PM2.5の飛散時期のピークはいつまで?予防対策を紹介

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毎年、春先になるとニュースなどで目や耳にする「PM2.5」。これは、直径2.5µm(1µm=1mmの1,000分の1)以下の微小粒子状物質のことを指します。小さいので肺の奥にまで入り込みやすく、人体に入ると呼吸器系や循環器系の組織に悪影響を及ぼすとされています。

実際に、2021年10月には世界保健機関(WHO)が出した気候変動と健康に関する報告書で、PM2.5を含む大気汚染が原因で早死にする人は、世界で毎年700万人に上ると推定されているのです。

ここでは、PM2.5が発生する原因と人体への影響、飛散時期のピークはいつまでなのか、また大気中のPM2.5濃度を抑えるための対策について解説します。

 

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PM2.5が発生するメカニズムは2種類

 

PM2.5の発生過程は、物の燃焼などによって直接大気中にPM2.5が排出される「一次生成」と、環境大気中での化学反応により生成される「二次生成」という、2つがあります。

 

一次生成粒子の発生源としては主に、ばい煙を発生させるボイラーや焼却炉、自動車、船舶、航空機、火山の噴煙、黄砂、海塩のほか、家庭内での喫煙や調理などが挙げられます。二次生成は、火力発電所や工場、自動車、船舶、航空機などで燃料が燃焼することによって生じる硫黄酸化物や窒素酸化物のほか、塗料や石油から蒸発する揮発性有機化合物、森林から排出される揮発性有機化合物などが、大気中で光やオゾンと反応することによって起こるものです。

PM2.5によって起こるさまざまな影響

 

大気中のPM2.5濃度が上がると、どのような影響があるのでしょうか。人体や社会に起こる影響には、主に下記のようなものがあります。

 

 

人体への影響

 

PM2.5は、直径が髪の毛の太さの約30分の1と非常に小さく、肺の奥まで入り込んでしまうため、呼吸器系や循環器系に悪影響を与える可能性があります。明確な因果関係はまだ解明されていませんが、大気中のPM2.5濃度が増すと、喘息や気管支炎などの呼吸器系疾患や循環器系疾患のリスクが増すと考えられているのです。

大気中のPM2.5濃度の上昇によって、喘息や慢性閉塞性肺疾患などの患者に、咳や喘息、呼吸器系症状の悪化が起こったとする研究報告もあります。

 

 

環境への影響

 

大気中のPM2.5濃度が非常に高いと、空に霞がかかったような状態になり、太陽の光が十分地上まで届かなくなります。そのため、日照時間の減少により作物の育ちが悪くなるという影響も考えられるのです。

 

 

経済への影響

 

PM2.5を含む大気汚染は人体に悪影響を与えるだけでなく、人の寿命を縮め、環境にも悪影響を及ぼします。

スイスの調査会社による統計データでは、大気汚染の影響を金銭に換算すると、世界経済の損失は2020年時点で年間2.9兆ドル(約320兆円)に上るともいわれているのです。

 

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PM2.5はいつまで飛散する?

 

大気中のPM2.5濃度は、季節によって違いがあります。年間を通してPM2.5の発生がなくなることはありませんが、日本では毎年3~5月に最も上昇する傾向があります。

 

この時期にPM2.5の濃度が上がりやすいのは、大気汚染が深刻な中国から日本に向かって西風が吹きやすい季節だからです。中国では、急速な経済発展に伴い大気汚染が深刻化し、2013年には首都北京が深刻なPM2.5による大気汚染に見舞われました。そのため、2014年からは日本の環境省が日中都市間連携協力事業を実施し、大気汚染対策を進めてきました。2019年時点で中国の大気中のPM2.5濃度は2013年比で35%減、SO2(二酸化硫黄)濃度は57%減少しています。

 

しかし、今も気候などによっては、日本が「健康保護・生活環境の保全を図る上で望ましい」とする環境基準を上回るPM2.5が発生することもあり、偏西風にのってその影響は日本にも及んでいるのです。

 

 

日本におけるPM2.5の基準

 

日本では、2009年9月に環境省より健康保護を図るために維持されることが望ましい大気中のPM2.5濃度は、「1年平均値15μg/㎡以下かつ1日平均値35μg/㎡以下」と定義されました。

また、大気中のPM2.5濃度がこの水準に達すると健康影響が生じる可能性が高くなるラインとして、「1日平均値70μg/㎡」と定めており、これを超えた場合は、地方自治体が住民に対して注意喚起を行う仕組みになっているのです。

 

ただ実際は、PM2.5濃度がこのラインを超え、自治体から注意喚起がなされた例は、近年ではあまりありません。中間期実施件数は2013年度には37件ありましたが、2016年度には1件にまで減少しています。

 

 

PM2.5が高濃度になる要因とは?

