感染症の歴史とその対策は?代表的な感染症と予防対策を紹介します

古来、幾度もすさまじい勢いで人から人へと感染し、多数の感染者と死者を出してきた感染症。人類と感染症との付き合いはとても長く、感染症を引き起こすいくつかの病原体は太古から存在するとまでいわれています。

これまでに、どのような感染症が流行してきたのか、その歴史を振り返りながら、感染症にかからないようするための対策について解説します。

 

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感染症とは?

 

感染症とは、細菌、ウイルス、真菌(カビや酵母)などの微生物が体内に侵入して起こる疾患の総称です。感染症を引き起こす微生物は病原体と呼ばれます。目に見えない微生物のほか、回虫やぎょう虫などの寄生虫が人間などの宿主に害を及ぼす寄生虫症も感染症の一種とされています。

 

感染症は、場合によっては死に至る恐ろしい病気ですが、病原体が体内に入ってきたからといって必ず感染症になるわけではありません。病原体に感染し、何らかの病状が発症して初めて感染症といえます。

感染症が病状として発症するかどうかは、病原体が有する感染力と、人間が持つ免疫系などによって決まります。大切なのは、病原体の感染経路を防ぐ予防対策です。まずは、病原体の感染経路と予防対策について見ていきましょう。

 

 

感染症の感染経路は3つある

 

病原体が体内に侵入する経路は、主に「飛沫感染」と「空気感染」「接触感染」です。以上3つは、まとめて「水平感染」と呼ばれます。

このほか、妊娠中または出産の際に子供が感染するケースもあり、こちらは「垂直感染(母子感染)」といいます。

 

■感染症の主な感染経路

 

飛沫感染 感染者がせきやくしゃみ、会話をするときに飛び出した「病原体が含まれた飛沫」を、近くにいる人が吸い込むことで感染する。
空気感染 空気中を漂う微細な粒子を口や鼻から吸い込むことで感染する。

感染者の口や鼻から飛び出した飛沫の水分が蒸発してごく小さな粒子になったものを「飛沫核」と呼び、この飛沫核は直径が5μm(0.005mm)以下でなかなか落下せず、空中を長時間浮遊するため、空気感染が引き起こされる。

接触感染 感染者との皮膚や粘膜などの直接的な接触、または病原体が付着したドアノブや手すり、便座などを介した間接的な接触によって感染する。

感染症を予防するには?

感染症は「感染経路」「病原体」「宿主」の3つの要因がそろうことで初めて感染が起こります。そのため、3要因のうちどれかを取り除くことができれば予防対策となります。

多くの医療機関や高齢者施設では、「病原体を持ち込まない」「病原体を持ち出さない」「病原体を広げない」の3点を感染制御の基本として掲げています。

 

また、通常の生活においては、特に感染経路の遮断に気をつける必要があります。感染症の種類にもよりますが、感染経路遮断のためには次の事項を守ることが重要です。

 

<感染経路遮断のポイント>

・流水による手洗い、手指消毒

・マスクの着用

・血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物などを扱うときは手袋、マスク、エプロン、ガウンなどを着用

・タオルなどの共用を禁止

・感染者を隔離し、換気など居室の環境整備の徹底

 

上記の対策を3つの感染経路それぞれにあてはめると、下図のようになります。

 

■感染症の予防対策

パンデミックを引き起こした代表的な感染症

 

感染症を引き起こす細菌やウイルスは、地球上に人類が誕生する以前から存在していました。そのため、感染症との戦いは、人類誕生とともに始まったともいえます。人類の歴史を通じて幾度となく繰り返されてきた感染症の世界的大流行を「パンデミック(Pandemic)」と呼び、その脅威は今もなお続いています。

続いては、これまでに流行した代表的な感染症について見ていきましょう。

 

 

天然痘

 

天然痘は、天然痘ウイルスを病原体とする感染症です。医学界では「痘そう」という名称が用いられます。感染性、致死性ともにとても高い病気です。

 

