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「サル痘」という病気をご存じでしょうか。その病名から「動物の病気なのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、人から人への感染も報告されている感染症です。サル痘とはどのような病気で、どのような経路でうつるのでしょうか。
ここでは、サル痘の原因や世界での発生状況のほか、予防法などについて併せて解説します。
サル痘とはサル痘ウイルスに感染することで起きる感染症
サル痘とは、サル痘ウイルスによる感染症です。人への感染は、1970年のザイール共和国(現在のコンゴ民主共和国)で初めて確認されました。これまで主に中央アフリカから西アフリカで発生していましたが、最近、欧米を中心に、サル痘流行国への渡航歴がない患者の報告が相次いでいます。WHO(世界保健機関)は、2022年7月23日、サル痘の流行に対して「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。
サル痘の原因となる病原体
サル痘は、天然痘ウイルスに似たサル痘ウイルスに感染することで起きる急性発疹性疾患です。発熱や頭痛、筋肉痛、激しい倦怠感、リンパ節腫脹などで発症し、それらの症状が数日続いた後に発疹が現れます。発疹は、一般的には顔面から始まって体中に広がり、徐々にふくらんで水疱になり、膿が出てかさぶたになります。
サル痘という名前は、この感染症の原因ウイルスが、1958年に研究用に飼育されていたサルの集団で初めて確認されたことに由来します。サル痘ウイルスを保有しているのは、サル痘が常在する中央アフリカや西アフリカ地域のげっ歯類(ネズミやリスなど)だと考えられています。サル痘ウイルスに感染した動物と接触したり、噛まれたりすることで、動物から人に感染する可能性があります。
サル痘は、日本では感染症法上の「四類感染症」に指定されています。四類感染症は、主に動物や飲食物などを介して人に感染する感染症で、代表的なものに狂犬病や鳥インフルエンザ、マラリアなどがあります。
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世界での発生状況
サル痘の人への感染は、これまで主に中央アフリカや西アフリカのサル痘常在地域で報告されていました。しかし、2022年5月以降、主にヨーロッパやアメリカなどのサル痘の常在地域以外で、人から人への感染が多数報告されています。日本でも、2022年7月25日、初めての症例が報告されました。
サル痘の感染経路
サル痘の感染経路は、「動物から人」または「人から人」の2つのケースがあります。前述したように、サル痘ウイルスを保有しているのは、サル痘の常在地域のげっ歯類だと考えられています。これらのげっ歯類や、サルやウサギといったウイルスを保有する動物と接触したり、噛まれたり、肉を十分に調理せずに食べることで、動物から人へ感染するといわれています。
また、人から人への感染は、主に接触によるものです。サル痘に感染した人の発疹やかさぶたにふれたり、体液や血液と接触(性的接触を含む)したりすると、人から人への感染が起こる可能性があります。また、感染した人と近距離で対面して飛沫に長時間さらされる、感染した人が使用した寝具などにふれるといったことからも感染のリスクがあります。
なお、実験による報告を除き、空気感染を起こした事例は現在までに確認されていません。
サル痘の予防法
サル痘の予防には天然痘ワクチンが有効で、約85%の発症予防効果があるとされています。
ただし日本では、1976年以降天然痘ワクチンの接種は行われていません。そのため、サル痘の流行地において大切なのは、感染している可能性のある動物や、感染者との接触を避けることです。体などへの接触はもちろん、感染者が使用した衣類などに直接ふれることも避けましょう。
また、手洗いの後は、アルコール消毒も有効だといわれています。
サル痘の潜伏期間や主な症状
サル痘の潜伏期間は通常7~14日ですが、最短で5日、最大で21日とされています。潜伏期間を経て、多くの場合は発熱や寒気、倦怠感、頭痛、筋肉痛といったインフルエンザのような症状、そしてリンパの腫れなどが起こります。これらの症状が続いた後、現れるのが発疹です。
発疹は顔から体幹部へと広がっていき、特に顔や四肢に多く出現するといわれます。初めは平坦な発疹が徐々に盛り上がって水疱になり、中に膿が溜まって、やがてかさぶたになりはがれ落ちます。なお、同じように発熱や発疹を伴う病気として水痘(水ぼうそう)がありますが、サル痘の場合、手のひらや足の裏にも発疹が出現する点が違いです。
2022年5月以降の流行では、「発熱やリンパの腫れなどの症状がない」「発疹が局所に集中している」など、従来知られていた症状とは異なる報告もあります。これは、感染経路の違いなど、何らかの理由によって、症状に違いがあるのではないかと指摘されています。また、サル痘は天然痘と似たウイルスですが、天然痘に比べて感染力が弱く、重症化する可能性も低めです。
サル痘は、多くの場合2~4週間で自然に回復しますが、皮膚の2次感染、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜炎などの合併症を起こす点に注意が必要です。子供が感染した場合などは、まれに重症化することもあります。ただし、一般的に重症化の可能性は低いといわれているため、免疫不全の人など、重症化リスクが高くなければ必要以上に恐れる必要はないでしょう。
サル痘の治療方法はある?
サル痘に感染した人の多くは、2~4週間で自然に回復するといわれます。では、そのあいだ、どのような治療を行うのでしょうか。
日本では対症療法のみ
実は、サル痘に特化した治療法はありません。日本で薬事承認された利用可能な治療薬はないため、サル痘の治療は対症療法で対応することになります。
欧州ではテコビリマットという薬が承認されている
ヨーロッパでは、サル痘の治療薬としてテコビリマットという薬が承認されています。テコビリマットは、アメリカの製薬会社が元々天然痘の治療薬として開発した飲み薬です。日本でも、このテコビリマットを使い、薬の有効性や安全性を調べる「特定臨床研究」が実施されています。
サル痘だけでなくさまざまなウイルスへの対策が大切
サル痘は、日本ではまだ報告は少なく、空気感染もしないといわれています。ただ、感染症はサル痘以外にもたくさんの種類があります。さまざまなウイルスの感染を防ぐには、手洗いやうがいといった基本的な対策に加え、室内の空気環境に気を配ることも大切です。
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