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工場や自動車などから排出される化学物質によって空気が汚染される大気汚染は、世界中で起こっている深刻な環境問題です。大気汚染は環境破壊につながるだけでなく、私たちの健康にも大きな被害を及ぼすため、各国で対策が進められています。
ここでは、世界の大気汚染の現状と主な大気汚染の原因物質のほか、大気汚染を防ぐための各国の取り組みについてご紹介します。
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世界の大気汚染の現状
大気汚染は、石炭や石油といった化石燃料の使用量が増え、世界中で産業が活発化するのに伴って深刻化してきた環境問題のひとつです。
1700年代半ばから1800年代にかけて起こった産業革命以前にも、大気は汚染されていましたが、極めて局地的なもので、現在のように世界中で起こっている問題ではありませんでした。それが、1900年代に入って世界規模での産業化が急速に進んだことで、まず工場から排出された有害物質が健康被害を引き起こす「産業公害型大気汚染」が世界中で発生します。
これに対して各国政府は、工場や自動車などから排出される煙や廃棄物を法律で規制する、省資源・省エネルギー化を進めるといった対策をとり、そのかいあって産業公害型大気汚染は大きく改善されました。
しかし、近年では、都市部への人口集中や自動車の交通量の増大によって、生活の中で排出される有害物質による「都市・生活型大気汚染」が進んでおり、人口の増加や発展途上国の経済成長による使用エネルギー量の増加も加わって、世界中で深刻な大気汚染が発生しています。
大気汚染の健康被害
世界保健機関(WHO)によると、世界の人口の約90%が汚染された大気の下で暮らしており、健康被害のリスクがあると2018年に報告されています。大気汚染は肺がんや呼吸器系疾患の一因になることがわかっており、大気汚染の影響によって肺がんや呼吸器疾患などで早期に亡くなる人は、全世界で年間約700万人に上っているといわれているのです。
また、大気汚染によって新型コロナウイルス感染症の感染者や重症者を増やすという報告も研究者からされています。
大気汚染の経済被害
大気汚染は、人の体だけでなく経済にも大きな損害をもたらします。世界銀行によると、2013年に大気汚染の影響で早期に死亡した人は約5.5億人と推定され、その労働所得の損失は全世界で総額約2,250億ドル、厚生上の損失は約5兆1,100億ドルにも上ると発表されています。
なお、2020~2021年は、新型コロナウイルス感染症対策として世界規模でのロックダウンが行われた結果、大気環境はやや改善されたとの報告もあります。国立研究開発法人海洋研究開発機構の2021年6月の発表によると、大気汚染物質のひとつである窒素酸化物(NOx)の世界規模での排出量は、ロックダウンにより地球全体で少なくとも15%、欧州や北米では18~25%減少しました。このことからも、人の活動が大気汚染の大きな原因になっているということがわかるでしょう。
主な大気汚染物質と、考えられる健康被害
大気汚染を引き起こす化学物質は、大気汚染物質と呼ばれます。主な大気汚染物質とそれぞれの発生原因、そして考えられる健康被害は下記のとおりです。
■主な大気物質
硫黄酸化物(SOx)
硫黄酸化物(SOx)は、石炭や石油など、硫黄分を含んだ化石燃料が燃えるときに発生する物質です。日本では高度経済成長の時代に急速に増えたことで社会問題となりましたが、さまざまな法規制や対策が行われた結果、現在では排出濃度は低下しています。気管支炎や喘息のほか、酸性雨の原因にもなります。
窒素酸化物(NOx)
窒素酸化物(NOx)は、物が高温度で燃焼したときに空気中の酸素と窒素が結びついて発生するもので、一酸化窒素や二酸化窒素がこれにあたります。工場、火力発電所、自動車、家庭など、さまざまな所が発生源となりますが、東京や大阪などの都市部では自動車から排出される量が最も多く、全体の半分以上を占めています。
高濃度の二酸化窒素は、のどや気管、肺などの呼吸器系に悪影響を与えます。
光化学オキシダント(Ox)
光化学オキシダント(Ox)は、自動車や工場などから排出された窒素酸化物や揮発性有機化合物(VOC)が、紫外線を受けて光化学反応を起こすことで生成される物質です。光化学オキシダントが空気中を漂っている状態は「光化学スモッグ」と呼ばれ、目の痛みや吐き気、頭痛などを引き起こします。
粒子状物質(PM)
粒子状物質(PM)は、空気中に含まれる固体または液体の粒の総称です。工場から出る煙や土砂採取などで上がる粉塵、ディーゼル車の排出ガスに含まれる黒煙、土ぼこりなどが発生源です。
呼吸器疾患やアレルギー性疾患との関係性や、がんを誘発したりする可能性が高いと考えられています。
浮遊粒子状物質(SPM)
浮遊粒子状物質(SPM)は、粒子状物質のうち粒の直径が10µm以下のものを指し、自動車の排気などが発生源です。粒が小さい分、人体に取り込まれると肺や気管に沈着しやすく、呼吸器疾患やアレルギー発症との関連性が認められるほか、がんを誘発したりする可能性が高いと指摘されています。
微小粒子状物質(PM2.5)
微小粒子状物質(PM2.5)は、浮遊粒子状物質のうち直径が2.5μm以下のものを指します。浮遊粒子状物質よりさらに呼吸器官の奥に沈着しやすく、呼吸器疾患や肺がんを引き起こす可能性があるといわれています。
アスベスト
アスベストは、天然の繊維状けい酸塩鉱物です。1975年まで、ビルなどの建築工事において保温断熱目的にアスベストを吹きつける作業が行われていました。吸い込むことで、肺線維症や悪性中皮腫の原因になるといわれており、肺がんを引き起こす可能性も指摘されています。
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大気汚染を防ぐための国の取り組み
大気汚染を防ぐための各国の取り組みとしては、まず大気環境の常時モニタリングと法規制の整備が挙げられます。日本の場合は、高度経済成長期に産業公害型大気汚染が深刻化したのを受けて、1967年に公害対策基本法、1968年に大気汚染防止法が制定され、大気汚染対策として効果を上げてきました。
一方、近年問題になっている都市・生活型大気汚染の対策としては、火力発電に替わる再生可能エネルギーの推進やEST(Environmentally Sustainable Transport:環境的に持続可能な交通)への転換を目指す取り組みが行われています。これは、人やものの移動によって環境にかかる負荷を削減し、持続可能な交通を目指すというもので、公共交通機関の利用促進や都市部の渋滞の解消のほか、電気自動車・ハイブリッド車などの低公害車の開発・普及、公共交通機関を利用しやすい街づくり、市民への情報提供や意識改革などが挙げられます。
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空気の状態の「見える化」から空気環境対策を始めよう
人が健康に暮らしていく上で、きれいな空気は必要不可欠ですが、大気の状態は目に見えないため、大気汚染の実態や被害はなかなか実感することができません。それは、会社や家の中の空気環境についても同じです。
株式会社UPDATER(旧社名 みんな電力株式会社)のエアテック事業「みんなエアー」では、空気環境改善のソリューションとして、空気環境を可視化し、データの分析・通知・アフターサポートまで行うクラウドサービス「MADO(マド)」を提供しています。「MADO」は、オフィスや店舗の空気中に含まれる二酸化炭素やPM2.5、揮発性のガスといった物質を計測し、クラウドに送信。事業者のコンピューターやタブレットなどのデバイスに表示するので、その空間の空気がどのような状態なのかを目で確認でき、状況に応じた対策を行うのに役立ちます。
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