人生100年時代を豊かにする “健康ソリューションカンパニー” 「ルネサンス」の健康経営とは

株式会社ルネサンスはテニススクールからスタートした1979年の創業以来、『生きがい創造企業』を理念とし、お客様に健康で快適なライフスタイルを提案、サポートをし続けています。現在では、全国のスポーツクラブならびにフィットネススタジオや介護リハビリ施設などを280ヶ所以上展開し、企業や自治体での健康づくり支援などのヘルスケア関連事業のほか、海外市場へ向けた取り組みも展開しています。

また、2022年度からは「人生100年時代を豊かにする健康ソリューションカンパニーの実現」を目指した長期ビジョンを掲げ、健康経営®を経営戦略の中核に据えて活動。従業員の心身の健康が、持続可能な成長の基盤であり、お客様や社会へ提供する価値の向上につながると考えた全社一丸となるその取り組みは、2025年度も大規模法人部門約3400社の中から「ホワイト500」に連続9年目の選出となり、健康経営度評価においては全国で1~50位という高評価を得ています。

今回は、健康経営をリードする株式会社ルネサンスの全社一丸となる取り組みを社内向けに支える人事部、社外向けに推進する健康ソリューション部カスタマーサクセスチームのみなさんにお話を伺いました。

※「ホワイト500」とは、健康経営優良法人(大規模法人部門)の中から「最も優れた企業」かつ「地域において、健康経営の発信を行っている企業」として、上位500社に選ばれたことを指します。

「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

参照:健康経営優良法人認定制度|経済産業省

 

健康経営支援が中心事業のひとつ そのリソースやノウハウを自社の取り組みにも活用

 

 

―――まずは御社の事業内容についてお聞かせください。

 

日野:メインとなる事業は全国約100か所に展開する「スポーツクラブ ルネサンス」の運営になりますが、当社の「生きがい創造企業」という企業理念のもと、これまで積み重ねてきた健康づくりに関する知見やノウハウを活かして、スポーツクラブ以外の領域にも事業を拡大しています。

介護リハビリ施設の運営をはじめ、企業様の健康経営支援や自治体の健康増進をサポートする事業など、ルネサンスグループ会社として海外を含む291拠点を通じて、皆様の健康維持と「生きがい創り」のお手伝いをさせていただいております。

また同様にルネサンスは従業員の「生きがい創り」も大切にしています。その土台となるのは心身の健康であると考え、健康経営の推進に関しても早くから本気で取り組んできたという自負があります。

 

―――では、皆様それぞれのご担当業務や役割をお伺いします。

 

野尻:私は人事部に所属し、当社の経営戦略の一つでもある「健康経営」を担当しております。業務としては、まず従業員の健康に関するデータを定量化して経営層に上げること。そして、その数値の向上が当社の経営目標にもなりますので、従業員に対してどんな施策が効果的なのかを考え、実行するという業務にあたっています。

 

鈴木:私は、健康ソリューション部カスタマーサクセスチームに所属しております。

社外向けの健康経営支援が主な業務になりまして、「スマートAction」という当社の支援サービスの担当になります。これは健康経営に取り組む企業様や団体様のために、1,300以上の企業・健康保険組合の支援実績を基に開発されたサービスで、月300本以上の健康プログラムをオンラインで配信し、健康課題にアプローチするものです。健康リテラシーの向上をはじめ、調査票への対応など、健康経営の推進に必要となる多種多様なニーズに対応するサービスです。

 

 

―――御社は健康経営優良法人・ホワイト500への選出が続いています!まさに健康経営のトップをゆく存在ですね。

 

日野:おかげさまで2025年度も「健康経営優良法人・ホワイト500」の認定をいただくことができまして、これで9年連続となります。また、2024年度の健康経営度評価において、当社は全国3869社中50位以内となり、総合評価偏差値も「64.9」と過去5年間に着実な改善を続けていることが評価されています。これは従業員メンバーと経営層が、まさに一丸となった取り組みの成果だと思います。

 

―――認定取得の理由やきっかけについてお聞かせください。

 

鈴木:当社は「健康経営」という理念が世の中に浸透しはじめる前から、企業としての健康づくりに積極的に取り組んでいまして、従業員の健康こそが生産性を高める土台だと捉えていました。実は、そんな現在の「健康経営」につながる考え方を日本に広めようという活動に当社の人間が参加していまして、健康経営優良法人の制度づくりにも携わっていました。

 

―――健康経営優良法人の最初の仕組みづくりから御社が関わっていたということですか。

 

