アイデアル株式会社は大阪市の難波に本社を構える企業で、メインとなるのはSES(システムエンジニアリングサービス)事業です。社名のアイデアル(IDEA-L)には「考え(IDEA)」を「理想(IDEA-L)」に変え、実現させるという意味が込められています。「社員」と共に、「お客様」と共に、さらにその「大切な家族」と共に「感謝の言葉」があふれる理想的な会社を目指し、考えを実現させる「理想づくり」とそれを実現する人財を育てる「人づくり」を経営の最も大切な考え方としています。
これまで「健康経営優良法人(ブライト500)」には4年連続で認定されており、各所で活躍する従業員をまとめ上げて行う、健康経営®に向けた取り組みや工夫があるようです。健康経営推進チームのリーダーである嘉藤隆信さんに、これまでのストーリーと今後のビジョンについてお話を伺いました。
「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
従業員の意見が、健康経営優良法人を目指すきっかけに
人事部 部長 嘉藤隆信さん
――御社の中での嘉藤さんの業務と健康経営に関する役割を教えていただけますか?
嘉藤:私は人事部と管理部を兼務していまして、人事部では新卒・中途の採用活動から研修の整備、既存社員の能力開発のサポートなど、人材育成やキャリア開発を主に担当しています。管理部では社会保険や雇用保険、事業所関係の手続きなど、幅広く担当しています。健康経営の領域では、社内に「Keep Fit」という推進チームがあり、その中でリーダー的なポジションとして健康経営を推し進めています。チームは私を入れて20名体制で、健康経営のコンサルティング会社にサポートをしてもらっています。専門家のお力添えをいただけるというのが、かなり大きいですね。
――御社は4年連続で「健康経営優良法人 ブライト500」に認定されています。SEの方はデスクワークが中心になるので、身体面・メンタル面でのストレスケアが必要だと思いますが、御社が健康経営に取り組んだきっかけや当時の課題についてお伺いできますでしょうか?
嘉藤:きっかけは従業員が50名を超えたタイミングですね。ご存知のように50名を超えると、労働安全衛生法により、産業医を選任して衛生委員会を設置し、月に一度会合を開くように義務付けられているので、弊社もそのタイミングで取り掛かりました。ある時、衛生委員会に参加していた従業員が健康経営優良法人の認定を見つけてきて、今後はこの認定を取ることを目標にして衛生委員会を進めませんか? と提案してくれたのです。
恥ずかしながら、私はその話を聞くまで健康経営優良法人という認定があることも知らなかったのですが、衛生委員会もややマンネリ化していたところだったので、その認定取得を目指すことにしました。しかし何をどう進めたらいいか分からなかったのですが、健康経営のコンサルティング会社の方とご縁があり、4年前からサポートをしてもらっています。
取り組みを始めた当初は、初年度に健康経営優良法人の認定を受けて、3年後にブライト500を目指そうと計画していたのですが、初年度でブライト500の認定をもらうことができて、そこから4年間継続しています。健康経営優良法人の申請時には申請書の内容を意識しつつ、追加された項目を見て経済産業省はおそらくこの領域を推進したいのだなと考えて、翌年にその点を生かすという流れをつくっています。
ウォーキングイベントでは、若手をサブリーダーにしてチーム活性化
――健康経営に関する具体的なお取り組みを教えていただけますか?
嘉藤:コロナ以降、運動施策の取り組みとして8週間限定のウォーキングチャレンジを毎年実施しています。きっかけは、四半期に1回従業員から取っている健康に関するアンケート調査で、運動不足と感じている者がかなり多くいることがわかりました。話を聞くと、例えば週2日出勤して週3日在宅というハイブリッドで働いている場合も、在宅勤務の日は一歩も外に出ないということが多かったのです。弊社は平均年齢が30歳ぐらいの若い会社ですが、このまま40〜50歳ぐらいになったら生活習慣病のリスクも高まってしまうのではないかと考えて、運動習慣を身につけてもらうことにしました。
単に運動するとか、1人で歩くというのはなかなか長続きしないし、楽しんで取り組めないと思うので、8週間の期間限定で全従業員がいくつかに分かれたチーム対抗で競い合う、ウォーキングイベントを企画しました。リーダーやサブリーダーを中心に、それぞれが自宅周辺を歩きながらオンラインや電話でコミュニケーションを取って歩く工夫をしたり、休みの日に公園に集まってみんなで歩くような企画を立てたりするメンバーもいるので盛り上がっていますね。
――チーム分けに工夫をされていたりするのでしょうか?
嘉藤:なるべく年齢や役職、部署、業務先がバラけるようにして、普段接点がない人たちを同じチームにしたり、若い方と年配の方がこのイベントを通じてコミュニケーションを取るように、関わりが薄いところをあえて優先したりしてチーム分けをしています。
あとは、普段はまだリーダーシップを発揮する機会がない若手をサブリーダーとして積極的に起用しています。イベントなので、ミスをしても損害が出るわけではないため若手にリーダー役を任せつつ、年配の人や役職者たちは若手が頑張っているのだから自分たちも盛り上げようという気持ちにさせることで、チームを活性化させています。
また、8週間もあるのでウォーキングだけではない企画も加えています。例えば毎週月曜日にストレッチに関する動画を配信して怪我の予防に繋げてもらったり、睡眠に課題を抱えている者も多くいたので、快眠につながるようなチップス、例えば寝る前の何分間はスマホの画面見るのをやめましょうといった情報を週に1回ずつ配信して、それに対する感想をチャットで意見交換をしながら、優勝を目指してもらうようにしていますね。
――ウォーキングをするだけでなく、他の健康にも繋がる取り組みも絡めるのは独自性がありますし、若手の方をサブリーダーにするのは、人材育成面でもイベントを通じて成果が期待できますね。
嘉藤:ウォーキングなどをやらずに家でゆっくりしていたいという人もいると思うんです。そういう人達に、まずはやってみようという空気を作るように、普段から前向きな人達をサブリーダーにすることで、バンドワゴン効果みたいなことが起きるように意識していますね。
情報提供を絡めたスポーツテスト実施など、課題改善への工夫も
――他にはどのようなお取り組みをされていますか?
