インフルエンザや風邪、そして新型コロナウイルス感染症といった病気の感染力は、どのくらいあるのでしょうか。感染力は、一人の感染者が何人に感染を広げるかで測ることができます。また、感染力がわかれば、どのくらいの人が免疫を獲得すれば感染症の流行を防ぐことができるかも、おおよそ算出できるのです。
ここでは、病原体の感染力のほか、インフルエンザと風邪や新型コロナウイルスの感染力、感染を防ぐための対策についても解説します。
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病原体の感染力と集団免疫とは?
インフルエンザをはじめとした感染症の感染力は、どのように測定するのでしょうか。まずは、感染力を示す指標となる「基本再生産数」と、感染症の拡大を抑えたい場合の指標である「集団免疫率」についてご説明します。
感染力の指標となる「基本再生産数」
感染力とは、感染症の原因となる病原体が、ほかの生物に対して感染を達成する力のことです。そして、感染症の感染力を示す指標のひとつに、基本再生産数(R0)があります。
基本再生産数とは、1人の感染者から生じうる2次感染者数、つまり「1人の感染者が何人に感染を広げる可能性があるか」を示す数字です。
基本再生産数が1であれば、1人の感染者が1人にうつす可能性があり、3であれば3人に移す可能性があるということです。
ですから、基本再生産数が1より小さいと感染症は収束していき、1の場合は突発的な流行は起きませんが、終息もしません。そして、基本再生産数が1よりも大きい場合、突発的な流行や感染拡大のおそれがあります。
免疫獲得者の割合を表す「集団免疫率」
集団免疫とは、インフルエンザウイルスなどの病原体に対して人口の一定割合以上の人が免疫を持ち、たとえ感染患者が出てもほかの人に感染しにくくなり、感染症が流行しなくなる状態のことをいいます。この集団免疫をいかに獲得するかが、感染拡大を食い止めるためのポイントです。
具体的には、予防接種などで集団内の免疫獲得者の割合を一定以上に高めれば、感染の拡大が防げるという考えが成り立ちます。
この集団免疫によって、感染症の流行を防ぐために必要な「免疫獲得者の割合」のことを、集団免疫率といいます。集団免疫率は、基本再生産数(R0)から算出可能です(集団免疫率(%)=(1-1/R0)×100)。
インフルエンザの基本再生産数は「0.9~2.1(平均値1.3)」です。平均値の1.3とした場合、集団免疫率は23%以上を達成すれば、理論上ではインフルエンザの感染拡大が防げることになります。ただし、基本再生産数は時代や社会、国の状況によって異なることに注意が必要です。インフルエンザの基本再生産数も、国によっては「2~3」とされ、その場合に必要な集団免疫率は50%以上になります。
ちなみに、麻疹(はしか)の基本再生産数は15前後と非常に高く、90%以上の集団免疫率がなければ流行は防げません。
インフルエンザ・風邪・新型コロナウイルス感染症の感染力
続いては、インフルエンザと風邪はどう違うのか、それぞれの概要と感染力について見ていきましょう。また、新型コロナウイルス感染症についても取り上げます。3つともすべて、飛沫感染・接触感染によって感染すると考えられています。
季節性インフルエンザ
季節性インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる感染症です。季節性インフルエンザのウイルスにはA型、B型、C型があります。中でも感染力が強いのはA型で、人にも動物にも感染し、毎年のように流行を繰り返します。B型は人にだけ感染し、比較的流行しやすい型です。C型は基本的に、1回の感染で免疫がつくため、免疫がまだない子供がかかるケースがほとんどです。
感染症としての感染力は強いほうで、基本再生産数は0.9~2.1(平均1.3)。初期症状は、急激な悪寒、38℃以上の突然の高熱のほか、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身の倦怠感、熱が上がった後の咳やくしゃみ・鼻水などが続きます。
風邪(普通感冒)
一般的に風邪と呼ばれる病気は普通感冒といい、ライノウイルス、アデノウイルスなど、約10種類(型で分類すると200~300種類)のさまざまなウイルスを原因とする感染症です。
コロナウイルスも風邪(普通感冒)の原因ともなるウイルスのひとつで、これまで6種類が知られていました。6種類のうち2種類は、MERS(中東呼吸器症候群)とSARS(重症急性呼吸器症候群)です。
感染力もウイルスによって変わり、基本再生産数が2~3とインフルエンザに匹敵する場合もあります。
厳密にはウイルスによって症状は変わりますが、一般的には鼻・喉の違和感・乾燥感から始まり、鼻水、鼻詰まり、喉の痛み、咳、くしゃみ、微熱~38℃くらいの発熱が症状として表れます。
新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症は、新型コロナウイルスによって引き起こされる病気です。病気の名称は、正式にはCOVID-19。ウイルスの正式名称はSARS-CoV-2です。
これまで知られていた6種類のコロナウイルスとは異なる、新たなコロナウイルスの感染症が2019年の終わり頃に発生しました。これが、新型コロナウイルス感染症です。新型コロナウイルスは急速に世界中に感染拡大し、2021年末の段階でも終息に至っていません。
感染力は強く、基本再生産数は初期のアルファ株で2~3と推定され、特に密閉・密集・密接という3密の空間による感染拡大が頻繁に確認されています。変異株の中には、基本再生産数が5~9というデルタ株など、さらに感染力が強いと思われるものも現れています。
■さまざまな感染症の基本再生産数と致死率
出典:アメリカ疾病対策センター(CDC)「Improving communications around vaccine breakthrough and vaccine effectiveness」
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インフルエンザはどうやってうつる?