日野:そうですね。当社の創業者であり名誉会長の斎藤が、2013年に「健康経営🄬」の登録商標を持つNPO法人健康経営研究会とともに、「健康経営会議」を立ち上げました。経済産業省と連携しながら、企業や自治体とも協力し、経済界全体でこの制度を推進・発展させるべく取り組んできました。

また、認定に挑戦しようとしたもう一つの理由としては、社内的には高いレベルで健康経営に取り組んでいるという自負がありましたが、外部からの評価をあまり受けてこなかったんですね。やはり客観的な評価をいただければ、さらに自信を持って取り組めますから。

 

鈴木:実際、お客様やお取引先様からの信頼も高まったと感じています。

 

 

―――御社の健康経営の取り組みにはどのような体制づくりをされていますか。

 

日野:当社の体制としてはまず、経営トップと各事業や機能部門の役員を中心とした「健康経営推進委員会」がありまして、部門を横断した従業員主体の「ルネミラ(ルネサンスの未来をつくるプロジェクト)」という組織を設け、さまざまな課題の解決に取り組んでいます。各事業や各部門が主体的に健康経営に関わり、緊密に連携することで実行力を高める体制づくりを整えています。

また、その組織体制についても評価いただいており、偏差値も「65.9」と、2023年度からも+4.3ポイント向上させています。ポイントは経営層の積極的な関与をはじめ、ルネミラによる全社横断的な実施体制が機能しているところにあると思います。

私どもが提供している「スマートAction」のサービスもそうですが、当社は健康経営支援を事業の一つとしていますので、そのためのリソースやノウハウを当然ながら持っています。当社が行う健康経営の推進においてもそれらがフル活用されるわけで、健康経営における当社の強みはまさにそこにあります。

 

全体を対象にした施策には限界も 課題は一人ひとりの健康をどこまでケアできるか

 

 

 

―――9年連続の「ホワイト500」という実績です。御社にとって、推進におけるハードルなどはあまりないのでしょうか? 

 

野尻:いいえ、すべての従業員に対して一律で行うような施策を導入・実施しても、期待した効果が得られないということがありました。従業員一人ひとりに寄り添い、その原因を見つけ出して効果のある対策を実行していくというのはなかなか…簡単なことではないなと感じています。

 

―――全体に向けた一律の施策では効果が出づらいというのは。

 

野尻:当社では健康の維持・増進を目的に、「カロママ プラス」というヘルスケアアプリを全従業員に導入していまして、これは日々の運動と食事を入力すると健康スコアが判るというものです。私どもが長年にわたり継続的に個々人への働きかけをおこなってきた結果として、現在アプリの登録率は100%に近い状況ですが、このアプリを利用したイベントを実施して明らかになったことがあります。それは、いくら生活習慣の改善を促しても、必ずしも健康診断の結果に結び付かいない人もいるということです。一律の対策では限界があるからこそ、これからの課題としては、一人ひとりに寄り添うことができる個別の対策が必要になると考えています。

 

 

―――すべての従業員の健康を考えるならば、個々人に寄り添った取り組みが必要なんですね。

 

鈴木:「スマートAction」を2023年度から社内向けにも導入したんですが、 当社の場合はスポーツクラブ勤務や施設勤務の方は特に、全員が業務用にパソコンを所有しているわけではありませんので、仕事場ではパソコンを見られないことも多いんです。個々に必要とされる情報をどのように選び抜いて提供していくかという工夫とともに、そもそもの前提として、いつでも好きな時に情報を得るという状況を作ることが難しい人に対して、どのような環境整備ができるかというのもこれからの当社の課題と感じています。

 

「健康である」ことも人事考課の対象 運動機会を支援する 1日最大2時間の休憩時間

 

 

―――御社ならではのユニークな取り組みや施策はありますか。

 

野尻:いくつかありますが人事考課の評価項目のひとつに「健康」そのものがあるというのも特徴的だと思います。期初に自身の健康課題を設定して、期末までの目標指標を決め、その達成度合いが評価対象になるというものです。

管理職になると、チームメンバーの健康状態までが人事考課の対象となり、役職によってその評価も変わるんです。また、身体だけではなくメンタル面やコミュニケーション面も健康の定義として大切にし、エンゲージメントやチームとしてのコンディションも評価対象になっています。

個人の目標指標については、従業員はスポーツクラブを無料で利用できますので、目標達成のために運動をする場と、その結果を測れる場所があるわけです。施設には「インボディ」という体組成を測る機器などもありますから、健康維持・増進のための環境は充分に整っているところは大きいですよね。フィットネス産業全体で盛り上げている体力測定イベントを年に1回は開催していまして、職場の仲間と共に、体力年齢の見える化を通じて、日頃の取り組みを楽しく確認するという機会も設けています。

