「健康経営」の肝はワークライフバランス ~アオアクアの社内風土~

医療の現場では、本当の体調管理や心の管理は在宅復帰してからが勝負!とも言われています。株式会社アオアクアは、病院からの退院後に、在宅でのQOLを守るための医療や看護を必要としている人たちに向き合い、生活に寄り添う看護・リハビリサービスを提供している会社です。

患者・利用者と向き合う最前線の現場であるからこそ、そして1件の訪問を大切にするためにも、働く環境づくりには真摯に取り組んでいます。2024年の今年度は、東京都のライフワークバランス認定企業での受賞、5年連続で健康経営優良法人にも認定されています。この2024年度の中小規模法人部門には16,733法人の認定があり、健康経営への関心の高まりから年々増えている企業数の中で、株式会社アオアクアは4年連続で『ブライト500』(上位500社)に選ばれています。
参照:健康経営優良法人認定制度|経済産業省

利用者の方に必要なサービスが提供できることを第一に、土日・祝日24時間の看護対応体制でありながらも、従業員には、支え合うシステムの構築・無理をさせない組織体制で、働く環境をしっかりと守る、株式会社アオアクア の健康経営・ワークライフバランスについて、管理本部監査部 部長の阿部さんに話を伺いました。

 

 

「健康経営優良法人認定」は会社を見つめなおす機会

 

ーーー御社の事業について、教えてください。

 

阿部:弊社は「訪問看護」という業態です。よく訪問介護と混同されるのですが、病院から退院された方に対し、看護師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がご自宅に訪問して、生活のサポートをしています。

そもそも訪問看護というのは、病院を退院される時に、役所やケアマネジャーさんと相談の上、利用が開始できるものです。病後になかなか身体が思うように動かない、歩けないという方を、普通の生活レベルの歩行ができるようになるためのお手伝いをしたり、発音ができるようにするなど、退院後に在宅で生活するための計画が立てられた上で、弊社のような訪問看護に連携いただいてサポートを開始するという仕組みです。

 

ーーー阿部さんはどのようなお仕事をされているのでしょうか。

 

阿部:弊社は今、設立14年目の会社になります。私が入社したのは、ちょうど設立5年目ぐらいでした。現在は、従業員数100名弱ですけれども、当時は60人ぐらいだったと思います。会社設立の5年目というと、活気があって勢いがありつつ、しかしながら、組織の壁みたいなものを感じる一面があって。ここから、経営の基盤を固めていきたいという時期でした。

私は前職で会計事務所に9年勤め、経営コンサルタントにも携わっていたので、「会社の基盤を固める」というタイミングと使命はやりがいがあって面白そうだと思い、入社しました。それまでは、経営陣も皆、看護師や理学療法士だったので、経理や労務、総務を早急に固めて、管理本部を組織化し、今は管理本部のマネジメントを行っています。

 

ーーー「健康経営優良法人認定」を目指された経緯についてお聞かせください。

 

阿部:訪問看護事業としてというよりも、中小企業の経営としてどうするべきか、というところに常に視点を置いて俯瞰できるようにしています。 その中で「健康経営」は必要な軸の1つと考えており、会社の取り組みが時代背景や社会の基準に対して、外れてしまっていないかを確認しておきたいという意図もあります。

今回は、健康経優良法人認定ですが、それ以外の面においても、社会の中で一企業として、ちゃんと見合ったことをできているかは大切だと思っています。特に医療業界は、少しブラックになってしまいがちなところもあるんですよね。良く言えば、‟奉仕の心”みたいなものがすごくあって。

ただ、働く人にとってはやっぱり、働きやすい安心できる環境というのが1番大事なので。

社会全体として、また中小企業の中で、基準を満たせているか、それ以上のことができているかを確認する機会にもなっています。基準をクリアしていれば公認していただけて、評価やフィードバックを受けることで、見つめ直したりしながら、自分たちの立ち位置を理解するということが1番大きいですね。

 

 

ブライト500の連続受賞は “見直しと進化” から

ーーー『ブライト500』を目指せる、手応えはあるものなのでしょうか。

 

阿部:そうですね。私は特にいろいろな業界を見てきましたので、客観的に自社を見た時に「健康経営」という視点でもそうですが、福利厚生全般的に厚みがあるし、間違ったことはやっていないと思っていました。

全て出来ているとまでは思っていないですが、我が社の強みを適切にレポートできれば、『ブライト500』も目指せるものと思いました。

 

ーー健康優良法人認定は、毎年参加企業が増えてきていますよね。

その中で4年連続での『ブライト500』認定です。御社の中でどういう位置付けになっていきますか。

 

