ウェルビーイングのリーディングカンパニーに聞く空気環境対策

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近年、企業経営においてウェルビーイングが注目されています。企業にとってのウェルビーイングとは、社員一人ひとりが心身ともに満たされた状態のことで、それによって成長につなげていこうとする企業も増えてきました。さらに、新型コロナウイルス感染症拡大により働く環境が変化したことで、その流れは加速しています。

 

今回は、株式会社エポスカード取締役社長の斎藤義則さん、同社常務取締役の大倉伸夫さん、同社顧客部カスタマーセンター所長の平野真奈美さん、株式会社丸井グループ取締役執行役員CWOでウェルネス推進部長の小島玲子さんに、ウェルビーイングと空気環境対策の取り組み内容についてお話を伺いました。

 

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若い世代はウェルビーイングを重視している

 

――最近、ウェルビーイングが注目されてきていますが、ウェルビーイングが何を指すのかわからない人も多いと思います。まずは、ウェルビーイングについて教えていただけますか。

 

(株式会社丸井グループ取締役執行役員CWOウェルネス推進部長の小島玲子さん)

 

小島:エポスカードの親会社である丸井グループで、ウェルビーイングの推進に取り組んでいる私から説明させていただきます。ウェルビーイングは肉体的、精神的、社会的にすべてが満たされた状態のことで、世界保健機関(WHO)が定めた「健康」の定義にも使われている言葉です。

私は産業医として、本来の意味での健康をサポートしたいという思いから、ウェルビーイングを研究してきました。丸井グループでは、ウェルビーイングに注目して、さまざまな施策を実施しています。

 

――なぜ今、ウェルビーイングが注目されているのでしょうか?

 

小島:世の中の考え方が変わってきたからです。昭和の時代は、「疾病予防」や「公衆衛生」が健康対策の主眼でした。平成になると「働き方」が問われるようになり、令和の現在は人生100年時代といわれ、「幸せ」や「心のありよう」がより重視されるようになっています。

 

――世の中の考え方が変わったことで、それに合わせていこうという企業が増えてきているのですね。

 

小島:そうですね。というのも、ウェルビーイングを特に重視しているのは若い世代といわれています。就職活動を行っている学生に対する経済産業省による最近の調査でも、会社選びで重視するポイントが昔とは違うことが明らかになっています。

昔は、給与や雇用の安定などが会社選びのポイントでした。しかし、今は働きがいや働きやすさを重視するようになっています。2024年にはZ世代、ミレニアル世代の生産年齢人口に占める割合が5割を超えます。企業としても、若い世代の常識に対応できないと、人材の確保のみならず、世の中に価値を提供することが難しくなるでしょう。

 

――ウェルビーイングを重視する必要があるものの、それがうまくいっていない企業はどのような点がボトルネックになっているのでしょうか?

 

小島:ボトルネックのひとつとしては、日本の大企業の一般的な制度が挙げられます。例えば、働きがいや働きやすさをうたっていても、新卒一括採用や年功序列の社会通念、制度が旧来のままだったらどうでしょうか。これからの時代、そういった社会通念や制度を開かれたものに変えていかなければ、ウェルビーイング推進のボトルネックになってしまうように思います。

 

(株式会社エポスカード取締役社長の斎藤義則さん)

 

斎藤:ウェルビーイングの取り組みで、結果を出せている国内企業はまだ多くありません。昔ながらの経営手法や人材の硬直化など、ウェルビーイングを推進する上でクリアしないといけない課題はたくさんあります。

コロナ禍に後押しされ、本格的な空気環境対策に着手

 

――では、ウェルビーイングの取り組みとして、どのようなことを行っているのか教えてください。

 

大倉:丸井グループでは、国内でも先進的なウェルビーイングの取り組みを行っています。その一方で、エポスカードは最近までウェルビーイングの取り組みを進められていませんでした。

 

――グループ内でも取り組み状況に差があったのですね。

 

大倉:エポスカードがウェルビーイングに取り組んだきっかけは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるものでした。中でも力を入れたのが、空気環境対策です。

弊社はクレジットカード事業を行っており、お客様対応のためのカスタマーセンターがあります。カスタマーセンターでは、コロナ禍以前はワンフロアで130人、ビル全体では700人以上の社員が「密」な状態で勤務していました。さらに、セキュリティ対策のために扉を締め切った状態だったのです。この点が大きな問題となりました。

 

――確かに、カスタマーセンターの業務はお客様と会話をすることですし、何らかの対策が必要だということは想像できます。

 

大倉:2020年4月、5月は、出勤する社員数を6割まで減らすといった対応も行いました。ただ、カスタマーセンターの社員は、生活に必要不可欠な業務を行っているエッセンシャルワーカーであり、お客様のことを考えると完全に業務を止めることはできません。そのような状況のため、感染症対策が必要だったのです。

 

平野:私自身、カスタマーセンターで勤務していますので、当時のカスタマーセンターで起こったさまざまな問題に対処してきました。出勤者を抑制したことでお客様からの電話に対応できない件数も増えましたし、不安を感じて出勤を控える社員もいました。

カスタマーセンターの社員の多くは、家庭を持つパートタイマーです。ウイルスを持ち帰って家族に感染させたくないという思いが、強かったのだと思います。

 

――当時はまだ新型コロナウイルス感染症の情報も不足していました。感染に対する不安が大きかったのは当然のことだと思いますが、それに対してどのような取り組みを行ったのでしょうか?

