【インタビュー前編】親子が健全に生活できる社会を! NPO法人WooMooと考える育児環境の課題とは

2023年6月に厚生労働省が発表した人口動態統計によると、2022年の合計特殊出生率は過去最低の1.26を記録。出生数は7年連続で減少、初めて80万人を割り込み過去最少を更新し、少子化の加速が止まらない状況です。少子化の一方、子どもの貧困や自殺率は年々増え続けています。

2005年から行われている少子化社会に関する国際意識調査では、15年前と比べて日本は子育てしづらいと感じる人が多くなっている結果となり、子どもを生み育てやすい社会の実現への課題が多く残ります。現代においては、父親の子育てへのかかわり方をはじめ、産前産後の母親の心身のケアなどの支援、地域や社会ぐるみで子ども育てるという姿勢が必要不可欠といえるでしょう。

 

神奈川県横浜市に、現代女性たちのライフステージに寄りそった観点から、より良い子育て環境や社会を実現するべく、母体である「みやした助産院」をベースにさまざまな支援事業を展開するNPO法人があります。子育てにおける母親の不安をひとつでも取り除き、スタートを伴走していくことで、健全な親子関係や子育て環境を構築するお手伝いをしています。

今回は、産後ママのケアから子育てにおける母子を取り巻く環境と支援活動について、NPO法人WooMooの理事長・宮下さんと副理事長・廣木さんに話を伺いました。

 

 

「目の前に必要とする人がいたから」 ーNPO法人WooMooの取り組みー

 

 

ーーーNPO法人WooMooを立ち上げたきっかけや思いを教えて下さい。

 

もともとは助産院から始まり、10年ほど前に「ぽかぽか保育園」を立ち上げたタイミングでNPO法人を設立しました。「ぽかぽか保育園」というのは、これまで助産院として妊娠中の母親の想いや不安を受け止めてきた中で、母親たちの声を叶えたいという思いや母乳育児を続けられる環境の実現のため、冷凍母乳を対応できる園として、生後8週間から満2歳までを受け入れられる体制を整え開業ました。

しかし、助産院と連携し、園として産後ケアや就労支援が可能になった一方で、2歳を過ぎて他の幼保施設に移った後のフォローが難しいという課題が出てきたことで、6年前に横浜市の補助事業として「M-HOUSE三春台」(0歳から就学前のお子様とその保護者向けの子育て支援事業)を始めた経緯があります。

私たちは、未就学までの子どもたちの支援ができるようになると、今度はその先の小学生へのフォローが課題と感じるようになりました。学校に行けないなどのさまざまな問題を目にして、子どもの居場所事業である「Tsubame(つばめ)」も始めるに至りました。

 

私たちが立ち上げてきたどの施設も、目の前に困っている人がいて、とにかく必要に駆られて始めたという感じですね。すべての施設が「ここに来て終わり」ではなく、継続した支援が必要であるため、人材や資金、専門の先生方の協力も不可欠であり、区役所とも連携をとりながら課題解決に力を入れています。

 

 

ーーー親御さんへのケアというのはどのようなことをされているのですか?

 

助産院では、とにかく産後のお母さんの話を聞きます。何を不安に思っているのか、私たちが聞くことでお母さんが自分で考えを整理できるんですよね。産後はホルモンが乱れているので、しっかりと休んだり、私たちに話すことで不安が解消されて、気持ちが落ち着けば子どもとしっかり向き合えるようになります。

それぞれの家族にとってのお父さんの子育てへのかかわり方も分かりやすくなるかもしれません。産後ケアは日帰りと泊まりで2週間あるのですが、その期間を使ってほとんどの方は自立していきます。心身のケアは早ければ早いほど回復が早いので、できるだけ早く適切な支援をするよう心がけています。

 

 

ーーー新しくはじめた子どもの居場所事業「Tsubame(つばめ)」の反響はいかがですか?

 

Tsubame(つばめ)もまた必要に駆られてスタートした事業ですが、反響も需要も高く…、実は区外からの子どもたちがたくさんいて、問い合わせも多くきています。逆に区内では、この施設を知っていても「学校にいけない子どもたちが行く場所」と思われてしまい、来づらいという面もあるのかもしれませんね…。

また、不登校に対しては既存の支援というものはありますが、日数や時間が限定されていたり、どちらかというと高学年がメインだったりするんですよね。私たちとしてはこれからも、不登校の子どもたちの居場所としてもっともっと事例を作っていかなければと思っています。

 

さらに、「子どもの居場所事業」としての機能を考えると、利用者には貧困や家庭に問題があるというケースもあるため、学校のある日中だけではなく、実は夜間のニーズも高いのです。次に増設を予定している施設では二部制にして、日中と夜間でそれぞれケアをしていきたいと考えています。もちろん二部制にしても両方利用するようなケースも多いと思われます。

 

 

 

育児環境を取り巻く社会的課題とは

 

ーーーこうした支援が必要となる背景について、どのように考えていらっしゃいますか?

 

横浜市の産後ケア事業は、国のモデル事業として10年前に始まりました。それは出産で亡くなる人よりも産後のうつ病で自殺してしまう人が増えたからです。日本は世界的に見ても出産時の死亡数は少なく、お産の医療水準は高い国であるにもかかわらず、産後に子どもを育てられずに亡くなる率が非常に高いんです。そのことを受けて、国が支援をしなければならないと動き出したのがこの10年です。

無痛分娩のニーズが高まっているのも、お母さんたちの出産への不安が高まっていることが背景にあるのではないかと考えています。その先、子育てのさまざまな不安を解消させる方法が見つからないまま、産後のケアまでしか着手できていないのが世の中の現状です。

 

社会はあらゆるものが電子化されてどんどん便利になっていく反面、子育てだけはそう簡単にはいきません。子どもほど思い通りにはならない、子どもほど手間暇がかかるものです。植木に水をあげたらぱっと育つように、子どもを可愛がるだけで簡単に育てたいと思う人が増えているように見えます。

思うように育てられず、精神を病めば虐待にもつながるし、子どもの死亡率も高まってしまう。お母さんのうつ病だけではなく虐待率も高まっているという社会問題であり、お母さんのメンタルが子どもの精神の発達に影響する、というのも世界的なデータに実証されていることから、みんなで助けていかないと健全な子どもを育てられない社会になっていると感じます。

 

その結果として今、すでに小学生の支援は必要不可欠なのですが、日本でもやっと産後ケアが始まったばかりで行政も追いつけていない状態ですよね。私たちは助産院から始まって、保育園、子育て支援、家事支援、ヘルパー支援、訪問看護など、いろんなことを拡大しているけれどもとにかく目の前のことに必要なことを作ってきた結果であり、今はどれひとつなくしてはいけない事業であると感じています。

 

インタビュー・後編記事に続く➤➤➤https://minnaair.com/blog/5305/

 

 

 

NOP法人 WooMoo https://www.npo-woomoo.com/

理事長 宮下美代子  副理事長 廣木彩子

 

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