また、勤務中の休憩は1日最大2時間まで取得できますので、これが運動機会の支援につながっていると思います。結果として2024年度の調査では、週1回当たりに30分以上の運動を実施している従業員の割合が84%を超えることができ、スポーツ庁の「スポーツエールカンパニー」という認定制度において「シルバープラス」という評価を受けることにもつながりました。

 

 

―――運動習慣の定着のために良い制度と環境を整えられていますね。

 

鈴木:2時間あると良いんですよね。お昼休憩にスポーツクラブを利用してトレーニングして、お風呂にも入ってリフレッシュして。あらためて午後から頑張る!みたいなことができます(笑)。

 

―――体力測定イベントというのは どのような内容なのでしょうか。

 

野尻:2024年から開催していますが、これまでに延べ666名が参加しています。腹筋、トレッドミル、反復横跳びなど6種目の運動の計測値をアプリに入力し、体力年齢を測るというもので、約3ヶ月間のイベント期間内に実施してもらいます。この体力測定の内容やアプリは、日本フィットネス産業協会(FIA)が大手総合型スポーツクラブと連携して提供している「全国カラダ年齢測定」というサービスを利用しています。

実は今年69歳になる当社の会長ですが、40代前半のカラダ年齢を記録しました!従業員からは「自身や仲間の健康を見直す良い機会になった」、「会長に負けないように運動習慣を大切にしたい」といった声が上がり、健康意識向上にプラスの影響を与えています。

 

日野:すこし前になりますが小池百合子東京都知事が当社に視察に来られた際に、体力測定の様子も見ていただきました。働く人の高年齢化も進んできていますから、スポーツの普及推進のみならず、転倒災害などの防止に向けても、中央官庁や東京都からのバックアップを得られればと期待しているところです。

 

従業員のヘルスリテラシーを数値化 改善には自社開発の「スマートAction」をフル活用

 

 

―――体力測定への参加者数も多くて、全社的に前向きに取り組まれているという印象です。

 

野尻:そうですね。当社の健康経営はその担当部署だけでなく、全社一丸で取り組むことで進められています。たとえば、全従業員を対象に「健康アンケート」を実施していまして、それぞれが考える健康について意見を出し合うことで施策などに反映される仕組みがあります。

これまで実施したアンケートには「従業員のヘルスリテラシーの数値化」を目的としたものもあります。当社の従業員は健康のプロフェッショナルです。であれば、お客様に健康を提供する者として、そのプロフェッショナル度やリテラシーの度合いまでも指標化をして確認しておく必要があります。そうすることで従業員は自分のレベルを確認できますし、足りないことへの努力目標も見つけることができますから。

健康アンケートでは、一人ひとりの行動変容についても確認しており、自身の健康に対して改善の意志があるかどうか、また、健康に何らかの課題があると感じているかなどをヒアリングしています。たとえば、行動変容できる方に対しては「スマートAction」を勧め、もっとすすんで実践できる方には適切なコンテンツを紹介します。一方で行動変容まで進んでいない方へは、ルネミラ事務局やプロジェクトチームからアプローチするなどしています。

 

 

―――「スマートAction」が有効活用されているのですね。

 

鈴木:そうですね。たとえば、従業員メンバーはそれぞれの目標を立てますが、その際にも「スマートAction」の活用を勧めていて、セミナーまたはレッスンを月2本以上視聴してもらうことも加えてもらっています。「スマートAction」の場合、受講状況の確認もできるので定量的な管理にもつながるんです。 コンテンツの幅はすごく広く、運動エクササイズ系や医師によるセミナー、外部研究所のセミナーなどがあります。内容も、頭痛や眼精疲労などの体調不良の改善を目的にしたものから介護などに関するものまで、本当に多種多彩です。時間的にはセミナーは10分~30分程度のものが多く、エクササイズ系なら3分~30分ぐらいでありますね。個人のタブレットやスマートフォンでも視聴可能にしましたので、隙間時間にも取り入れてもらいやすくなったと思います。

 

―――人気コンテンツというのはありますか。

 

鈴木:参加人数が多いのはヨガレッスンのような繰り返し見られるようなものですね。 あとはお昼のエクササイズ集といいまして、3分ほどのエクササイズをまとめたビデオ集が人気で、肩こりや腰痛対策に利用されています!

