空気環境対策が当たり前になる未来を切りひらくエアロシールドの挑戦

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新型コロナウイルス感染症拡大により、空気環境対策に関心が集まるようになってきました。空気環境対策にもさまざまな方法がありますが、紫外線照射装置による浮遊菌・ウイルスの減少もそのひとつです。

エアロシールド株式会社が開発・販売する「エアロシールド」は、部屋の天井付近に紫外線ゾーンを形成して、室内の浮遊菌やウイルスなどを減少させる装置です。安全かつ効果が証明されている空気環境対策として、注目を集めています。

今回は、エアロシールド株式会社の木原寿彦さんに、エアロシールド開発の経緯と空気環境対策への思いのほか、今後の展望などについて伺いました。

 

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開発のきっかけは高齢者施設で起きる空気環境の問題に着目したこと

 

――空気環境対策のソリューションとしてエアロシールドが注目されてきていますが、エアロシールドはどのような装置なのでしょうか?

 

木原:エアロシールドは、部屋の天井付近に強力な紫外線ゾーンを形成することで、室内の浮遊菌や浮遊ウイルスなどを減少させ、空気環境を改善する紫外線照射装置です。紫外線は人体に有害なものですが、エアロシールドは特殊なルーバー(仕切り板)構造によって、紫外線を水平に照射できるようにしています。そのため、人が生活する空間に影響を及ぼすことなく使用できるのが特徴です。

 

――エアロシールドを開発にするに至った経緯を教えてください。

 

木原:祖父が入所していた高齢者施設で、空気環境について考えたことが開発のきっかけです。その施設では体調を崩して病気になる方も多く、私たちは施設の空気環境が一因ではないかと疑問を持ちました。そこで、施設の空気を採取して調査してみたところ、病気を引き起こす可能性のある浮遊菌が多く検出されたのです。空気環境を改善すれば命を救うこともできるのではないかと思いました。

 

――施設の空気環境を改善しようということで、エアロシールドを開発したのですね。高齢者施設や病院などは、しっかりと空気環境対策を行っているものだと思っていました。

 

木原:もちろん、施設としては対策しているのだと思います。ただ、空気環境対策といっても、空気清浄機を設置する程度で終わることが多いのが現状です。ほこりなどを除去する目的なら、それでもいいでしょう。しかし、空気中の細菌やウイルスを、空気清浄機で確実に除去できるわけではないですよね。

 

――空気環境対策を行っていると思っていても、実は効果的な対策ができていないところも多いのでしょうか?

 

木原:施設に限らず、空気環境を気にはしていても、対策しきれていない状態が多いですね。なんとなく空気はきれいなほうがいいと思っているものの、花粉やほこり、カビ、ウイルスなどを区別することなく、空気清浄機を置いておけばいいという対策になってしまっているのです。

「空気の変化」という目に見えない効果を伝えるのは大変だった

 

――そのような状況の中で、2008年にエアロシールドの販売を開始されていますが、エアロシールドは紫外線照射装置の先駆けだったのではないかと思います。その頃、世の中に受け入れてもらうのは大変だったのではないでしょうか?

 

木原:当初は本当に苦労しましたね。そもそも、エアロシールドは効果を実感しにくい製品です。エアコンのように温度変化を実感できるわけではないですし、音も出ません。設置したことさえ忘れる人もいます。振り返ってみて、「そういえば今年は感染症がはやらなかったね」と気づくこともあるかもしれませんが…。

 

――目に見えない空気の変化を感じるのは難しいですね。

 

木原:当時、私は25歳でした。有名な会社でもなく、そんな状態で飛び込み営業をしてもうまくいかないんですよ。なので、まずは自分自身のふるまいなどを考えるようにしました。「この人の話なら聞いてもいいかな」と思ってもらえないと、先に進めないからです。

 

――少なくとも、自分のことは信頼してもらえるようにしようということですね。

 

木原:また、営業をする際には、常に課題について話すことを心掛けました。ただ、「エアロシールドで空気環境対策ができます」と伝えるだけでは、「空気清浄機を置いているから大丈夫」と言われてしまうからです。

そこで、「なぜ空気清浄機を設置したのですか?」と聞くようにしました。ほこりなどを除去したいだけなら空気清浄機でも大丈夫ですが、空気中の細菌やウイルスを減少させるという意味では十分ではありません。しかし、エアロシールドなら対策ができ、そのエビデンスもありますといった伝え方をするようにしていました。

 

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エアロシールドを社会のインフラにしたい

 

――エアロシールドは、どのような施設で多く利用されているのでしょうか?

 

木原:これまでは、介護施設で多く利用されてきましたが、コロナ禍によりオフィス需要もかなり伸びてきています。主に、鉄道会社のような社会インフラを担う企業やラジオ局、コールセンターなど、リモートワークが難しい企業での利用が増えてきましたね。

 

――今後、エアロシールドが普及してほしい業界はありますか?

 

木原:たくさんありますが、特に医療施設、高齢者施設、食料品などの生活必需品を扱うお店のほか、幼稚園や学校など、リモートワークにできない施設ですね。エアロシールドを、そういった施設などを支えるインフラにしていく必要があると考えています。

 

――エアロシールドをインフラにしていくにあたって、何か課題は感じていますか?

 

木原:コロナ禍で、エアロシールドの注目度は上がったと感じています。また、国内では、私たちが紫外線照射装置のパイオニアということもあり、お問い合わせも増えてきています。しかし、それでも認知度はまだ高くありません。

空気環境対策を行おうと思っている方が、エアロシールドというソリューションまでたどり着けていないのです。そうなると、「空気清浄機を買っておけばいいか」となってしまいます。

 

――そのような課題については、どのように取り組んでいく予定ですか?

