企業で働く人々の「心と身体のトータルケア」の実現を目指す、プライマリー・アシスト株式会社。
少子高齢化における「労働人口の高齢化」はますます進んでおり、企業は従業員が健康で長く働き続けることができる環境の整備や支援を行うことが急務となっております。労働力不足の拡大や社会環境の変化から「健康経営」は日本の喫緊の課題といえるでしょう。
2015年の創業後に「健康企業宣言(協会けんぽ)」を行い、2017年には「健康経営優良法人」に、さらに2021年からは「ブライト500」*に、連続して選ばれ続けているプライマリー・アシスト株式会社の代表取締役社長 石山さん、執行役員 本井さん、人事 鈴木さん、販売企画チーム 山崎さんにお話を伺いました。
*「ブライト500」とは、健康経営優良法人(中小規模法人)に認定された企業の中でも、とくに優れた取り組みを行っている500社に与えられる称号です。
「健康経営」をすべての企業へ 創業への思い
―――プライマリー・アシスト株式会社の事業内容と立ち上げの思いなどを教えてください。
石山:当社は、2015年の経済産業省の健康経営普及促進に合わせて設立しました。企業の健康経営を促進すること、これが私どもの事業そのものです。私たち自身が効果を感じ、納得できるものだけを厳選して「健康経営」を推進する企業へ提供したいというポリシーで支援しています。
現在の取引先は約600社で、 ほとんどが上場企業もしくはそのグループ企業となっていますが、中小企業でも零細企業でも、社員が1人でもいれば健康経営に取り組むべきだと考えています。
中小・零細企業が普通に健康経営に取り組むようになることが、ひいてはこの日本を救うことになると思っております。
―――具体的にはどのようなサービスを提供されていらっしゃるのですか。
石山:まず、私たちは健康経営実践企業に対して大きく2つのソリューションを提供しています。
1つは産業医や保健師等の人材供給です。労働安全衛生法により、事業所で働く人数が50名を超えると産業医が必要となります。しかし、なかなか一般企業の人事労務担当者がその医療専門職の採用についてのノウハウをお持ちであることは少ないのではないかと思います。私たちはそういった課題に対して、産業医、保健師、看護職、心理カウンセラーなどの人材をさまざまな形で、企業へご紹介するというサービスを行っています。
もう1つがソリューションの提供です。ストレスチェックや専門家による健康セミナーなどを、パートナー企業との連携により提供しています。冒頭で、私たち自身が納得できるものを提供したいと申しましたが、例えば、「ストレスチェック」ひとつとっても実に20社ほどに直接訪問して、内容を詳しく確認した上で本当にお勧めできると感じたサービスのみを選定して取り扱っています。
また、産業看護職への教育(リスキリング及びリカレント)事業も行っています。
産業看護職のキャリアについては、新卒で病院勤務を経験、結婚や子育てなどライフステージの変化によって退職し、企業内保健師を目指すというケースが多くあります。その場合、企業人としての経験はゼロからのスタートになりますので、企業で必要とされる産業看護職業務を身に着けるための教育支援が可能です。
課題はさまざま 目の付け所をどこにするのか
―――健康経営優良法人認定の取得を目指す上でのポイントはありますか?
石山:法令が遵守できていれば、認定を取ることは実は難しいことではないんです。とはいえ、‟当たり前のことを当たり前にやる“というのが1番難しくもありますので、そこが大変なポイントかなと思っています。また大企業と中小企業では、それぞれの難しさもあると思っています。
大企業はやはり体制面もしっかりされている印象で、専任部署を置いているケースも多く見受けられます。一方で組織が大きい分、全社員への公平性、周知と徹底に時間がかかるという課題が多いのも事実です。
中小企業は、まず専任をたてるのが難しいことがありますし、社内規定の整備を1から始めるケースも少なくありません。
また、業種によっては取り組む項目の難易度が変わる事もありますので、会社規模の違いだけではないんですけどね。結局はケースバイケース、1社1社対応方法が変わると言った方が正しいのかなと思いますね。
———御社の「健康経営」で大事にされていること、テーマを教えてください。
石山:「食事・睡眠・運動」です。まずは、この3つが生命の維持に大事です。
その中でも健康経営において1番大事にしているのは、睡眠時間の確保ですね。メンタル不調になると睡眠障害が起きると思っている方が多くいらっしゃるのですが、睡眠障害が起きていることでメンタルのバランスが崩れるというサイクルが少なくありません。
そのため、どんなに忙しい時期でも睡眠時間をしっかり確保させるということに重きを置いています。
———なるほど! 睡眠時間の確保についても施策を行っているのでしょうか。
石山:はい、勤務間インターバル制度を作り、その時間を14時間で設定しています。
山崎:定時が9時〜18時なんですけれども、例えば20時に退勤したら、インターバルを14時間設けて、次の日は出社時間が朝10時になります。国内企業の勤務時間インターバルの平均は大体11時間ぐらいで設定されているところが多いので、当社の14時間制は国内でも最長クラスかなと思います。実際、体力的にも精神的にもすごく助かっています。勤務間インターバルを導入する企業は約5.8%にすぎず、もっと多くの企業に導入して欲しいと考えております。
自ら実践する「健康経営」だからこそ得られる気づき
———具体的な実践ですね!