嘉藤:メンタルヘルスの講習は年に1回は必ず入れ込むようにしています。
ちょっと毛色の違うところで言うと、去年スポーツテストを行いました。スポーツテストと言ってもオフィスでできるようなもので、握力測定や座って行う前屈、腹筋などです。握力測定の器具などもレンタルサービスを利用して、自分の年代に合ったパフォーマンスが出せているかどうかをその場で皆さんに確認してもらって、足りていなければその機能を補うための運動などを情報提供して、今後の運動能力の改善に取り組んでもらうようにしました。
あとは育児・介護と仕事を両立させるための情報提供ですね。親の介護などを理由に退職する人がいたり、これからは男性も育児に積極的に参加していくケースが多いと思うので、それらと仕事をどう両立させていくか。例えば親の介護が必要になったら、自分がやらなければいけないって抱え込む人が多くいるかと思いますが、地域のケアマネージャーなどに相談するなど専門家に任せて、うまく仕事と両立させることが大切だと思っています。セミナーなどで情報提供をした結果、選択肢が広がったとか、少し気持ちが楽になったという意見もありました。
イベントやセミナーは年間何回実施すると目標を決め、健康経営のコンサルティング会社の方と相談しながら実施計画を立てています。一つの施策後のアンケート等で改善状況を分析したり、今後の不安や取り組んでほしいテーマを従業員から情報収集して、実際に課題の数値を確認しながら、次の施策のタイミングと内容を決めています。
健康経営に取り組む会社であることが、志望動機に
――これまでの施策に対する従業員の皆さんの反応や、変化がありましたらお聞かせいただけますか?
嘉藤:ウォーキングイベントは従業員間のコミュニケーションが活性化されて、普段交流がなかった人とコミュニケーションを取るようになったことで、相談をする相手が増えたと聞きます。
また人事のメンバーを見ていると、新卒の学生たちに向けた会社説明会で、その健康経営の取り組みを生き生きと説明してくれて、メンバー自身がメリットとして捉えてくれてるんだと思いましたね。実際に学生の方からも、健康経営に取り組む会社であることを志望動機の一つとして挙げてくれる学生も少しずつですが増えてきています。
――ほかに数値として見える形での変化はありましたか?
嘉藤:直近の状況だと重点的に見ているのが運動習慣の部分で、厚生労働省が薦めている1日8,000歩以上歩くことが週の半分以上出来ているかどうかアンケートを取っています。一昨年9月では54%の人しかできてなかったんですが、去年の9月のアンケートでは72%の方が実現できていて、18ポイント改善できていました。あとは食育、食事に関する栄養バランスなどをセミナーの中で実施していたので、運動習慣と絡めてBMI(Body Mass Indexの略、世界共通の肥満度の指標)の数値が改善した人の割合が前年に比べて5ポイントほど改善することができました。
弊社としては運動習慣、BMI、睡眠の3つを重点的な評価指標として掲げていて、睡眠に関しては去年は効果が出なかったのですが、運動習慣とBMIは数値の改善が見られたので、ここは来年も継続して取り組んでいきたいと考えています。
――健康経営への投資という側面では、御社ではどのように捉えていますか?
嘉藤:もちろんコストを下げたいという思いはありますが、今サポートしてもらっているコンサルティング会社のサービスを内製化するにはまだまだ社内の体制が不十分なので、その点に関しては必要な投資だと前向きに考えています。ヒントや経験をいただいて、ゆくゆくは自分たちでできる部分は内製化して、コンサルティング会社にしかできないような部分では、どんどん新しいものを取り入れていきたいですね。
今後は今までやってきたことを着実に根付かせるフェーズへ
――これからの健康経営、ウェルビーイングの実現に向けて、重点的に取り組んでいきたいことや展望について、教えていただけますでしょうか?
嘉藤:今後は新しいことを掲げて取り組んでいくよりは、今まで取り組んできたことを着実にしっかりと風土と習慣として根づかせていきたいと考えています。直近ですと、睡眠に課題を抱えている従業員に対して、今までは睡眠の質の改善を意識していたのですが、睡眠時間の確保も考えて、どういう取り組みだと効果が現れるかを試行錯誤しながら実施し、体の健康だけではなく、メンタルヘルスもしっかりと向き合っていきたいと考えています。
あとは健康経営の推進チームKeep Fitが、これまではコンサルタント会社と社長と私で決めた内容を、実務レベルに落とし込んでいるのですが、今年からは企画段階から現場の人間に積極的に入ってもらって、自分たちの意見をどんどん反映させていく。そんなプロジェクトにしていきたいと思っています。
<プロフィール>
アイデアル株式会社 https://www.idea-l.co.jp/
人事部 部長 嘉藤 隆信