天然痘は紀元前より存在していたことで知られ、エジプトのミイラにもその痕跡が認められています。日本では737年に平城京で大量の感染者と死者を出し、時の権力者であった藤原四兄弟も全員が天然痘により死亡しています。ヨーロッパでは何度も流行が繰り返され、そのあいだに徐々に人々は免疫を獲得していったと考えられています。15世紀にはコロンブスが新大陸に上陸し、その後の植民によって天然痘ウイルスが持ち込まれたことで、アメリカ大陸でパンデミックが引き起こされました。

 

<対策>

天然痘の感染予防に最も効果を発揮するのは、天然痘ワクチンの接種です。1796年にイギリスのエドワード・ジェンナーが初めて種痘(天然痘のワクチン接種のこと)を行い、それを契機としてワクチンによる予防対策が全世界に普及しました。

日本では1956年以降、天然痘発生は確認されておらず、1976年にはワクチン接種が廃止されました。1980年5月には世界保健機関(WHO)によって天然痘の世界根絶宣言がなされています。

 

 

ペスト

 

ペストは、ペスト菌による感染症です。歴史上、何度も流行が繰り返され、14世紀のヨーロッパのパンデミックでは皮膚が黒くなる症状から、「黒死病」の名で恐れられました。この大流行では、実に2,500万人が死亡したとされています。

 

感染経路は、ペスト菌を保有するネズミなどについたノミを介した感染と、感染者のせきや会話による飛沫感染の2つが挙げられます。症状により、腺ペスト(感染部のリンパ節が痛みとともに腫れる)、敗血症ペスト(局所症状が生じないまま敗血症を起こして皮膚の各所に出血斑が浮かび、全身に黒いあざも出現する)、肺ペスト(強烈な頭痛や発熱を伴う気管支炎や肺炎を起こす)などに分けられます。

現在もペストは、限られた地域などで散発的に発生しています。

 

<対策>

ペスト菌に有効なワクチンは存在しません。治療は抗菌薬の投与が主です。

感染予防としてはペスト菌を保有するネズミやノミの駆除、感染者との接触を避けることなどが挙げられます。

 

 

梅毒

 

梅毒は、梅毒トレポネーマという病原菌による感染症です。性的な接触によって、病原菌が粘膜や皮膚の小さな傷から侵入することで引き起こされます。

 

梅毒の起源は明確ではありませんが、コロンブスが新大陸から持ち帰ったという説がよく知られています。15世紀の終わりには、フランスからの侵攻を受けたイタリアのナポリで流行し、その後ヨーロッパ各地に拡散されました。

日本では1967年に年間約1万1,000人の患者数が報告されて以降、減少していましたが、2018年には全国で7,000人を超えるなど再び増加傾向が見られます。

 

<対策>

梅毒トレポネーマに有効なワクチンは存在しません。治療には抗菌薬が使用されます。

感染予防には性的感染を防ぐために、感染者との粘膜や皮膚の接触を避けるようにします。

 

 

結核

 

結核は、結核菌による感染症です。結核菌は主に肺の内部で増殖し、せき、たん、発熱、呼吸困難などの症状を引き起こします。また、骨や脳など、全身に影響が及ぶこともあります。

 

結核は太古より存在する病気です。9000年前の人骨からヒト型結核菌の細胞壁のマーカー(結核菌の特徴的な物質)が検出されたのが世界最古の痕跡とされています。日本では明治時代から昭和20年代まで、結核は「国民病」として恐れられてきました。現在も毎年約1万5,000人が新たに発症しており、日本は依然として「中まん延国」となっています。

 

<対策>

結核は、BCGワクチンを乳児期に接種していれば重症化を防ぐことができます。しかし、成長とともに効果が薄れていき、免疫力が低下することで感染しやすくなります。

感染しないためには、結核患者との接触を避けることが重要です。感染した場合は、抗結核薬の投与などで治療します。

 

 

マラリア

 

マラリアは、主に4種のマラリア原虫を病原体とする感染症(寄生虫症)です。マラリア原虫を持つハマダラカという蚊に刺されることで感染します。特に危険なのは熱帯熱マラリア原虫で、治療しないと高確率で致死的疾患を引き起こします。