セミナー系で人気なのが“感情のコントロール”を目的とするもので、「怒りドッカン編」や「モヤモヤ我慢編」などがあります(笑)。このセミナーは、当社従業員や外部企業の方々からも、もっと知りたいというご意見を多くいただきシリーズ化されたという経緯があります。

 

 

 

―――先ほど、健康アプリが必ずしも改善に直結しないというお話がありました。

 

鈴木:見える化したものを次につなげていきたいというところですよね。ヘルスケアアプリなどを通して一人ひとりを記録・取集した情報から、しっかりと次の行動にまで連動をさせていきたいですから、取り入れやすいものから運動しましょうという具体的な声かけやどんな運動が良いか迷っている方には「スマートAction」に誘導する、という取り組みを始めたところです。

実はいくつかの企業様からも、施策をいろいろやってはいるけれど効果が単発になってしまっているという声を聞きます。「スマートAction」は、そういった複数の施策に相乗効果を引き出すことができますし、一般企業様の体力測定やウォーキング施策とも連携・連動が可能ですから、今後は社内外に活用していきたいと考えています。

 

 

健康経営のこれからの課題 ヘルスリテラシーとワークエンゲージメントのさらなる向上

 

 

―――健康経営への取り組みに対して、従業員の皆さんの反応や変化などはいかがですか。

 

野尻:年間を通じていくつものイベントや施策を実施するので、チームで取り組むことが多くなります。そのため社内コミュニケーションや業務に対するモチベーションは確実に向上したと思いますね。  もうひとつ、当社には管理栄養士など保健専門職が多くいますので、自分の知識やスキルを健康経営に活かしたいという声もよく聞きます。そういったメンバーの力も活かして、健康経営のレベルをさらに高めていければと思います。

 

鈴木:皆さんやはり運動に関することは詳しいんです。でも、病気のことや女性の健康のことは知らなかったというたことがたくさんあって、そこに気付けたのが良かったという声もあります。

 

―――大きく数値に現れたことなどはありますか。

 

野尻:社長がCHO(Chief Happiness officer)として健康経営のメッセージを従業員に向けて発信しており、その中に、「健康診断で良い結果を出そう!健康診断の事後措置を高めよう!」という声がけがあります。その効果として健康診断後の再検査受診率は年々アップしていますし、ワークエンゲージメントの指標も向上しています。

 

―――御社のサイトを見ると健康診断の受診結果が、ここ3年100%ですね。

 

日野:これはもうチームの頑張りでしょうね。「健康のプロフェッショナル」として受診しないのは許しませんよと(笑)。サイト上では3年ですが、もう何年も100%です。 従業員全員が受診は当たり前という意識があるんです。

 

鈴木: ただ、健康診断は受診することが目的ではなく、その結果をどのように個々人の健康行動に活かすかがとても大切ですので、健康診断の通知をする際に「スマートAction」にある健康診断関連の動画を見ていただくようにも勧めています。

 

 

―――最後に、これから重点的に取り組んでいかれたいことをお聞かせください。

 

野尻:現在、当社の健康経営の課題としては二つありまして、ヘルスリテラシーとワークエンゲージメントの向上です。当社には健康のプロフェッショナルを自認するメンバーも多くいますが、中には健康診断の結果が伴っていないなど有所見率に課題があると捉えています。健康のプロフェッショナルとして”お客様に健康を提供するスキルがあり、ご自身の健康にも問題がない“そんな理想の姿をヘルスリテラシーの向上によって実現していきたいと考えています。

ルネサンスにはお客様に対しても従業員同士でも、ホスピタリティマインドが企業風土として根付いています。仕事では切磋琢磨しながらもお互いを思い合う、そんな働きやすい職場環境が現状でも整っていますが、今後はさらにワークエンゲージメントの高い組織にしていくことを目指しています。

 

鈴木:私どもは全国のスポーツクラブを拠点に自治体や職域など、さまざまな事業を展開しており、それぞれの職場で皆さん頑張っています。なかでもスポーツクラブや介護リハビリ施設などの現場に勤務する皆さんは、常にお客様の前では笑顔を見せ、高齢者の安心・安全のための細やかな気遣いをしながら過ごしています。また、シフト勤務のために生活のリズムを整える苦労もあります。こうしたお客様の生きがいを育んでいる従業員の健康を見守る私たちとしては、「スマートAction」を含めたさまざまなサービスをフル活用して、健康のプロフェッショナルとしてのヘルスリテラシーがさらに高まるようにサポートしていきたいと思います。

 

記事内でご紹介しているコンテンツの内容や実績数は、2025年5月時点の確認に基づいた情報です。

 

 

<プロフィール>

株式会社ルネサンス https://www.s-renaissance.co.jp/

執行役員 人事部 部長 日野 俊介

人事部 人事労政チーム 主任 野尻 真帆

健康ソリューション部 カスタマーサクセスチーム 専任課長 鈴木 陽子

 

 

 

 

関連記事

人気記事ランキング

この記事をシェアする

お役立ち記事

運営者情報