 

木原:まずは、認知度を高めることが重要だと思っています。これまでは、メディアをあまり活用してこなかったのですが、しっかりと知ってもらう活動をしていかなければなりません。一方で、地道に正しい知識を伝えていくことも重要だと考えています。

 

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空気環境対策についての正しい情報発信が必要

 

――コロナ禍で、エアロシールドと似たような製品も出てきているかと思います。その中で、認知度を高めるためには、違いを明らかにしていく必要もありそうですが、他社製品との違いはどこにあるのでしょうか?

 

木原:しっかりと管理を行って、安全を担保している点が私たちの強みだといえます。紫外線は有害なので、紫外線照射装置は人がいる環境であまり使われてきませんでした。そこで、人がいる空間でも安全に使えるよう、水平に照射する構造を開発したのです。

さらに、設置場所の高さのガイドラインを設定したり、メンテナンス時などに紫外線を測定して居室空間に影響がないかを確認したりしています。他社だと、紫外線照射装置を売って終わりという場合もありますが、私たちは設置や運用もお客様任せにせず、しっかり管理を行っています。

 

――消費者も、そういった点をしっかりと理解して選ぶ必要がありそうです。

 

木原:ただ、誰もが理解して選べるならいいのですが、多くの人はそこまで考えて購入していないのが現状です。消費者が空気環境対策について調べたときに、正しい情報があまり出てこないことも問題だと思います。そこは、私たちがしっかり情報発信をしないといけません。

 

――メーカーも消費者も、知識をアップデートしていく必要がありそうですね。

 

木原:変わらないと失うものが大きいということは、コロナ禍で痛感した人も多いのではないでしょうか。今回は新型のウイルスが流行しましたが、今後もこういった感染症の流行は起きうると考えています。しかし、病気になったら病院に行って薬をもらえばいいと考えがちです。そうではなく、日頃からそうならない環境を作っていくことが大切なのです。感染症の流行は経済にも大きな損失を与えます。コロナ禍でそれを実感しているのではないでしょうか。

 

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目に見えない大切なものに気づいてほしい

 

――コロナ禍をきっかけにして、空気環境対策について意識する人が増えるといいですね。

 

木原:コロナ禍が収束して、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということにならなければと思います。加えて、きれいな空気はただでは手に入らないことも理解してもらいたいですね。昔は、お金を出して水を買うなんてことは考えられませんでしたが、今ではコンビニなどで当たり前のように水を買っています。しかし、空気にお金を出すという発想はまだありません。

 

――確かにそうですね。田舎のきれいな空気はただかもしれませんが、都市部できれいな空気を手に入れるのは難しいかもしれません。では、消費者はどのようにして空気環境について意識を高めていけばいいのでしょうか。

 

木原:多くの人は、目に見えるもの、動くもの、体感できるものに興味を示します。一方で、空気のように目に見えないものには関心を持ちにくいものです。しかし、実は目に見えないものの中にこそ、本当に大切なものがあると感じています。そこにぜひ、気づいてほしいと思いますね。

 

――それは、空気に限ったことではなさそうですね。

 

木原:はい、空気だけでなく、気候変動や環境破壊もそうですよね。体感できないものは対岸の火事になりがちで、自分に関わることでないと行動は変わりません。

しかし、それでは手遅れになってしまうこともあるのです。自分には関係なさそうなことであっても、普段から自分のこととして捉えていただきたいですね。

 

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空気環境対策をインフラにするための新たなる挑戦

 

――2020年10月に社名変更、2021年3月に資本業務提携と、会社として大きな波を迎えられましたね。どういった背景があったのでしょうか。

 

木原:社名変更については、エアロシールドの製品開発と販売により注力し認知を得るという目的がありました。そこで、社名と製品名をシンプルに一本化したのです。

また、時勢的に空気環境への意識が高まりつつあり、エアロシールドも認知されて世の中に出ていく中で、自社の製品があるところとないところで空気環境に差が出るのはよくないと思うようにもなったのです。より一層、正しい情報を発信し社会のインフラにしていかねばならないと考え、株式会社富士通ゼネラルとの資本業務提携に至りました。

 

――資本業務提携もコロナ禍の影響がありましたか?

 

木原:空気環境対策をインフラにしたいという思いはもともとあったのですが、その目標に向かう中でコロナ禍となり、スピードを上げる必要があると強く感じました。国内に限らず多くの地域でインフラとなるには長期的に腰を据えて事業を進めていかねばなりません。

 

――心強いパートナーを得られましたが、今後どのような展開をしていかれるのでしょうか。

 

木原:空調メーカーとして歴史と実績のある富士通ゼネラルは、海外での設置工事や安全にご利用いただくための製品メンテナンスなどの体制も整っています。そこに、空気の質に取り組む私たちがパートナーとなることで、空気環境を向上させるための相乗効果を生んでいけると確信しています。

また、販売店様とも今後さらにコミュニケーションを深め、「空気環境対策が当たり前になる未来」を、共に切り開いていきたいと思います。

 

紫外線照射装置 エアロシールド

 

<プロフィール>

木原寿彦

セブン-イレブン・ジャパンを経て、シールドテック株式会社(現・エアロシールド株式会社)入社。創業以来、大分を拠点に全国展開における販路開拓、製品改良、新製品開発などに従事する。「空気環境対策を社会のインフラにすること」を目指し、第二創業期の事業経営を10年以上牽引。一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会の「STOP感染症2020戦略会議」では、マスギャザリングにおける空気除菌・清浄による感染症対策ワーキンググループを担当。

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