空気環境対策にはHEPAフィルター付き空気清浄機などの活用が大切!

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感染リスクを低減させるには、手洗いや消毒、換気などが大切だということが知られてきましたが、飲食店やオフィス、学校では、換気の難しい環境となっている所もあります。そのような環境では、どのように空気環境を改善すればいいのでしょうか。

今回は、HEPAフィルターの規格やHEPAフィルターを使った空気環境対策について、進和テック株式会社営業本部、マイスターの加藤辰夫さんに話を伺いました。

 

 

0.3μmの粒子を99.97%以上捕集できるHEPAフィルター

 

 

――まず、進和テックとはどのような会社なのか教えてください。

 

加藤:進和テックは1946年創業です。当初は繊維製品を取り扱っていましたが、創業者である当時の社長がアメリカに行ったときに、高層ビルに設置されたエアフィルターという存在を知り、これからは日本でもエアフィルターが必要になると考えて1952年に輸入を始めました。その後、1960年には国内に工場を建設し、エアフィルター集塵装置を造るようになったのです。

現在では空調用エアフィルター、製鉄所の大型集塵装置のほか、電力プラント用のエアフィルター、手術室や製薬工場などのクリーンルーム関連機器などの設計・施工・販売をしています。

 

――HEPAフィルターを扱うようになったのはいつからなのでしょうか?

 

加藤:輸入販売の開始は1960年代終わりごろから、国内での1980年代からですね。国内製造を開始した頃から、病院の手術室や集中治療室にHEPAフィルターが使われるようになりました。治療中の感染を防ぐために、HEPAフィルターを使用したバイオクリーン手術室が普及するようになっていったのです。

 

――HEPAフィルターはその頃からあったのですね。

 

加藤:そうですね。今のほうが圧力損失(空気抵抗)や寿命、枠の材質などの点で、性能のいいHEPAフィルターを作れるようになりましたが、捕集率は今も昔も同じものが流通しています。

 

――そもそもHEPAフィルターとは、どのような規格なのでしょうか?

 

加藤:HEPAとはHigh Efficiency Particulate Airfilterの頭文字を取ったもので、元々は、アメリカのMIL軍事規格に基づくフィルターでした。現行のJIS規格Z8122では「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を有しており、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター」と規定されています。つまり、現時点で流通しているHEPAは0.3μm(1万分の3mm)の粒子を99.97%捕集できるエアフィルターということです。

2022年2月に改訂されたばかりのJIS B 9927では分類方法が変わり、MPPS(最も捕集しにくい粒子径である最大透過粒子径がおよそ0.15μm前後のエアロゾル)で試験した時の捕集率が99.95~99.999%のフィルターをHEPAと呼ぶことになりましたが、すべて新規格に切り替わるまでには何年もかかると思います。

 

 

 

ウイルスを1時間で99.9987%も減少させる「ウイルスガード」

 

 

――スギ花粉が30μmなので、それよりももっと小さな粒子を捕集することができるのですね。

 

加藤:ただし、本来は0.3μmを99.97%捕集する能力がずっと維持できないといけません。手術中に捕集能力が落ちてきたら大変ですよね。しかし、それができないフィルターも流通しています。家庭用の空気清浄機に使われているエレクトレットHEPAフィルターというもので、HEPAフィルターではないけれど静電気の力でHEPAフィルターのような効果を出しているフィルターです。エレクトレットHEPAフィルターは、ほとんどが家電メーカーなどによる輸入品です。お話した通り、性能が維持できないので進和テックでは生産していません。

 

――静電気で粒子を吸い寄せるということでしょうか?

 

加藤:そのとおりです。ただ、このフィルターはアルコールが付着すると静電気が弱まって捕集能力が落ちてしまいます。JIS規格どおりのHEPAフィルターは、アルコールが付着しても捕集能力は落ちません。コロナ禍の現在では、病院でも家庭でもアルコール消毒をしますよね。噴霧したアルコール蒸気がエレクトレットHEPAフィルターに付着すると、捕集能力が落ちてしまうのです。

 

――消費者は規格に則ったHEPAフィルターとそれ以外を見分けられるのでしょうか?