御社の持続的な健康経営のために、さらに取り組んでいきたいテーマなどありますか。
石山:当社の今の課題は、朝食欠食が特に若い世代に多いことです。朝食を摂らないと午前中の仕事の業務効率が落ちるというエビデンスも出ているんです。ただ食べるというのではなく、3食しっかり栄養のバランスの取れたものを食べるという施策をこれから取り組んでいきたいと考えています。
———さまざまな施策の社内への浸透については、どのようなアプローチで進めているんですか。
石山:半ば強制するしかないですよ。(笑) 健康のためですから、やりなさいって言うんですよ。
———心優しい強制ですね。(笑)
本井:そうですね、難しい場合はなぜできないのか理由を聞くようにしています。自身の意識の問題か、周囲との業務の関わりが問題なのか、原因を特定することで根本的な解決に繋げたいと考えています。
石山:実際にあったことなんですが、みんなが理解しているものだと思っていたインターバル制度でさえ、「制度を使っていいなんて、知りませんでした」という人がいたりするんですよ。こちらはみんなが分かっているものだと思い込んでいましたし、そのうえで利用していないと思っていましたから、正直びっくりしました。私の伝え方が悪かったんだなと反省しましたね。
それからはマネジメント層に勤務実態の把握を徹底させて、インターバル制度の対象となったメンバーに対して、「明日のあなたの出社時間は〇時だよ」と伝えてもらうようにしました。そうはいっても…ひと通りのことをやっても、変わらないものはなかなか変わらないということもあります。でも大事なのは、そこでやめちゃいけないってことなんだと思います。
地道な継続が大切 認知から具体的な実践へ
———人事の観点では、健康経営の推進による定量的な変化はありましたか。
鈴木:そもそも健康経営の取り組みは、定量的な変化が出るのに時間がかかるものだと思っています。
具体的に取り組んだ施策としては、肩こりや腰痛を訴える人が増えてきた時には、運動習慣を促すために全従業員にウォーキングアプリを提供したり、社内にぶら下がり健康機を設置したりするなど試してみました。
また、体重・体脂肪・筋肉量を測定できる機器を提供することで、毎月、自分で身体の状態把握をするという取り組みも行いました。そういった施策では、だんだんと取り組む人数や各自のウォーキング歩数が増えてきたという数値的な変化を確認することができましたね。
———健康経営に対するソリューションを提供している御社から見て、企業が健康経営を推進するための課題はどこにあるとお考えですか。
石山:企業規模に関わらず、経営課題はどこの会社にもあると思いますが、優先順位をつけて取り組んでいくなかで、「健康経営」が優先順位の上位にあるかどうかですし、またはその意義に気づいていないケースもあると思います。
大企業ではCHO(チーフヘルスオフィサー)などを設置する企業もすこしずつ増えてきましたよね。産業医を取締役に入れたりするなど本気で取り組んでいるという真剣な姿勢も伺えます。
10年前は「健康経営」という言葉自体知らない上場企業の人事担当も少なくなかったのですが、今はもう大企業での認知は定着していると感じています。これからは中小企業にどう広げていくかが国全体としての課題ではないかと思っています。
企業ウェルビーイングの実現には 「健康経営」が不可欠
———健康経営を推し進めたい経営側と、現場の皆さんの温度差に苦労しているという話もよく聞きますが、どうお考えになりますか。
石山:大企業にはいろんな職種があって、営業部門ではどうする?とか、工場ではどうする?と調整していかなきゃいけないことがたくさんありますよね。大変だと思うんです。
ただ、私はできる部署からやればいいと思うんですよ。施策導入しやすいところから始めていけばいい。
私も以前は上場企業に勤めていましたので、会社の制度というのは従業員に均一に行き渡るように考えられているということも理解しています。しかし、世の中が多様化しているなかで、「均一」ということに拘って導入できないというのはもったいないことだと思います。
———そうですね、日本企業の生産性向上やウェルビーイング実現のためにも、「健康経営」の普及が大切ですよね。最後に、これからの御社の展望お聞かせください。
日本は世界でも有数の“働く時間・勤務日数が多く、休む日数・時間は短い”という状況下にあります。生産性を高める為には、人への投資と、IT投資、働く環境への投資と、様々な分野を同時並行で進めていく必要があります。加えて、1社1社の企業に多くの経営課題が存在しております。その中でも『人』でなければならないこと、「AI・DX推進」における業務効率化の両輪が不可欠であります。いずれも健康で活躍できる人財なくては成し遂げることが出来ません。健康経営は企業の規模を問わず、当たり前の取り組みに浸透するまで必要なテーマとなります。当社は健康経営の普及促進をする為に設立した企業として、健康経営を担う人財の教育・育成をさらに強化し、多様な企業の困ったというニーズに、応えられるよう取り組み続けて参ります。
<プロフィール>
プライマリー・アシスト株式会社 https://primary-assist.co.jp/
代表取締役社長 石山 知良 執行役員CFO 本井 智子
人事チーム 鈴木 成美 販売企画チーム 山崎 美帆