阿部:会社の取り組みを評価していただいた称号ですので、やはりこれからも持続していきたいなと思いますし、現状に満足することなく、新たなことをまた積み重ねていく、進化させていくことも大切ですよね。弊社の課題を見つけながら、リニューアルしていけるようにしたいです。

今年度も選んでいただいた大きな理由の1つだと思っているのが、安全衛生委員会の設置です。

安全衛生委員会として、より良い会社運営をしていくためのさまざまな議題が上がりますが、今あらためて、コンプライアンス問題や会社規程の見直し、ルールの周知などに取り組んでいます。あとは、労働環境として熱中症等も気を付けたいところですので、未然に防ぐための対策、情報発信等を安全衛生委員会が行っています。

 

 

利用者と働き手 双方を支える「チーム看護」体制

 

ーーー「訪問看護」の看護師さんの働き方は、どのようなものなのでしょうか。

 

阿部:通常勤務の開始は朝の8時45分で、朝礼を行い、朝9時過ぎには1件目の訪問を行います。1件あたり50分ほどで、ひとり1日5〜6件の訪問看護に回っていますね。基本は日中の業務がメインですが、オンコールと言って、夜間に救急対応するケースもあります。医療現場ですので、土日・祝日24時間対応体制でフォローしていますが、そのための組織も整えています。

 

ーーー健康経営優良法人を目指す上でハードルになったことはありますか。

 

阿部:この業態は、利用者に対しての担当制であることが多いんですよね。

今は国の制度として有給休暇の取得が義務化されていますが、弊社は有給以外のお休みが年間130日あるんですよ。その上で、有給消化率を100パーセント取得するとなると、3日に1日ぐらいの頻度でお休みということになります。働く身としてはありがたいんですけど、やっぱり仕事をその中で納めなければいけないので、 どう効率的にやるかということ。そのため、チーム制(複数担当制)というのを非常に大事にしているんです。

チーム制にはメリットとデメリットもあって、メリットとしては、複数で入ることによって、急な休みや退職があったとしても引き継ぎ時間を取らなくても済むこと。あとは、患者様に対しても複数の目で診ることで客観的な判断ができます。デメリットとしては、複数人で担当することになるので、情報共有を本当にしっかりやらないと、動きがバラバラになってしまう。また、技量に多少の差がある場合、患者様に対して統一的な医療支援をするところに課題はあります。しかしながら、チーム制にしていかないと今後は成り立たないんですよ。

つまり、私たちの働き方(チーム看護)では、‟協調性”がとても大切ということ。採用やオリエンテーションの段階でも、そういった意図は全部伝えるようにして、その体制に合うか合わないかは人それぞれあると思うので、選んで決めてもらった方がいいと思っています。

先ほどの「休日+有給取得」のあたりについてすこし補足しますが…、弊社は有給消化100%をお約束しています。昔からよくあることだと思うのですが、退職時の最後にまとめて有給を消化するということが多くありませんか?弊社では、有給の取得計画を、会社側と各個人の双方で確認しながら徹底しているんです。

また、弊社の平均残業時間は10~15時間程です。残業時間を少なくするための会社側ができる環境設定として1つ、活動記録を社用携帯から記録できるようにしています。そうすることで、移動時間やちょっとした隙間時間にも情報共有がサッとできる。音声入力で文字化されるものも活用したりして、事務的なことはいかに効率良くできるかということにもこだわっています。

 

 

みんなのワークライフバランスを支える アオアクアの‟社内風土”

 

ーーー一般病院勤務の看護師さんと比べて、訪問看護の看護師さんはワークライフバランスがより重視されていたりするのでしょうか。

 

阿部:病院勤務か訪問看護かというわけではないと思いますが、弊社ではすごく重視しています。

育休を取る人もすごく多いんです。とはいえ、私が入社した当時は、産休・育休からそのまま退職する人も多かったんですけど、最近はみんな戻ってきてくれるんですよ。また、男性の育休もこれまで希望者は全員100パーセント取得できています!そういった子育てをしやすい風土があるというのが1番大きいかなと。制度としては法的にも守られているものなので、どこの会社でも主張はできると思いますが、大事なのはそれを受け入れる社内の風土だと思うんです。

育休の先にも、もちろん子育てが続いていきますよね。お子さんの発熱など仕事を早退してお迎えに行かなきゃいけないという時にも、チーム制でやっているからこそ、みんなでカバーしようよという風土が醸成されているのが、私たちの1番の強みかなと。
やっぱり「制度」はあっても、「風土」がないと難しいものではないでしょうか。

 

ーーーチーム性の安心感と日々の助け合いが、当事者になった時にもお願いしやすいんですね。

 

阿部様:そうですね。このチームワークが1番大事かなと思っています。やれる時にはしっかりやる。一人ひとりがしっかり考えて、みんなでカバーして支え合っていこうよというのが原則です。

