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インフルエンザをはじめ、新型コロナウイルスなど、私たちの身の回りには、驚くほど多くの感染症が存在しています。これらを予防するためには、まず感染症について知っておくことが大切です。
ここでは、感染症が起こる仕組みや原因のほか、感染経路と予防法について詳しくご紹介します。
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感染症は病原体が体内に入ることで引き起こされる
感染症とは、自然界や人を含む動物の体の表面に存在している病原性の微生物が、人や動物の体内に入って増殖し、さまざまな症状が現れた状態のことです。代表的な症状には、発熱や嘔吐、下痢、咳などが挙げられます。
人間の体内に入って症状を引き起こす微生物は「病原体」と呼ばれ、主なものに細菌、ウイルス、カビなどがあり、回虫やアニサキスといった寄生虫も含まれます。
感染症を引き起こす病原体
続いては、代表的な病原体である細菌、ウイルス、カビについて、それぞれの特徴や違いについてご紹介しましょう。
■細菌・ウイルス・カビの大きさの違い
細菌
細菌は、細胞核を持たない「原核生物」です。大きさは人の細胞の10分の1程で、1mmの1,000分の1にあたる1μm(マイクロメートル)前後となっており、栄養と水がある環境なら、自分自身で増殖が可能です。
細菌が人間の体の中に侵入し、増殖して細胞の中に入り込むと、毒素を吐き出して細胞にダメージを与えます。その結果、発熱や痛みといった症状が現れるのです。細菌感染症の治療には、抗生物質や合成抗菌薬が使用されます。
ウイルス
ウイルスは、細菌のように細胞膜や細胞壁を持たず、たんぱく質の外殻の内部に遺伝情報を持っただけの単純な構造をしています。大きさは細菌よりはるかに小さく、1μmの1,000分の1を表す単位nm(ナノメートル)で表されます。例えば、ノロウイルスの大きさは、直径約38nmです。
ウイルスは細菌と違い、栄養と水がある環境でも単独では増殖できません。生物の細胞内に入り、宿主となることでのみ増殖します。ウイルスが細胞の中で大量に増殖すると、細胞の持っている機能が損なわれる、免疫が過剰に活性化して自身の臓器を傷つけてしまう、細胞が死滅してしまうといったことが起こり、さまざまな症状が引き起こされます。
ウイルス感染症の治療薬としては、ウイルスの増殖を防ぐよう直接作用するものと、免疫機能を調整するものがあります。ただし、完全な治療薬がない、または開発段階のウイルスも多くあるのが現状です。
カビ
カビは、細胞壁に細胞膜、細胞核を持つ、「真菌類」と呼ばれる原生生物です。大きさは人の細胞よりやや小さく、細菌より大きめの1~10μm程度です。
カビは、糸のような菌糸と胞子を持っており、水や栄養がある場所に置かれると、胞子を飛ばすことで増殖します。人間に感染するカビは少ないですが、免疫機能が低下していると重篤な症状になる場合もあります。その治療には、抗真菌薬が使われます。
■病原体の特徴
細菌 | ウイルス | カビ | |
構造 | 細胞核を持たない原核生物 | たんぱく質の外殻の内部に遺伝情報を持った微生物 | 細胞壁に細胞膜、細胞核を持つ真菌類 |
大きさ | 1μm前後 | 10~100nm程度 | 1~10μm程度 |
感染方法 | 体内に侵入・定着して細胞に入り込み、毒素を出して細胞にダメージを与える | 生物の体内で増殖して、細胞の機能を阻害し、免疫の過剰活性化を招く | 人の細胞に定着し、菌糸が成長することで発育する |
主な病原体 | ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌など | ノロウイルス、インフルエンザウイルス、HIVなど | 白癬菌、カンジダ、アスペルギルスなど |
主な感染症 | 感染性胃腸炎、腸管出血性大腸菌(O157)感染症、結核、破傷風、中耳炎など | 感染性胃腸炎、インフルエンザ、エイズ(AIDS)、新型コロナウイルス感染症、かぜ症候群、麻疹、風疹、水痘、肝炎(A型、B型、C型など)、帯状疱疹など | 白癬(水虫)、カンジダ症、アスペルギルス症など |
治療法 | 抗生物質、合成抗菌薬 | 一部のウイルス感染症には有効な抗ウイルス剤がある | 抗真菌薬 |
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感染症の感染経路
病原体が体内に侵入し、感染症にかかる経路としては、主に次の3つがあります。
空気感染
空気感染は、感染者の咳やくしゃみによってウイルスや細菌が空気中に飛び出し、水分が蒸発して飛沫核となって漂っていたものを吸い込むことで感染することです。
接触感染
接触感染は、感染者との皮膚や粘膜の直接的な接触や、ウイルスや細菌がついた物をさわった手で口や鼻をさわることで感染することを指します。
飛沫感染
飛沫感染は、感染者の咳やくしゃみによって飛び散ったウイルスや、細菌を含んだ飛沫を吸い込むことで感染することです。
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感染症を発症してしまう理由とは?