 

加藤:見分けるのは難しいですが、規格に則ったHEPAフィルターの場合は、捕集能力が落ちないということをうたっているものが多いはずです。進和テックのHEPAフィルター「ウイルスガード」は、捕集能力が落ちないだけでなく新型コロナウイルスをはじめとしたウイルスに対する抗ウイルス効果もあります。

 

――つまり、HEPAフィルターに付着したウイルスを死滅させられるということですか?

 

加藤:試験機関で新型コロナウイルスを使って調べたところ、「ウイルスガード」に付着したウイルスは1時間で99.9987%も減りました。15分でも10分の1に、35分だと1000分の1、45分だと1万分の1まで減らせます。抗ウイルスフィルターでなくても新型コロナウイルスは3日間程度、つまり72時間程度で感染力を失いますが、抗ウイルスフィルターで新型コロナウイルスの感染力をこれだけ早く減らせられれば、皆さんの安心感もかなり増すのではないでしょうか。

 

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意外と知られていない空気清浄機の位置の重要性

 

 

――それだけの効果があれば安心ですね。

 

加藤:ただ、空気清浄機を置く位置も気にしなければいけません。ウイルスガードを使った「ウイルスガードパッド」をつけた空気清浄機を置くだけでは、適切な対策をしたとはいえないのです。

例えば、家でご家族が感染した場合、感染していない人の部屋に空気清浄機を置くのは間違いです。ウイルスの発生源になる、感染者の部屋に置いて、できるだけ感染者の口や鼻の近くに空気清浄機の吸い込み口を向けて、ウイルスを含む呼気エアロゾルが広がる前にろ過してしまうことが大切です。

 

――ただ空気清浄機を置くだけでなく、どこに置くのかも重要なのですね。

 

加藤:はい。家庭内感染を防ぐには、感染者と空気清浄機のあいだに入ることも避けたほうがいいでしょう。感染者と空気清浄機のあいだが空気中のウイルスの通り道になるため、感染する確率が高くなります。

 

――飲食店やオフィスなど、人が多く集まる所では、どのような空気環境対策を行えばいいのでしょうか?

 

加藤:専門家としては、まずは多くの人が長時間同じ部屋にいることをできるだけ避けてほしいですね。それと、換気が大切。新型コロナウイルス感染症の主要感染ルートはエアロゾル感染です。エアロゾル感染では感染者の近くにいる人だけが感染するわけではなく、換気不足の室内では離れた席に座っていても感染します。空気清浄機にHEPAフィルターがついていれば、空気が循環していてもウイルスを含んだエアロゾルを捕集できますが、空気の流れは考える必要がありますね。感染者の風下にいると、感染する可能性が高くなってしまいます。

 

――エアロゾル感染を防ぐには、換気が最も大切ということですね。

 

加藤:そのとおりです。ただ、窓を全開にしたからといって、一度にすべての空気が入れ換わるようなことはありません。例えば、コップいっぱいに入ったウイスキーに水を入れたところで、ウイスキーと水が混じってこぼれ、コップ内の濃度がだんだんと薄まっていくだけで、コップの中のウイスキーは一気に水に入れ替わるわけではありません。空気も同じです。すべての空気がすぐに入れ換わるわけではないのです。

 

 

感染リスクを低減させるには多層防御が必要

 

 

――では、感染を防ぐには、どのような空気環境対策を行えばいいのでしょうか?

 

加藤:空気中のエアロゾルを減らすことが感染リスク低減につながります。そのためには、多層防御が必要で、自然換気や機械換気だけでなく、HEPAフィルター付きの空気清浄機を使用したり、マスクをつけたりするといいでしょう。

 

――空気環境対策を行うには、やはりHEPAフィルターが重要なのですね。

 

加藤:そうですね。換気できない環境であれば、HEPAフィルター付きの空気清浄機は必須といえるでしょう。ウイルスガードパッドをつけた空気清浄機であれば、付着したウイルスを短い時間で撃退できるという安心感もあります。

オフィスや家庭で使われている空気清浄機にもつけることができますので、安心できる空気環境づくりに活用していただければと思います。

 

 

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