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ノロウイルスをはじめとするウイルスによる感染が原因の感染性胃腸炎は、毎年冬になると流行します。感染状況の特徴として、同一施設で10人以上の患者が発生する集団感染が多く、例えば東京都では2020年8月~2021年9月で426件の集団感染が発生し、そのうち411件が保育園、4件が幼稚園でした(東京都感染症情報センター調べ)。
ここでは、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎が保育園や幼稚園で発生しやすい理由と、集団感染を防ぐために、保護者側と保育施設側がそれぞれ気をつけたいことについてご紹介します。
保育園や幼稚園などの保育施設で集団感染が発生しやすい理由
保育園や幼稚園をはじめとする保育施設でノロウイルスへの集団感染が発生しやすい理由としては、ノロウイルスが持つ特徴とその感染経路が挙げられます。
感染力が強い
ノロウイルスはとても感染力が強く、10~100個というわずかなウイルス量が体内に入っただけで、感染してしまいます。また、ノロウイルスにはさまざまな遺伝子型のものがあり、ウイルスが変異して新型が生まれることもあります。そのため、主要な流行株が置き換わり、毎年流行しているのです。
排泄物中のウイルス量が多い
ノロウイルスは、感染者の腸管の中で増殖するので、感染者の嘔吐物や便の中には大量のノロウイルスが含まれています。下痢便1gの中には100万~10億個のウイルスがいるともいわれるほどで、嘔吐物や便を処理する際にそのわずかな量でも手などに付着してしまうと、そこから感染が広まってしまいます。
ウイルスが排出される期間が長い
ノロウイルスの症状は、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などで、多くの場合は1~2日で収まります。しかし、症状が収まった後も3~4週間程は、便の中にノロウイルスが排出されている可能性があります。無症状なので気づきにくく、知らないうちに自身が感染源になってしまう場合があります。
さまざまな感染経路がある
ノロウイルスの感染経路は、基本的に汚染された食べ物や飲み物の摂取やウイルスが付着した指や器物が、口にふれたことなどから体内にウイルスが侵入する「経口感染」となります。
体内にどのようにして入るかについては、施設内の場合、多くがノロウイルスに汚染された手やものを介してウイルスが運ばれ、最終的に汚染された手で口をさわったことでウイルスが体内に入る「接触感染」です。また、ノロウイルスを含んだ嘔吐物や便が乾燥して、その一部が粉塵になって舞い上がって空気中を漂い、これを吸い込んだ人が感染する「飛沫感染・塵埃感染」が起こることもあります。
感染拡大を防ぐには、感染経路を遮断することが有効ですが、ノロウイルスにはさまざまな感染経路があるため、人から人へ感染しやすく、集団感染が発生しやすいという特徴があるのです。
アルコールで除菌できない
ノロウイルスはアルコールへの抵抗性が強く、アルコール消毒では十分な除菌ができません。例えば、嘔吐物の処理をした後の床は、次亜塩素酸ナトリウムを含む家庭用塩素系漂白剤で作った次亜塩素酸ナトリウム水溶液で拭かないと、ウイルスが残ってしまいます。
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ノロウイルスにかかった場合、保育園や幼稚園の登園はいつからできる?
保育所や幼稚園に通う子供がノロウイルス感染症になってしまったら、まずはしっかりと休養することが大切です。症状がさほどひどくなければ、水分と栄養を補給しながら数日間自宅で療養すれば症状は収まってきます。
症状が回復した後、気になるのはいつから登園できるかです。これについて、厚生労働省が策定した「保育所における感染症対策ガイドライン」では、子供の再登園が可能かどうかの判断は、学校保健安全法に準ずるとされています。
学校保健安全法第19条によると、「感染症にかかっている、またはかかっている疑いのある児童生徒があるときは、政令で定めるところにより、出席を停止できる」と定めています。しかし、ノロウイルス感染症の出席停止期間を定める政令はなく、文部科学省の「学校において予防すべき感染症の解説」によると、「嘔吐症状が軽快し、全身状態がよい者は登校可能」とされているのが現状です。
このように、ノロウイルス感染症には明確な出席停止・登園再開の基準はないため、基本的には子供が機嫌良く遊べて、ご飯が食べられるようになれば登園が可能です。しかし実際には、保育園や幼稚園などの保育施設内での2次感染予防のために、医師による登園許可証を求められたり、登園届の提出が必要になったりすることも少なくありません。
そのため、できる限り家庭内だけでの判断は避け、医師に相談した上で登園再開のタイミングを決めるのがおすすめです。
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保育園や幼稚園で集団感染を防ぐには?
保育園や幼稚園などの保育施設側は、ノロウイルス感染症の流行を防ぐための対策として、次のようなことを心掛けることが大切です。
手洗いの指導
保育園や幼稚園では、おもちゃや遊具を多数の園児が共有して使うので、ものを介してウイルスが広がりやすい環境です。また、子供は手づかみでものを食べたり、手を口へ持っていったりもするので、手にウイルスがついていると、感染のリスクが高まります。幼い子供に手洗いの大切さをわかってもらうのは容易ではありませんが、成長段階に合わせた指導を行い、トイレの後や食事の前などはしっかり手洗いをする習慣づくりが求められます。
給食のある保育施設は食品を十分に加熱する
ノロウイルス感染症は、ノロウイルスに汚染された二枚貝などの食品を食べることでも起こります。加熱調理することでウイルスは死活化するので、食品は調理の際に、中心部が85~90℃以上で90秒以上を目安に加熱しましょう。
トイレやドアノブなど共用部を消毒する
感染者が出た場合は、共用部で感染者が直接ふれたものを消毒し、2次感染を防止することが大切です。ノロウイルスはアルコールには強いので、次亜塩素酸ナトリウムを含んだ家庭用塩素系漂白剤を薄めて消毒液として使います。500mlペットボトルにペットボトルのキャップ0.5杯弱(約2ml)の塩素系漂白剤と水を入れて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を作り、ドアノブやおもちゃなどをこまめに拭きます。
嘔吐物は適切な処理をする
ノロウイルス感染者による嘔吐物には、ノロウイルスが大量に含まれているので、処理には注意が必要です。まず、消毒処理を行うために、500mlペットボトルにキャップ2杯分(約10ml)の塩素系漂白剤と水をいっぱいに入れて、濃いめの消毒液を用意します。
次に、使い捨てのガウンやエプロン、手袋をつけ、マスクを装着した上で、ペーパータオルで嘔吐物を拭き取ります。さらに、消毒液で浸すように床を拭き、最後に水拭きも行います。使用済みのペーパータオルや使い捨てのガウン、エプロンは、ポリ袋に入れて密閉し、消毒液を入れた上で廃棄しましょう。
保護者や関係職員と情報を共有する
ノロウイルスの症状がある児童の登園控えや、すみやかな医療機関の受診につなげるためにも、ノロウイルス感染症について、保護者や関係職員と情報共有しておくことも大切です。
また、日頃からノロウイルスの感染者が出たときに適切な対応をとれるように、勉強会や実践講習を通じて感染症対策を徹底しておくことも重要になります。
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ノロウイルスの集団感染予防に感染症対策の見直しを
子供のノロウイルスへの感染を完全に防ぐことは難しいものですが、保育園や幼稚園をはじめ、家庭でもしっかり感染症対策をすることで、集団感染の予防に役立ちます。
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