人の体は、「皮膚や粘膜など、病原体の体内への侵入を許さない自然障壁」と「体内に侵入した病原体を倒す免疫システム」という、2段構えの感染症に対する防御機能を持っています。そのため、病原体にふれたり、病原体が体内に侵入したりしても、すぐに感染症を発症するとは限りません。
しかし、病気やケガ、疲れなどで体力が落ちていたり、睡眠不足、ストレス過多、栄養不足などが続いていたりすると、自然障壁や免疫システムの防御機能が弱まってしまいます。そのような状態では、うまく病原体の侵入や増殖を抑えられなくなり、感染症を発症しやすくなってしまうのです。
感染症を発症しないようにするための対策
感染症の発症を防ぐのに有効なのは、病原体を体内に入れないことと、体の防御機能を高めておくことです。具体的には、次のような対策が有効とされています。
病原体を体内に入れない
病原体を体内に入れないためには、マスクの着用や手洗いの徹底、フィジカル・ディスタンス(ソーシャルディスタンス)をとる、換気をするといった、基本的な感染症対策が有効です。
マスクを正しくつけることで、ウイルスの吸い込みを抑えるとともに、自分からのウイルスの拡散も防ぐことが可能です。50cmの距離に近づいた場合でも、自分と相手の双方がマスクを着用することで、ウイルスの吸い込みは7割以上抑えられるという研究結果もあります。手洗いは、接触感染の予防に効果的で、石鹸やハンドソープで10秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐと、手や指についたウイルスの数は1万分の1に減らせることがわかっています。
また、咳やくしゃみで飛沫が飛び散る範囲は、通常1~2m以内なので、人と1~2m以上の距離を空けるフィジカル・ディスタンスの実行は、飛沫感染の予防に役立ちます。
ほかにも、空気環境を良好に保つことも重要です。空気の動かない密閉空間では、細菌やウイルスが空気中に長時間漂いやすくなり、感染リスクが上がってしまうのです。空気清浄機やこまめな換気を取り入れて、室内の空気をきれいに保つことが感染症予防につながります。
体の防御機能を高めておく
体の防御機能である免疫は、疲れや過剰なストレス、不眠、栄養不足、運動不足などで低下してしまうことがわかっています。
適度な休養や睡眠をとることやバランスのとれた食事、適度な運動をするほか、リラックスやよく笑うことなどを心掛けることが、感染症の発症しにくい体づくりにつながるでしょう。
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病原体を体内に入れないために環境を見直そう
感染症予防の基本は、原因となる病原菌を体内に入れないことと、感染症を発症しにくい体を作ることです。また、病原菌を体内に入れないためには、マスクや手洗いといった予防対策と、換気などで部屋の空気をきれいにしておくことも重要です。
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