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厚生労働省が2023年に公表した労働安全衛生調査によると、2022年11月からの1年間で、メンタルヘルス不調により1か月以上の休業または退職した労働者がいた事業所の割合は13.3%です。年々増加傾向にあり、企業による労働者のこころの健康管理が急務となっています。
ストレスチェック制度の義務化の要件やチェック項目、実施時における注意点を解説します。
ストレスチェック制度とは
ストレスチェックとは、ストレスに関する複数の質問に選択回答することで、労働者のストレスがどのような状態かを調べられる簡単な定期検査のことです。2015年の労働安全衛生法改正により、労働者数50人以上の事業所ではストレスチェックの実施が義務化されています。本人に気付きを促すとともに、メンタルヘルス不調のリスク低減やデータの集団分析による職場環境の改善が目的です。
ストレスチェックの実施が義務化された背景として、精神障害を原因とした労災認定件数の増加があげられます。2023年に報告された厚生労働省の調査によれば、仕事における強い不安や悩み、ストレスをかかえる労働者は82.2%と、前年の53.3%を大きく上回って増加しているそうです。自社の従業員のこころの健康が損なわれれば、集中力や判断力の欠如による生産性の低下、さらには休職・退職者の増加にもつながります。そのため、従業員一人ひとりのこころの健康をサポートするメンタルヘルスケア対策は企業の大きな課題といえるでしょう。
参考:令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況|厚生労働省
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ストレスチェック義務化の要件
ストレスチェックは「正社員、アルバイトを含め、常時50人以上の労働者を使用する事業場」に実施義務が課されています。ここでいう50人とは、法人全体の従業員数ではなく、本社や支店ごとの人数である点に注意しましょう。年に一度、全ての労働者に対してストレスチェックを行います。ただし、契約期間が1年に満たない労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間労働者は義務の対象外です。 また、派遣社員は派遣元企業が義務を負います。
ストレスチェックを導入するメリット
ストレスチェック制度を導入すると以下の効果が期待できます。
- メンタルヘルス不調者の発生を未然に防げる
- 企業全体の生産性を高められる
- 退職・休職者が減り、採用・教育コストを削減できる
- 過重労働による訴訟などの労使トラブルを防ぎ、リスク回避できる
- 健康経営を実現し、企業価値が向上する
ストレスチェックを実施し、従業員のこころの健康を保持・推進することで退職者を減らし生産性向上が期待できます。さらに、ストレスチェックの結果を集団分析すると、職場改善に効率的に取り組めるため、健康経営を加速させられるでしょう。
実施には多少なりともコストがかかりますが、費用対効果を算出し、必要に応じて実施検討してみることをおすすめします。
ストレスチェック制度の実施手順
ストレスチェック制度を導入・実施する際の手順は以下のとおりです。
- 実施方法などの社内ルールを策定
- 質問票の作成
- 質問票の配布~記入~回収
- ストレス状況の評価、医師の面接指導の要否を判定
- 結果を本人へ通知
- 結果の保存、労働基準監督署への報告
結果を受けて、労働者自身が適度な休暇の取得やリフレッシュを試みたり、上司・同僚などの身近な人や専門窓口へ相談したりといったセルフケアを行えるよう促しましょう。
ストレスチェックの結果の記録・保存については、受検者本人の同意を受けて事業者に提供されている場合、事業者が5年間保存するよう義務付けられています。本人が同意せず実施者が保有している場合、実施者による5年間の保存が望ましいとされており、事業者は保存が適切に行われるよう必要な措置を講じなければなりません。
ストレスチェックの実施体制
ストレスチェックは実施者と実施事務従事者が行います。実施者とは雇用主である事業者ではなく、医師や保健師などです。調査票のデータ入力や結果の出力・保存など、ストレスチェック実施の事務に携わる者を実施事務従事者といい、産業保健スタッフや事務職員などが担います。なお、ストレスチェック結果により労働者が不当な扱いを受けないよう、労働者の人事に直接の権限をもつ者は事務に従事できません。
高ストレスの労働者に対する面接指導の実施
ストレスチェックの結果、自覚症状が高い者をはじめ一定の条件下にある労働者は高ストレス者と判断されます。結果の通知から1か月以内に対象者から申し出があった場合は医師に依頼し、申し出から1か月以内に面接指導を行います。面接指導の後、事業者は医師から就業上の措置に関する意見を聴き、必要に応じて就業制限や休業の措置をとります。
なお、面接指導の結果は事業所で5年間保存することが定められているため注意しましょう。
データの集団分析による職場環境の改善
ストレスチェックの結果を部署やチーム単位で集計・分析することで、ストレス値の高い労働者が多い職場が明らかになります。健康リスクの高い環境を特定し改善すれば、メンタルヘルス対策として高い効果が期待できるでしょう。
集団ごとの集計・分析結果は労働者本人の同意なくして実施者から事業者へ情報提供できます。ただし、集計・分析の単位が10人を下回る場合は個人が特定されるおそれがあるため、個人特定につながらない方法でない限り、対象者全員の同意を得なければならない点に留意しましょう。
集団分析においては、仕事量と裁量度のバランスや、周囲のサポートが受けられるかなどを分析します。分析結果から見られた課題点をもとにヒアリングを行い、原因を見つけて改善対策を行いましょう。
ストレスチェックの項目と実施方法
ストレスチェックに用いられる質問票には、以下の種類の質問が含まれている必要があります。
- ストレスの原因に関する質問項目
- ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
- 労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目
質問票に決まった形式はありませんが、厚生労働省から国の推奨する質問が含まれた「職業性ストレス簡易調査票(57項目または80項目)」が配布されています。また、同省よりオンラインでの診断が可能な「ストレスチェック実施プログラム」も無料で公開されています。ストレスチェックを実施するにあたり、「何から手をつけていいかわからない」「分析にかけるコストやリソースがないため、まずは定期的な実施を優先したい」といった企業にはおすすめです。
専門の事業者へ委託したり、ITシステムを活用したりするのも有効です。一定のコストはかかりますが、医師面接の手配や受検者データの管理など担当者の負担を軽減することができます。さらに、集団分析の効率化や職場改善のアドバイスが受けられるなどのメリットも享受できるでしょう。
ストレスチェック実施時における注意点
ストレスチェック制度は労働者の個人情報が多く含まれるため、適切に保存されること、また不正な目的で利用されないようにすることが重要です。例えば、ストレスチェックへの不参加や面接指導の結果などを理由に、解雇や配置転換を行うことは禁じられています。さらに、検査結果は検査の実施者から直接本人に通知し、本人の同意なく事業者が結果を入手することは禁止されています。
ストレスチェックで健康経営を始めよう
ストレスチェック制度は、企業がメンタルヘルス対策として始めやすい手段のひとつです。ストレスチェックの実施により労働者本人が気付きを得られれば、深刻なトラブルを未然に防ぎ、企業のリスク管理にもつながるでしょう。ストレスチェックの意義や目的を社内に周知し、できるだけ全ての従業員がストレスチェックに取り組めるような体制をつくりましょう。
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