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日本では、毎年3~5月頃に空気中のPM2.5濃度が上昇する傾向があり、PM2.5濃度が健康に影響を与える可能性が高い水準まで上がると、自治体が注意喚起を行っています。しかし、PM2.5は良くないものということは知られていても、具体的にPM2.5とはどのようなもので、空気中の濃度が上がると健康にどのような影響があるのかは、あまり知られていません。
ここでは、PM2.5の概要と健康に及ぼす影響のほか、PM2.5に関する行政の動きについて解説します。
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PM2.5は大気中を漂う粒子状の物質のこと
PM2.5の「PM」とは、Particulate Matterの頭文字を取ったもので、大気中を漂う粒子状の物質です。「2.5」は大きさを指す数字で、直径2.5µm(1µm=1mmの1,000分の1)以下であることを示しています。
PM2.5とは、大気中の粒子状物質のうち、直径2.5µm以下の極めて小さな粒子状の物質を指し、単一の物質で構成されるのではなく、炭素や金属類、硝酸塩、硫酸塩などを主成分とした、さまざまな物質の混合物です。
発生方法は2パターンある
PM2.5の発生方法は、一次生成と二次生成の2つに分けられます。一次生成とは、物の燃焼などによって直接大気中にPM2.5が排出されるもの。発生源としては、ボイラーや焼却炉などばい煙を発生する施設のほか、自動車、船舶、航空機、火山の噴煙、黄砂、海塩、家庭内での喫煙や調理なども含まれます。
これに対して二次生成とは、ガス状物質として排出されたものが大気中で化学反応を起こし、PM2.5となるものです。例えば、火力発電所や工場、自動車、船舶、航空機などで燃料が燃焼することによって生じる硫黄酸化物や窒素酸化物、森林から排出される揮発性有機化合物などが、大気中で光やオゾンと反応することで発生します。
PM2.5による健康被害
PM2.5の直径は、髪の毛の太さの30分の1程度と非常に小さいため、一度人体に取り込まれると肺の奥まで入りやすく、呼吸器系・循環器系の組織に影響を及ぼすといわれています。具体的には、PM2.5を多く体に取り込むと、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器系の疾患や、循環器系の疾患のリスクが増すと考えられているのです。
なお、国立研究開発法人国立環境研究所が行った統計解析により、PM2.5の質量濃度が10µg/㎥上昇すると、死亡する人の割合が1.3%増加することがわかっています。このことから、PM2.5は循環器疾患や呼吸器疾患が原因で死に至るというケースもあるのです。2021年10月に世界保健機関(WHO)が出した気候変動と健康に関する報告書では、PM2.5を含む大気汚染が原因で早死にする人は、世界で毎年700万人に上ると推定されています。
PM2.5の基準と日本政府の対策
日本では、環境基本法第16条で、政府は大気の汚染や水質の汚濁、土壌の汚染、騒音に関する環境について、人の健康保護・生活環境の保全を図るために維持されるのが望ましい基準(環境基準)を定めるとしています。この条文にもとづき、PM2.5の環境基準は「1年の平均値が15µg/㎥以下であり、かつ、1日平均値が 35µg/㎥以下」と定められているのです。
さらに、環境省では、専門家による「微小粒子状物質(PM2.5)に関する注意喚起のための暫定的な指針」を設けています。
大気中のPM2.5の濃度を超えると、健康に影響が出る可能性が高くなると予測されるラインを「1日平均値70μg/㎥」と定め、大気中のPM2.5濃度がこのラインを超えると、自治体から注意喚起が出されます。
PM2.5と中国の関係
日本で、一般の人々にPM2.5が意識されるようになったのは、2013年に中国でPM2.5による深刻な大気汚染が発生し、大気汚染物質の一部が日本にも飛来。日本のPM2.5濃度が上昇したという報道が相次いだ頃からです。
そんな背景を受けて、環境省は2014年から、日本の大気汚染対策分野における知見・ノウハウを、中国の主要都市における能力構築や人材育成などに活用する、日中都市間連携協力事業を実施。2018年6月からは、大気環境改善のための研究とモデル事業での協力を開始し、現在は7つのモデル事業が展開されています。
このような取り組みもあり、2019年時点で中国の大気中のPM2.5濃度は、2013年比で35%、SO2(二酸化硫黄)濃度は57%減少しました。しかし、大気汚染が解消されたわけではなく、都市や気候条件によっては「非常に健康に悪い」水準の、深刻な大気汚染が今も発生しています。
出典:環境省「中国大気環境改善に向けた日中都市間連携協力による5年間の取組の成果について」(2019年3月)
日本のPM2.5対策の現状
日本では大気汚染防止法にもとづき、地方自治体によって全国700ヵ所以上でPM2.5の常時監視が実施されています。大気中のPM2.5濃度が「1日平均値70μg/㎥」を超えると地方自治体から注意喚起が行われ、基準を超えるおそれがなくなると、注意喚起が解除されます。
呼吸器系の疾患や循環器系の疾患がある人のほか、子供や高齢者などは特にPM2.5の影響を受けやすいので、日頃から注意喚起が発生したかどうかを各自治体のウェブサイトなどを参考に確認しておくことが大切です。
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PM2.5の注意喚起がされたらどうする?
注意喚起が出された際の行動として、環境省が留意するよう呼び掛けているのは、具体的には下記の4点です。
屋外での長時間の激しい運動を控える
大気中のPM2.5濃度が高いときに外で激しい運動をすると、それだけ多くのPM2.5を体内に取り込んでしまいます。長時間の激しい運動は控えましょう。
外出を減らす
外出すれば、それだけPM2.5を体内に吸い込む機会が多くなるので、不要不急の外出はやめておきましょう。
換気や窓の開閉は必要最小限にする
通常の場合であれば、換気や窓の開閉は室内の汚れた空気と外のきれいな空気を取り替えるために、積極的に行ったほうがいいものです。
しかし、大気中のPM2.5濃度が高いと、せっかく換気しても汚れた空気が入ってきてしまうので、換気や窓の開閉は必要最小限にします。
マスクによる効果
大気中のPM2.5の濃度が高い場合、マスクを着用することでPM2.5の吸引を抑えることができます。しかし、PM2.5の粒子はとても小さいため、目の粗いマスクだとあまり意味がありません。
微粒子捕集効果の高いフィルターを使った医療用や産業用の高性能なマスクを選び、顔とマスクに隙間ができないように装着することで、PM2.5の吸引を減らす効果が期待できます。
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PM2.5対策には、身近な空気環境の見直しから始めることが大事
大気の環境は目に見えないので、なかなか意識が向きにくいものですが、空気の状態は健康に大きな影響を及ぼします。空気中のPM2.5濃度は、場所や季節条件によっても変動するので、急に濃度が上昇しても対応できるよう、対策しておくのがおすすめです。
株式会社UPDATER(旧社名 みんな電力株式会社)のエアテック事業「みんなエアー」では、空気環境を可視化し、データの分析・通知・アフターサポートまでを行うクラウドサービス「MADO」を提供しています。「MADO」は、オフィスや店舗の空気中に含まれる二酸化炭素やPM2.5、揮発性のガスといった物質を計測し、クラウドに送信。事業者のコンピューターやタブレットなどのデバイスに表示し、その空間の空気がどのような状態なのかを可視化できるため、換気やその他状況に応じた対策を行うことが可能です。
空気環境が気になる方は、ぜひご利用を検討してみてはいかがでしょうか。