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人が集まる場所は、感染症が広がりやすくなります。子供たちが集団生活を送る学校も例外ではなく、感染症が発生しやすく広がりやすい環境であるため、十分な感染症対策が必要です。
ここでは、学校で広まりやすい感染症と、実際に行われている感染症対策についてご紹介しましょう。
学校感染症とは?
学校 感染症とは、学校保健安全法にて明記されている感染症の総称です。学校保健安全法施行規則第18条では「学校において予防すべき感染症」と表記されており、出席停止期間により3種類に分けられます。これらの感染症に罹患した、または罹患した疑いがある事例が発生した場合は、学校での感染拡大を防ぐため、一定期間出席停止とし、保健所や自治体の主管部への連絡が必要です。
感染症の主な経路は、人による感染と人以外の感染に大別できますが、学校は多くの人が集まる場であり、年齢が低くなるほど感染対策が難しくなるため、特に人による感染に気をつけなければなりません。
人による感染経路は、感染者との直接的な接触や物を介しての接触が原因となる「接触感染」、感染者が咳やくしゃみをした際に飛び散る飛沫を、別の人が吸引することで起こる「飛沫感染」、感染者の咳やくしゃみによって飛び散った飛沫が乾燥し、飛沫核となって空気中に拡散され、別の人が吸い込むことによる「空気感染」などがあげられます。
子供が集団で過ごす場である学校は、直接的な接触や物を介した接触を防ぐことが難しく、飛沫感染や空気感染を起こしやすくする「密閉」「密集」「密接」の「3密」が形成されやすい空間でもあります。そのため、 子どもたち一人ひとりの意識向上に加えて、学校運営としても積極的な感染症対策が必要になります。
主な学校感染症の分類と一覧
学校保健安全法施行規則第18条の「学校において予防すべき感染症」より、主な学校感染症を紹介します。
第一種感染症
第一種の感染症は、完全に治癒するまで出席できないのが大きな特徴です。第一種感染症として定められている学校感染症は次のとおりです。
エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘瘡、南米出血熱、ペスト、マールブルグ熱、ラッサ熱、ポリオ、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群の一部(SARSコロナウイルスによるもの)、特定鳥インフルエンザの一部
第二種感染症
第二種の感染症は、インフルエンザやおたふくかぜなどがあげられます。感染症によってそれぞれ出席停止期間が定められており、「解熱後数日を経過するまで」「発疹などの症状が消えるまで」「医師により伝染のおそれがないと認められるまで」などさまざまです。第二種感染症として定められている学校感染症は次のとおりです。
インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)、百日咳、麻疹(はしか)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、風疹、水痘(みずぼうそう)、咽頭結膜熱(プール熱)、結核、髄膜炎菌性髄膜炎
第三種感染症
第三種の感染症は、出席停止期間について日数などが厳密に定められていないのが特徴で、「状態が改善されれば」または「医師の判断で」出席再開できます。なお、第三種感染症として学校保健安全法にて明記されている学校感染症は次のとおりです。
コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス、流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎その他の感染症
そのほか、学校や保育園で流行しやすい感染症の一部としてあげられるものに、感染性胃腸炎やマイコプラズマ感染症、溶連菌感染症、急性細気管支炎(RSウイルス感染症など)、手足口病、アタマジラミなどがあります。これらは条件によっては第三種感染症としての措置を講じることになります。
学校で有効な感染症対策
感染症は、「感染源(病原体)」「感染経路」「感受性宿主(感染症にかかりやすい状態にある人)」の3つの条件がそろうことによって発症します。そのため、感染症対策には、これらの条件をひとつでも取り除くことが大切です。
その対策として有効とされ、実際に多くの学校で取り入れられている基本対策および、おすすめの感染対策備品を紹介します。
基本は手洗いと咳エチケット、換気の徹底
感染症が広まる経路には、接触感染、飛沫感染、空気感染の3つがあり、主にどの経路で広まるかは感染症によって異なります。例えば、インフルエンザや新型コロナウイルスは、接触感染・飛沫感染が中心です。水痘や麻疹のウイルスは、接触・飛沫に加えて、空気によっても感染することがわかっています。
