エアラボ通信

2021年3月5日

空気感染防止のための「空気清浄機」を選ぶには、どのような注意が必要ですか?

みんなエアー|2021年3月5日

呉 博士(みんな電力顧問)

年明け以降、着実に減少してきた新型コロナウイルスの新規感染者数は、ここに来て下げ止まりつつあります(3月1日現在)。第34回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議(令和3226日)によると、濃厚接触者における感染経路の内訳は、「同居人」からの感染が48%に上り、今回も「施設」「飲食」「職場」を抑えてダントツの一番でした<引用 1)>。感染終息に向けては、まさに家庭内での感染防止がカギを握る状況となっています。

 

前回は、家庭内感染防止対策の全般を解説しましたが、今回は「空気感染防止」に絞り、市場にあまた溢れる「空気清浄機」の中から、有効な製品を間違わずに選ぶためのポイントを解説いたします。

 

最も重要な事は、浮遊ウイルス不活化に有効な「原理」を採用している事です。現時点で有効性が実証されている「原理」は限られますので、下記のいずれかを採用している製品を選ぶ事が大前提となります。また、それぞれの原理には長所も弱点もあります。それらをよく理解し、納得した上で、ニーズに見合った空気清浄機を選ぶことが大切です。

 

1.HEPAフィルターによる捕捉

新型コロナウイルスのサイズは0.1㎛程度ですが、空気中ではより大きな飛沫核に乗って浮遊するため、粒径0.3㎛の粒子の捕集効率が99.97%以上であるHEPAフィルターには、浮遊ウイルスに対する十分な捕捉能力があります<引用 2)>。したがって、ウイルスから細菌、PM2.5、花粉、チリに至るまで、生活空間に漂うほぼ全ての異物を捕集する能力があるHEPAフィルター搭載の空気清浄機」は、手軽に行える感染防止対策として、第一の選択肢となるでしょう。

 

ただし、消臭機能はありません。また、インターネット上にはHEPAフィルター表面でのカビ発生事例が散見されます<引用 3)>。HEPAフィルターは5年毎の交換が推奨されますが、定期的に状態を確認し、異常があれば適宜交換することが必要です。

 

2紫外線(UV-C)の照射

波長の短い紫外線をUV-Cと言います。その中で波長250260 ㎚の光には、遺伝子(DNARNA)を傷つける作用があり、強力な殺菌・ウイルス不活化効果を発揮します<引用 4)>。この原理を応用した殺菌灯(254 ㎚の紫外線を発光する水銀ランプ)が、古くから医療機器や、調理環境の殺菌・消毒用途に用いられ、医療現場や食の衛生管理に大きな貢献をしてきました。

 

近年、室内の空間除菌を目的とした「紫外線照射装置」も開発されました。集塵や消臭機能はありませんが、室内に浮遊する菌やウイルスに特化した対策を行う上ではベストの選択となるでしょう。また、装置作動音がないため、静寂性を維持できるという貴重なメリットもあります。ただし、UV-Cは人の皮膚や眼を傷つけるため、部屋の上部に照射装置を設置するなど、人への直接照射を避ける工夫が必須となります。

 

なお、人への安全性が高い、波長のより短い222 ㎚の遠紫外線を発光するLED 開発も進められていますが<引用 5)>、消費者向けの販売はまだ先のようです。

 

3高圧放電で生成する「イオン」の放出

空気中で高圧放電させると、電荷を持った水素や酸素が生成し、それらは水分子と結合して安定化されます。この状態を「イオン」と総称し、「プラズマクラスターイオン」、「イオンクラスター」などとも呼ばれます。空間に放出されたイオン同士が結合する際に生成するラジカル物質が、浮遊菌や浮遊ウイルスを酸化し、不活化するといわれています<引用 6)>。

 

このメカニズムが学術界で十分に承認されている訳ではありませんが、メーカー側の努力により地道に積み重ねられてきた国内外の第三者機関による多数の検証研究が、「イオン」による浮遊菌、浮遊ウイルス、壁面に付着した菌・ウイルスへの不活化効果、さらに、臭いやアレル物質の低減効果を十分に証明しています<引用 7)>。

 

イオンを放出するファンの作動音がやや大きめですが、総合的な空気環境浄化対策として魅力的な選択肢となります。

 

4光触媒による酸化分解

光照射により化学反応を触発する物質を「光触媒」と言い、酸化チタンはその代表です。酸化チタンに紫外線(UV)を照射すると、光触媒の表面で、酸素分子や水分子との化学反応が起こり、強力な酸化力を有する「活性酸素」が生成します。

この原理を応用したのが「光触媒空気清浄機」で、LED-UV光源と酸化チタンからなる光触媒ユニットを搭載し、装置内部に空気を誘導することで、空気中の細菌、ウイルス、臭い成分、有機化学物質を、光触媒の強力な酸化作用により分解します<引用 8)>。

 

このシステムの特徴は、反応が光触媒表面のみで起こるため、いかなる物質やエネルギーを装置外部へ放出しない事です。空気循環方式のため、部屋全体の空気浄化には一定の時間がかかりますが、日常の空気環境に変化を与えずに空気浄化を行いたい方にはベストの選択となるでしょう。

 

なお、光触媒システムは、新千歳空港において行われた大規模な実証実験によって、実空間での有用性が検証され<引用 9)>、その後、空港や鉄道などの公共インフラ、病院、施設などでの採用が進んでいます。また、高機能化も日進月歩で進んでおり、建造物のダクト挿入型や、可視光反応型光触媒を用いた塗料なども開発され、様々な生活空間での空気環境改善への応用が進められています。

 

今回は市場にあふれる様々なタイプの「空気清浄機」を、その原理にまで遡り、長所や弱点も含めて解説いたしました。家庭やオフィスでの空気感染防止対策の一助となれば幸いです。

 

また、上記以外にも、オゾンや次亜塩素酸水などの化学物質の噴霧により、空間の除菌やウイルスを不活化する方法もあります。これらの有用性や課題については次回以降に取り上げます。

 

 

<引用>

1)https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/013/140/34kai/202102264.pdf
2)https://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.1080/027868299304804
3)http://hint3.web.fc2.com/air_cleaner_and_vacuum_cleaner/air_cleaner_and_vacuum_cleaner.html
4)https://www.iwasaki.co.jp/optics/chishiki/uv/02.html
5)https://clean.ushio.com/jp/tech/care222/
6)https://jp.sharp/business/pci/technology/
7)https://jp.sharp/plasmacluster-tech/prove/
8)https://www.jstage.jst.go.jp/article/mukimate1994/6/283/6_283_532/_pdf
9)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/44/3/44_192/_pdf/-char/ja

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