 

平野:もちろん、パーテーションを立てたり、空気清浄機やサーキュレーターを設置したりといった対策は早くから実施していました。しかし、やはり目に見えない空気に対する不安はぬぐいきれませんでした。

 

大倉:そうした状況下で紫外線照射装置であるエアロシールドの存在を知り、導入を決めたのです。当時は、エッセンシャルワーカーへの新型コロナウイルス感染症対策に投資していこうという方針がありました。また、社員のストレスを軽減できるのであれば、エンゲージメントも高まり、経営にも良い影響が出るだろうとも考えていました。

 

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エアロシールドを設置したことで安心感が生まれ業務にも好影響

 

――エアロシールドの導入について、現場の反応はいかがでしたか?

 

平野:社員はみんな、感動していました。これまでの空気環境対策に加えて、エアロシールドの存在は非常に心強いものだったようです。

エアロシールド設置後にアンケートを行ったのですが、回答者の6割はエアロシールドの効果が出ていると答えており、「インフルエンザにも効果がありそう」「部屋に入ると空気がきれいになっている気がする」といった回答もありました。

 

(株式会社エポスカード常務取締役の大倉伸夫さん)

 

大倉:コロナ禍以前から、インフルエンザが流行しないようにサーキュレーターを回したり、エアコンにファンを取りつけたりしていました。ただ、今になって考えてみると、それらは対症療法だったと思います。やはり、空気環境対策が加速したのは、新型コロナウイルス感染症拡大がきっかけだったことは間違いありません。

 

――空気環境対策の効果について、実感していることはありますか?

 

大倉:目に見える効果があるわけではないので、空気環境対策の効果はなかなか実感しにくいものです。しかし、エアロシールドを含めた空気環境対策を行うことで安心感が生まれ、それが業務に良い影響を与えてくれていると思います。

 

平野:そうですね。不安を感じて出勤を控えていた社員も出勤してくれるようになりました。また、会社がしっかり空気環境対策をしてくれているので、自分自身もより気をつけようという意識の変化も生まれたように感じます。

 

大倉:エアロシールドだけの効果というわけではないかもしれませんが、ひとつ確かなことがあります。それは、カスタマーセンターという感染症対策の観点で課題の多い環境にもかかわらず、現在に至るまでクラスターが発生していないということです。正確に効果検証できないのですが、エアロシールドの効果が出ているのではないかと考えています。

 

平野:私自身、毎年悩まされている季節型の喘息が今年は出ませんでした。空気環境対策を行った効果なのではないかと思っています。

 

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ウェルビーイングの目的は、関わる人すべてがハッピーになること

 

――今後は、空気環境対策を含めたウェルビーイングの取り組みとして、どのようなことを行っていく予定でしょうか?

 

大倉:働く環境を改善する取り組みとして、カスタマーセンターのビルを改装するプロジェクトが進行しています。働く環境が良くなれば、働く意欲や生産性が高まることも期待できます。これも、ウェルビーイング推進のひとつの取り組みです。それによって、会社と社員の関係もより良好になるのではないかと思っています。さらに、働く環境を整えることができれば、採用にも良い影響が出るのではないかと期待しています。

 

(株式会社エポスカード顧客部カスタマーセンター所長の平野真奈美さん)

 

平野:エアロシールドを含めた空気環境対策を行ったことで、あらためて社員を大切にしてくれる会社なんだなと強く感じました。安全かつ健康に働けるということは、とてもうれしいことですね。

 

大倉:ただ、ウェルビーイングについては、まだまだ道半ばだと思っています。空気環境対策にしても、コロナ禍に背中を押されてスタートしたようなものですし、衛生や疾病予防というレベルにとどまっています。そこからさらに働き方の改善だけでなく、社員の感性、心のありようといった部分への働きかけについても、継続して取り組まなければなりません。

 

――ウェルビーイングの取り組みによって、企業経営にも良い影響が出てくることも期待したいですね。

 

斎藤:そうですね。社員が健康で楽しく働けるという定性的なメリットも大切ですが、ウェルビーイングの取り組みがどれだけ企業価値を高めてくれるのかも重要です。ウェルビーイングの取り組みに多額の投資をして、社員にも企業にもプラスの効果が出ればいいのですが、そうならないケースも考えられます。それでは、全員がハッピーになったとはいえません。ウェルビーイングの目的は、社員だけでなく企業やお客様など、関わる人すべてがハッピーになることなのです。

 

大倉:ウェルビーイングの取り組みは、簡単ではありません。その理由としては、ウェルビーイングの解釈が日本では定まっていないことも挙げられます。

それぞれがウェルビーイングに対して異なる見解を持っていては、なかなか取り組みは前に進みません。ただ、その異なる見解の中にも共通項があるはずです。そこをしっかりと見定めて、共有していく必要があるのだと思います。

 

 

<プロフィール>

斎藤義則

株式会社エポスカード 取締役社長/株式会社丸井グループ 常務執行役員

 

大倉伸夫

株式会社エポスカード 常務取締役

 

平野真奈美

株式会社エポスカード 顧客部カスタマーセンター 所長

 

小島玲子

株式会社丸井グループ 取締役執行役員CWO・ウェルネス推進部長、専属産業医

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