 

ーーー働きがいも働きやすさもあって、離職問題の悩みはあまりないですか。

 

阿部:いや、それでもやっぱり離職者が重なる時もありますよね。 そこにはさまざまな原因があって、環境・タイミング・やりがい…などいろいろあるわけですが、そのバランスですよね。

例えば、「環境」は積み重なっていくものなので急には変わらないんですけど、「やりがい」は人それぞれ違うので、しっかり1人ひとりと対峙するしかないと思っています。

弊社では、年3回のキャリア形成ミーティングというものを設けて、従業員自身のキャリアと会社の方向性のすり合わせをしています。これにより自身がこの会社で働く意味をしっかりと見出してもらえることが大切です。一緒にビジョンをすり合わせて、‟目標の達成に応じて給料としても評価する”ということを重点的に取り組んでいます。

 

 

健康経営推進での気づきと、さらなる展望

 

ーー『健康経営』を推進して、現場で実感してきた効果などはありますか。

阿部:健康経営においては、従業員の身体の健康はもちろんのこと、心の健康にもしっかり目を向けて守っていくことが大切だと感じています。仕事のモチベーションも含めて、心の安定はさまざまなことに直結しますよね。業務時間外にも職場の垣根を越えて集えるイベントを開催するなど、福利厚生の充実も、働くみなさんを支えているのではないかと思っています。

経営者は従業員のために、いろいろしてあげたいと思うものですよね。

ただ、そういった福利厚生や会社の制度も、できるだけたくさんあれば良いというものでもないし、当たり前でもない、ということは働くみなさんにも理解していてほしいと思っています。そこはコストの問題だけではなくて、当たり前になってしまって感謝の気持ちを忘れてほしくはないなと。

その他、結婚祝金や出産祝金、長期のお休みももちろん制度としてあり、権利でもあるかもしれませんが、やはりどれも周りのみんなの支えがあって、成り立っているものですから、この感謝は絶対に忘れないでもらいたいなと思います。

 

ーーーさらなる「健康経営」推進のために、取り組みたいとお考えのカテゴリーなどはありますか?

 

阿部:最近は、社会全体でもメンタル不調となってしまう人が増えてきていますよね。

そういう人を0にすることは難しいのかもしれないですが、会社としては、一人ひとりと向き合いながらどう運営していくかということの方が大事だと思っています。

それから、もっと女性活躍推進をするためにも、女性幹部も増やしたいと思っています。

看護師は男性もいますが女性の方が多く、事務方も私以外は全員女性ですし、ケアマネジャーさんも半分ぐらいは女性だと思います。 リハビリ担当は少し男性の方が多いですが、全体で見ると女性が約6割ぐらいなんです。それに対して現在は、経営幹部のほとんどが男性なので、いろいろな施策を検討する時も、ちょっと男性目線なんですよね。本当に従業員のみんなに活用しやすいものにするためにも、またもっと女性の活躍を推進していく意味でも、女性目線がほしいなと思っているからです。

女性活躍推進としては、いくつかの婦人科検診を会社負担で受診してもらえるようにしました。受診者も順調に増えてきています。

また、いかに働きやすい環境を整えるかというところでは、育休後の復職しやすさなども整えています。 子育てに関してでは、フルタイムが8時間なのに対し、時短制度で6時間勤務にするというのは、3歳までのお子さんのいる方が希望した場合には実は義務なんですよ。育児・介護休業法で定められています。ただ、弊社はそれ以外にも、‟7時間時短”と言って、小学生に上がるタイミングまでも時短勤務で働けるような制度を設けていたり。そういった現場の声に合わせて、制度を検討していけるところも弊社の強みではないかと思います。

 

―――最後に、これからの健康経営についてお聞かせください。

 

在宅政策が重要視され、平均在院日数(病院での入院)が短くなり、在宅医療のニーズが高まっていますが、その担い手はまだまだ少ない状況にあります。一方で、患者様やご利用者様は、病院や施設での生活より、自宅で過ごすことを望まれる場合が多く、病院や施設で考えていた予後予測よりも、良い経過をたどる方も少なくありません。

私たちアオアクアの使命は、自分らしく過ごしたいと願うご利用者様やご家族様に対して、常に最高の満足と感動のサービスを提供することであり、地域包括ケアの組織の一翼を担い、お役に立つことです。

その使命を果たすためにも、はたらく社員の心身が健康で、いつも笑顔を届けられることが大切だと考えています。社員一同、生活と仕事の調和をみつめなおし、一人ひとりの人生を大切にする企業になるよう努力をしていきます。

 

 

 

<プロフィール>                                                         

株式会社アオアクア https://aoakua.net/

管理本部 部長 監査部 部長  阿部 良平                                       

 

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