そのため、これらの感染経路すべてに対して、それぞれ有効な対策をとることが感染症予防の基本です。具体的には、手洗い、咳エチケット、換気の徹底の3つです。
<感染症予防の基本対策>
接触感染対策:多くの人がふれる場所をさわった後は、しっかり手洗い・消毒をする。液体石けんやエタノール含有消毒薬の常備が有効。
飛沫感染対策:咳やくしゃみをするときは、ハンカチなどで口と鼻を覆う咳エチケットをまもる。必要に応じてパーテーションの設置も検討するとよい。
空気感染対策:適切に換気を行って、室内に漂う飛沫核を外へ出す。換気効率を上げるには、CO2モニターによる空気環境の可視化や空気を攪拌させるサーキュレーターの設置が効果的。
密閉された空間では、咳やくしゃみによって飛び散ったウイルスが、空間にとどまることで感染リスクが上昇します。そのため、換気によって空気を入れ換えることは非常に重要です。
文部科学省の作成した「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル 」では、可能であれば常時換気、難しい場合は30分に1回以上、数分間程度の換気が必要とされています。効率的に空気を入れ換えるには、対角線上の2方向の窓や扉を開けるのがポイントです。
学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル(2023.5.8~)|文部科学省
体温測定で健康状態の把握
感染源を断つためには、外からウイルスを持ち込まないことが大切です。そのためには保護者と連携し、子供たちの日々の健康観察を徹底しましょう。教職員においても、体調が悪い場合は無理させず医療機関への受診を促してください。定期的な健康診断の実施や検温などで健康管理を適切に行い、感染症の早期発見に努めましょう。
なお、新型コロナウイルスの流行時には、毎日の検温チェックシートや施設入り口のサーモメーター設置など、健康管理の徹底に努める学校も多くありました。
密集を避ける
人が密集すると接触感染・飛沫感染が起こりやすくなります。感染経路を断つためには、密集を回避することが必要です。そのための具体策としては、教室内では席の配置を変えるなどして、子供同士の距離を可能なら2m(最低1m)離すこと、分散登校を行うこと、運動会や文化祭などの観客を制限すること、一部オンライン授業を取り入れることなどが挙げられます。また、必要に応じてマスクの着用も有効でしょう。
こまめな清掃と消毒を行う
消毒には、ウイルスを減少させる効果がありますが、消毒によってすべてのウイルスを死滅させることは不可能です。そのため、学校での清掃・消毒は、一時的にウイルスを減らすことよりも、清潔な空間を保ち、健康的な生活を送ることで子供たちの免疫力を高めることのほうに主眼が置かれています。
例えば、新型コロナウイルスの感染症対策には、大勢が手をふれるドアノブや手すり、スイッチなどは、1日に1度水拭きした後に、消毒液を浸した布巾やペーパータオルで清掃すること、下校時に家庭用洗剤などを使って机・椅子を拭き、掃除することなどが推奨されていました。これらは、接触感染を防ぐために有効な対策です。
空気清浄器などの設置
感染経路を遮断するための対策の一環として、空気清浄機を導入する学校も増えています。
空気清浄機とは、取り込んだ空気の汚れをキャッチして除去することで、室内の空気をきれいにしてくれる機器です。その性能は、搭載するフィルターによりますが、小さな粒子をキャッチできるタイプなら、ウイルス除去にも効果が期待できます。
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空気清浄機を学校に導入するメリットと期待できる効果とは?
学校の感染症対策に!みんなエアーの導入事例
神奈川県横浜市では、2023年1月より市立学校全校に二酸化炭素濃度が計測できるCO2モニターを導入し、「空気の見える化プロジェクト」を始動しました。市立の小・中学校、高等校の全509校にCO2モニターを設置し、校内およびWebページ上から室内空気環境(二酸化炭素濃度等)を確認できます。これにより、換気の適切なタイミングや空気環境の改善が必要な場所が可視化されるとともに、児童生徒の換気の実践や意識の向上を図り、安全・安心な学校環境につなげていきます。
この試みは、全国でも初の事例として注目されています。
詳しい取り組みついてはこちら➤
全国初!横浜市立学校全校「空気の見える化」プロジェクト始動 ~安心・安全な学校環境を目指して~
感染症対策には、換気と空気環境を改善するサービスを活用しよう
多くの子供たちが集団生活を送る学校は、感染症が発生しやすく、広がりやすいため、しっかりとした感染症対策が必要です。感染症対策の基本である、換気をこまめに行うと同時に、空気環境を改善することが大切といえるでしょう。
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