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アデノウイルスを原因とする感染症として知られる「プール熱」や「はやり目」は、子供がかかりやすい感染症のひとつです。潜伏期間が比較的長いため、やっと治ったと思ったら他のきょうだいが発症してしまうといったことも多く、感染対策に苦戦する保護者もおられるのではないでしょうか。
ここでは、子供がアデノウイルス感染症にかかってしまった場合の保育園などへの対応や病気の対処法のほか、いつから登園できるかなどについて解説します。
アデノウイルス感染症 とは?
アデノウイルスには50種類以上の型があり、風邪症状をはじめさまざまな疾患を引き起こします。具体的な症状としては、鼻詰まり、鼻水、咳、発熱、嘔吐、下痢、腹痛、喉の痛み、目の充血、発疹などがあげられます。
感染力が非常に強いのが特徴で、飛沫や接触などさまざまなかたちで体内に侵入するため注意が必要です。潜伏期間は5~7日で、症状が出る2日前からほかの人にうつるといわれています。子供に多く見られる病気ですが、大人にうつることもあります。
どの型に感染したかによって症状が異なりますが、アデノウイルスを原因とする感染症には次のようなものがあります。
- 咽頭結膜熱(プール熱)
39℃前後の発熱のほか、喉の痛み、結膜炎などの症状が起こります。症状は1~2週間程度で治まるものの、重症化した場合は肺炎などの合併症を引き起こすリスクがあります。
子供を中心に、夏に流行する感染症のひとつですが、近年は冬にも小流行が認められています。
- 流行性結膜炎(はやり目)
白目が赤くなり大量の目やにが出るのが特徴です。そのほかには、まぶたやリンパ節の腫れや症状が強いと角膜に強い痛みを伴う場合もあります。
- 感染性胃腸炎
発熱、嘔吐、下痢などの消化器症状が主で、乳幼児に多く見られます。ロタウイルスなどの感染症と症状は似ていますが、アデノウイルスはさらに症状も多彩です。比較的下痢症状が長く、便からのウイルス排出も2週間程続くため、感染対策が重要です。
- 呼吸器感染症
鼻炎や咽頭炎といった呼吸器が主な症状です。風邪のような軽い症状のほか、肺炎や気管支炎といった重度の症状までさまざまです。
上記のほかに、 出血性膀胱炎や髄膜脳炎などがあげられます。多くの型が存在するため、一度かかっても違う型に繰り返し感染することが多い病気といえます。
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保育園や幼稚園に感染したことを 言わないのはNG
アデノウイルスは非常に感染力が強く、免疫が未発達な小さい子供に感染すると重篤化する可能性もあります。そのため、アデノウイルスを原因とする感染症のうち、咽頭結膜熱(プール熱)・流行性角結膜炎(はやり目)・胃腸炎は、学校保健安全法によって登園・登校の禁止期間が設けられています。
症状が治まった後も、しばらくのあいだは咽頭や便からウイルスが排出されます。集団感染を防ぐためにも、アデノウイルス感染症と診断された場合には、必ず保育園や幼稚園に報告してください。「症状が軽いから」などと、言わないままにしていてはいけません。また、出席停止期間が設けられていない感染症であっても、症状が治まって十分に回復してから登園を再開しましょう。
保育園や幼稚園の登園はいつからできる?
アデノウイルス感染症の出席停止期間は、症状により異なります。
- 咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱(プール熱)の場合、すべての症状が治まった後、2日間の経過が必要です。症状が治まった日を0日目とし、3日目以降が登園可能ということになります。症状が治まった日を含む2日後ではないので注意しましょう。症状が治まっているかどうか不安なときは、医師の判断を仰いでください。
症状の種類や重さにより多少変動はありますが、発症からだいたい5~7日間は登園できないと考えていていいでしょう。
- 流行性角結膜炎(はやり目)
流行性角結膜炎(はやり目)の場合は具体的な日数の指定はなく、「医師が感染のおそれがないと判断するまで」です。
登園許可証が必要な場合もある
保育園や幼稚園によっては、登園再開にあたって登園許可証(治癒証明書)を求められることがあります。登園許可証が必要な場合は、アデノウイルス感染症の確定診断をしてもらった医療機関へ行き、医師の診察を受けた上で発行を依頼しましょう。保育園や幼稚園で指定の用紙があるときは、それに記入してもらってください。
登園再開にあたっては、「症状がなくなって2日経てばOK」「医師が口頭で登園を許可すればOK」「書面による登園許可証が必要」など、園や自治体によって対応が異なります。保育園や幼稚園には、アデノウイルス感染症にかかったことを報告するときに、登園再開のルールについても確認しておくことが大切です。
登園再開する場合の注意点