 

マラリアは、先史時代から存在するとされています。21世紀の現在もなお、世界で年間3億~5億人が感染し、およそ100万人が死に至っています。

 

<対策>

マラリア対策には、流行地で蚊に刺されないようにすることと、予防薬を内服することが望ましいとされています。

治療にはアルテミシニン誘導体とそのほかの抗マラリア薬を併用する方法が、WHOにより推奨されています。

 

 

後天性免疫不全症候群

 

後天性免疫不全症候群は、レトロウイルスの一種であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症です。エイズ(AIDS)の名前で知られています。感染経路は性的感染、血液感染、母子感染の主に3つがあります。HIVに感染すると免疫細胞が破壊されて免疫不全が生じ、23の指標疾患のうち、どれかにかかるとエイズ発症とされます。

 

HIVの起源は、カメルーンのチンパンジーという説が有力です。1981年にアメリカのロサンゼルスで最初のエイズ症例が報告されました。日本では近年、年間1,500人前後が新たにエイズを発症していると報告されています。

 

<対策>

体内のHIVを完全に取り除く方法は、現在も見つかっていません。しかし、多くの治療薬が開発されており、HIVの増殖を抑えて免疫力を維持することが可能になっています。

 

 

インフルエンザ

 

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる感染症です。大きく分けてA型、B型、C型の3種類のウイルスが存在します。中でも最も感染力が強いA型は、140種以上のウイルスの型を持ち、しばしば新型のウイルスも現れます。

 

最初に確認されたインフルエンザパンデミックは、1918~1919年にかけて大流行した「スペインかぜ」です。世界中に広まり、最終的な感染者数は約5億人、死者は4,000万人以上と推定されています。日本でも感染者数は約2,300万人、死者約38万人という数字が記録されています。

その後、「アジアかぜ」「香港かぜ」「ソ連かぜ」とパンデミックが続き、2009年にも「新型インフルエンザ(A/H1N1)」が猛威を振るいました。

 

<対策>

インフルエンザワクチンを毎年接種することで、感染した場合でも重症化を防ぐことができます。

感染した場合でも、有効な治療薬がある感染症です。

 

 

コロナウイルス感染症

 

コロナウイルス感染症は、2002年にはSARS(重症急性呼吸器症候群)、2012年にはMERS(中東呼吸器症候群)がアジアや中東で流行しました。コロナウイルスはさまざまなタイプがあり、一般的な風邪症状の原因にもなる身近なウイルスです。通常の風邪であれば、自己免疫力によって症状を改善することができます。しかし、ウイルスの変異によって、肺炎などの重篤な症状を引き起こす感染症になります。

 

そして、2019年末、中国の湖北省武漢市付近でSARS-CoV-2と呼ばれる新しいコロナウイルスを原因とする感染症の発生が報告されました。この感染症はCOVID-19と命名され、新型コロナウイルス感染症の呼び名で知られるようになります。COVID-19はやがてパンデミックを引き起こし、世界中の社会活動や経済活動に重大なダメージを与えました。

2021年8月の段階で、COVID-19による世界の死者は445万人を超えています。

 

<対策>

新型コロナウイルス感染症のワクチンは複数開発され、世界中で接種が推奨されています。

新型コロナウイルス感染症に確実に有効とされる治療薬は2021年8月の段階では存在しておらず、開発が待たれている状況です。

 

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感染症を広めないために、空気環境対策に注力しよう

 

感染症は、昔も今も人類にとって大きな脅威であり続けています。現在では、感染を広げない対策のひとつとして、居室の空気環境対策も注目されています。

 

株式会社UPDATER(旧社名 みんな電力株式会社)のエアテック事業「みんなエアー」では、空気環境対策のソリューションとして、「エアロシールド」(エアロシールド株式会社製)を提供しています。エアロシールドは、紫外線の中でも最も除菌効果が高いとされているUV-Cを室内上部に水平照射することで、人がいる空間でも安全に浮遊菌やウイルスを減少させることができます。室内の空気環境対策には、エアロシールドの導入をご検討ください。

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