 

日本で大気中のPM2.5濃度が高くなる要因としては、下記のようなものがあると考えられています。

 

 

自動車からの排気

 

自動車は、走行中に燃料を燃やすことで発生するPM2.5を排出するものです。そのため、狭い空間に多くの自動車が集まる都市は、地方に比べて大気中のPM2.5濃度が高い傾向があります。なお、技術の進歩によってPM2.5の排出が少ない車が開発され、自動車排出ガスの規制が進んだ結果、現在では、自動車の排気による影響は小さくなっています。

 

 

気象の影響

 

PM2.5の濃度は、気象によっても変動します。例えば、秋・冬に放射冷却現象により冷たい空気の上に暖かい空気がのった状態になると、大気が安定化して汚染物質が拡散しにくくなるので、PM2.5濃度は上昇する傾向があります。一方、梅雨の時期は、光化学反応で生じたPM2.5が蓄積しにくいので、PM2.5濃度は下がるのです。

 

 

風向きの影響

 

工業地帯や都市部で発生したPM2.5が風向きの関係で1ヵ所に蓄積し、一時的に高濃度を示す場合もあります。例えば、2012年7月に、本州を取り巻く高気圧と低気圧が長く同じ場所に停滞した結果、本州付近が弱風状態となり、国内のPM2.5が蓄積され、滋賀県のPM2.5濃度が上昇したケースがあります。

 

 

越境大気汚染の影響

 

越境大気汚染とは、大気汚染物質が遠く離れた発生源から気流にのって運ばれてくることです。春先は、西から東へと吹く偏西風にのって、ユーラシア大陸から黄砂やPM2.5が運ばれてくるため、PM2.5濃度が上がる傾向があります。

 

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PM2.5を低減させるためにできる対策

 

PM2.5の多くは人間の活動によって発生しているため、空気中のPM2.5濃度を下げるための対策は、一人ひとりができる限りPM2.5を出さないことに尽きます。このため政府は、各地のPM2.5濃度のデータ収集や排出規制の制定、税金面での優遇などの方法によるクリーンエネルギー自動車への乗り換えを後押しするといった政策が進められています。一方、民間や個人のレベルでできることとしては、下記のようなものが挙げられます。

 

 

工場や事業所でできること

 

工場や事業所のPM2.5対策は、主に大気中で光やオゾンと反応することによってPM2.5を生成するVOC(揮発性有機化合物)を減らすことと、低公害のエネルギーへ乗り換えることの2点です。

 

・VOCの排出削減

VOCは、塗料や印刷インキ、接着剤、ガソリン、化学品などから排出されます。設備に蓋をして無駄な塗料やインキの蒸発を防ぐ、作成工程を見直して塗料や接着剤の使用料を減らすといった行動も、排出削減効果があります。

 

・低公害エネルギーの使用

化石燃料を使わないクリーンなエネルギーの利用や省エネは、間接的に発電で生まれるPM2.5の削減に役立ちます。

 

 

家庭でできること

 

個人でも、PM2.5の排出量を減らすためにできることはたくさんあります。

 

・野焼きをしない

野焼きは、燃やすものによっては有害物質が発生するため、法律や条例で禁止されています。

 

・エコ・ドライブや省エネを心掛ける

「不必要なアイドリングをしない」「急発進や急加速をしない」といったエコ・ドライブは、自動車の排気ガスを減らし、排出されるPM2.5を減らすことにつながります。また、省エネを心掛けることで、間接的にPM2.5の排出を減らすことも可能です。

 

・禁煙

たばこも、PM2.5の発生源のひとつです。禁煙は、自身の健康増進にもつながります。

 

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PM2.5対策に、まずは身近な空気環境の見直しを考えてみよう

 

人体や環境、経済に大きな影響を与えるPM2.5を減らすには、国の取り組みももちろんですが、工場や事業所、家庭内での個人の行動も大きな意味を持ちます。

 

株式会社UPDATER(旧社名 みんな電力株式会社)のエアテック事業「みんなエアー」では、空気環境を可視化し、データの分析・通知・アフターサポートまでを行うクラウドサービス「MADO」を提供しています。「MADO」は、オフィスや店舗の空気中に含まれる二酸化炭素やPM2.5、揮発性のガスといった物質を計測し、クラウドに送信。事業者のコンピューターやタブレットなどのデバイスに表示し、その空間の空気がどのような状態なのかを可視化できるため、換気やその他状況に応じた対策を行うことが可能です。

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