アデノウイルス感染症が落ち着き、たとえ登園できるようになっても、病気の直後は体力が落ちていることも多いものです。症状がぶり返さないように、しばらくは激しい運動を控えるようにしてください。特に小さい子供は、発熱や喉の痛みなどがなくなると、いつもどおりに体を動かしてしまうので、周りの大人が気をつける必要があります。
また、目に見える症状がなくなってからも、咳やくしゃみ、唾、便からはウイルスが排出されています。周囲への感染を防ぐため、できれば登園時にはマスクの着用ができると安心です。トイレの後をはじめ、こまめな手洗い・うがいができるよう、普段から子供と練習をしておくといいでしょう。
アデノウイルス感染症の治療方法
現在、アデノウイルスに対する抗ウイルス薬はないため、本人の免疫力でウイルスに対抗するしかありません。アデノウイルス感染症と診断された場合、基本的には下記のような症状を緩和するための対症療法が中心となります。
十分に休養をとる
アデノウイルス感染症にかかったときは安静にし、十分に体を休めることが大切です。部屋を暗くして静かにするなど、子供が落ち着いて休める環境を整えましょう。
食事はできるだけ消化の良いメニューにし、喉に痛みがある場合は喉越しの良いものを与えるようにしてください。また、高熱や下痢などの症状が続くと脱水症状に陥るおそれがあるため、こまめな水分補給も必要です。
症状に合わせた薬を服用する
アデノウイルス感染症は数日のうちに自然治癒することがほとんどですが、症状によっては、病院で対症療法のための薬が処方されることがあります。
例えば、喉の痛みをやわらげる抗炎症成分が配合されたうがい薬、目の炎症やかゆみを抑える成分が配合された点眼薬などです。処方された薬で症状をやわらげながら、安静にして回復を待ちましょう。
家族間での感染を防ぐために
アデノウイルスは非常に感染力が高いため、子供が感染すると、ほかの家族に感染が広がる場合があります。家族間での感染を防ぐために、次のようなことを意識してください。
手洗い・うがいを徹底する
アデノウイルスの主な感染経路は接触感染です。手指消毒用のアルコール単体では効果が低いため、感染症予防の基本である手洗い・うがいを徹底しましょう。特に、子供がアデノウイルス感染症にかかったときには、家族全員で手洗い・うがいを徹底し、洗っていない手で目や口などをさわらないようにしてください。
子供がふれた場所はこまめに清掃・消毒する
子供は、ウイルスのついた手で家のあちこちにふれてしまう可能性があります。子供がアデノウイルスに感染したときは、子供がふれた場所やおもちゃなどをこまめに清掃し、消毒をしておきましょう。特に子供のおむつ交換やトイレの世話をする場合は、特に念入りに手洗いや消毒を行ってください。
濃度の次亜塩素酸ナトリウムまたは濃度80%以上のエタノールの浸漬であれば10分~30分程度の短時間でウイルスを不活化できるため有効といえるでしょう。
お風呂やタオル、食器等は別にする
接触感染を防ぐため、タオルや食器などのモノを感染者と共用しないようにしましょう。
また、アデノウイルス感染症にかかった子供といっしょの入浴は避け、湯船に浸かるなら感染した子供が家族の中で最後になるように工夫します。まだ一人で入浴できない小さな子供の場合は、保護者は体や髪を洗うサポートにとどめ、子供といっしょに湯船に入ることは控えてください。
免疫力を高める生活習慣を身につける
アデノウイルス感染症を予防するには、日頃から免疫力を高めておくことも大切です。子供も大人も同様に、栄養バランスの良い食事や質の良い睡眠をとり、免疫力アップを目指しましょう。
そもそもアデノウイルスを持ち込まないようにする
子供の感染経路のほとんどは、保育園や幼稚園、学校、習い事などでの子供同士での感染です。中でも、プール熱という呼び名があるように、プールを介した感染もよく見られます。周囲でアデノウイルスが流行しているときには、プールの利用を控えることも予防につながります。
一方で、大人がアデノウイルス感染症にかかる場合、多くが子供からの感染です。家庭では子供の状態に日頃から注意を払い、発熱や下痢、目の違和感など、気がかりな点があれば病院の受診をおすすめします。また、ウイルスは大人から大人へ感染する可能性もあります。換気が不十分で人の密度が高いほど感染しやすいため、職場の空気環境をチェックすることも大切です。
アデノウイルスに感染したら保育園に報告を。感染症対策には空気環境チェックも大切
アデノウイルス感染症は、毎年のように流行する感染症です。感染力が強いため、子供が感染したら保育園や幼稚園、学校などに報告をしてください。
アデノウイルスは「子供の夏風邪」というイメージが強いものの、季節を問わず存在し、子供から大人、または大人同士で感染することも珍しくはありません。感染症を予防するには、個々の手洗い・うがいなどの対策に加え、職場の空気環境チェックも効果的です。
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