インフルエンザは、下記の2つの感染経路によってうつります。基本的には風邪も新型コロナウイルス感染症も、病気がうつる仕組みは同じです。
飛沫感染
飛沫は、咳やくしゃみをしたときに、口や鼻から周囲に飛び散る小さな水滴です。インフルエンザに感染した人が咳・くしゃみをし、ウイルスを含んだ飛沫を健康な人が口や鼻から吸い込むと、飛沫感染が起こります。飛沫は、1~2m飛ぶといわれています。
なお、インフルエンザや風邪、新型コロナウイルス感染症は、空気感染はしないとされています。しかし、換気の悪い空間内では、飛沫や飛沫核(飛沫から水分が蒸発した状態のもの)が濃縮されて、空気中を比較的長時間漂うケースがあることもわかってきました。そうして漂ったウイルスによって感染することを、エアロゾル感染と呼びます。
接触感染
インフルエンザに感染した人が、自分の口や鼻をさわるなどしてウイルスが手に付着し、その手を健康な人がさわるなどしてウイルスが移動、口や鼻、目などから体内に入ると接触感染が起きます。
ほかにも、ドアノブや電気のスイッチといったものを介してウイルスが移動するケース、感染した人が作った食事を介してウイルスが体内に入ることもあります。
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感染を防ぐためには?
最後に、インフルエンザや風邪、新型コロナウイルス感染症を防ぐための対策を、8つご紹介します。どれか1つだけ行うのではなく、ひとつでも多くの対策を行うことで、感染を防ぐ可能性が高まります。
1 予防接種
インフルエンザにはインフルエンザワクチン、新型コロナウイルス感染症には新型コロナワクチンがあります。一般的にワクチンを接種すれば、ウイルスに感染したとしても発病の可能性を減らすことができ、重症化の予防にも役立ちます。
なお、風邪に対するワクチンはありません。風邪は「普通感冒」の総称で、何種類ものウイルスや細菌が引き起こす感染症を指します。そのため、現在のところ有効な治療薬がなく、治療にあたっては風邪症状を緩和する対症療法が中心となっています。
2 手洗い
自分の手にウイルスが付着している可能性があるため、外出先から帰ってきたときや、食事前、調理の前後などには、こまめに手洗いをしましょう。流水で手を濡らして石鹸をつけ、手の各部、手首まで丁寧に洗ってください。
3 消毒
手指を、70%以上の濃度の消毒用アルコール(消毒用エタノール)を使って消毒することも、ウイルスを除去する効果があります。手洗いができないときは、消毒用アルコールを両手にすり込むようにして消毒しましょう。
4 マスクの着用
インフルエンザや風邪にかかったときは必ずマスクを着用し、ほかの人にうつさないようにします。不織布マスクは飛沫の侵入を防ぐ効果が高く、飛沫感染をある程度防ぐことも期待できます。
5 免疫力を高める
体の免疫力を高めておくことで感染症にかかりにくくなり、かかったとしても治りが早くなることが期待できます。栄養バランスの良い食事と質の高い睡眠をとり、適度な運動をし、規則正しい生活を送ることを心掛けましょう。
6 湿度を保つ
インフルエンザウイルスに対しては、室内の湿度を50~60%に保つとウイルスの生存率を低くすることができる可能性があります。新型コロナウイルスに有効な湿度は不明ですが、乾燥しすぎるとウイルスが浮遊しやすいため、注意が必要です。
また、室内の湿度が高いとウイルスが湿気を帯びるため、長時間空中を浮遊することができなくなると考えられています。さらに、適度な湿気は喉や鼻の粘膜を潤し、線毛活動を活発にしてウイルスの侵入を防ぐことも期待できます。
7 人混みを避ける
風邪やインフルエンザが流行しているときは、人混みを避けるようにしましょう。新型コロナウイルス感染症対策として知られるようになった「3密を避ける」方法は、風邪やインフルエンザに対しても有効です。
8 換気を行う
換気の悪い密閉空間に人が多く集まると、感染の危険性が高くなると指摘されています。
換気設備による機械換気、設備が十分でない場合は、30分に1回程度の窓開けによる換気を行って、室内の空気を入れ換えましょう。最近は、十分な換気がなされているかを知るために、空気の状態をモニターすることができるサービスも利用されています。
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感染力が強いインフルエンザの予防をしよう
インフルエンザは感染力が強く、1人が感染して対策をしないと、大流行を引き起こすおそれがあります。予防接種をはじめ、手洗い、消毒、マスクの着用、人混みを避ける、換気など、新型コロナウイルス感染症を含めた、主な感染症の予防法には共通した部分が多いので、これらをしっかりと守るようにしましょう。
感染対策のひとつである換気について、室内で十分な換気ができているかどうかを確認するには、二酸化炭素濃度をモニターすることが有効です。
株式会社UPDATER(旧社名 みんな電力株式会社)のエアテック事業「みんなエアー」では、空気環境を可視化し、データの分析・通知・アフターサポートまでを行うクラウドサービス「MADO」を提供しています。「MADO」は、オフィスや店舗など室内の空気中に含まれる二酸化炭素やPM2.5、揮発性のガスといった物質を計測し、クラウドに送信。事業者のコンピューターやタブレットなどのデバイスに表示し、その空間の空気がどのような状態なのかを可視化できるため、換気やその他状況に応じた対策を行うことが可能です。
インフルエンザなどのウイルス対策に、ぜひご利用を検討してみてはいかがでしょうか。