。人それぞれ持っている悩み事は違うし、プライベートにどこまで踏み込んでいいのかというのもありますが、仕事だけでなく社員の人生すべてが幸せになるように願っています。社員全員、「やればできる」という自己効力感を高めながら、会社は社員一人ひとりに寄りそえるような対応ができたらと考えています。

宮本:それから、今後は他の会社さんとも交流し、健康経営に関する取り組みを一緒にやりたいなと思っています。

鈴木:健康経営を通じて、なにか広く社会に貢献できることがあればしていきたいですね。

ーーー 幸せな職場づくりに向けて始動されているとのことですが、具体的にはどのような取り組みをされていますか。

宮本:昨年の下期からウェルビーイング経営の取り組みを始めて、経営陣でビットのアイデンティティの再構築を実施しました。何回も役員で打ち合わせをして、企業理念から見直すかどうかも含めて考えました。そしてミッション・ビジョン・バリューのビジョンを変更したのですが、その際、「管理職が自分の言葉でビジョンを語れないといけない。管理職の強化をしていこう。」ということで、ビジョンのセミナーや管理職への1on1トレーニングを実施しました。1on1にはもうひとつ目的があって。結局、社員の幸せというのは、一人ひとり考えていかなきゃいけなくて、全体でまとめて幸せってことはないんですね。社員それぞれが幸せを追求しなきゃいけない。そのためには、管理職の人たちにメンバーと対話するという力を持ってもらうことが必要だなと考えました。そこで、社員の幸せを追求してもらうための1on1のトレーニングを管理職向けに全6回行いました。

ーーー 効果はありましたか?

宮本:そうですね、1on1の勉強会自体はやって良かったなと思います。勉強会では10分間の1on1をやる実践ロープレを何回も続けていくんです。最初の1回目というのは、もうほぼ8割は上司が話しているんですよ。でも講師の先生から指導を受けて実践を重ねていくうちに、聞く姿勢ができるようになり、最後は相手を中心に話させることも可能になりました。初回と最後を比べるとみんなやっぱりできるようになって、管理職のスキルが上がったように感じます。ただ、今後もしっかり継続しないといけないなとも思います。

ーーー 改めて最後に、「攻めのウェルビーイング」とは、お聞かせください。

宮本:「従業員の健康を考えた時、守りの健康経営ではリスクマネジメントとしてのコスト、攻めの健康経営では投資」っていうふうに言われることもありますよね。ただ、そうは言っても中小企業にとっては、健康経営に関する費用が資産化されるわけではないしPL上のコストだから、その解釈だけで健康経営を中小企業に広めていくのは難しいと思います。

そこで、持論ではありますが、生産性の低下を防ぐのが守りで、生産性を上げるのが攻め、というイメージです。残業を減らすとか、欠勤しちゃう、体調不良やメンタル不調になってしまうのを防ぐ守りの健康経営というところから、より生産性高く、社員が働きがいのある幸せな職場と感じ、意欲的に業務に取り組めるといった社員の活力向上および組織の活性化こそが、攻めの健康経営だと考えています。

 

 

<プロフィール> 

株式会社ビット https://www.bit-corp.co.jp/                                                 

代表取締役 鈴木雅巳    取締役 経営管理部長 宮本由美子   経営管理部 リーダー 石田奈穂子

 

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