エアラボ通信

2020年12月25日

換気によって新型コロナウイルスの空気感染を防ぐことはできますか?

みんなエアー|2020年12月25日

呉 博士(みんな電力顧問)

密集した環境や至近距離での会話を避けるなどの「飛沫感染」対策がなされているならば、十分な換気によって新型コロナウイルスの「空気感染」リスクを取り除くことができると考えられていますが、そのための課題はまだ多く残されています。

 

公共交通機関の換気実態から見ていきましょう。

 

先ず鉄道車両です。生活に身近な通勤型車両については、1028日に発表された鉄道総研の研究報告があります。ここでは、窓を10cm程度開けて70km/hrで走行した場合、混雑の程度によらず車内の空気は5~6分で入れ替わることが示されました<引用1)>。また、在来線特急と新幹線車両は、空調装置と換気装置により、6~8分で車内の空気が入れ替わるとされています<引用2)>。

 

バスについては、国交省が主な観光バスと路線バスの室内換気能力を纏めています。それによりますと、観光バスでは、エアコンを外気導入モードで使用した場合に5分程で、路線バスでは、一部の窓を開け、扇風機とデフロスターを使用した場合に3分程で、車内空気が入れ替わるとされています<引用3)>。

 

タクシーの場合は、スーパーコンピューター「富岳」をつかった研究によって、エアコンを外気導入モードで使用した場合に車内空気が45秒~1分半で入れ替わり、窓を開けるよりもはるかに効果的であることが示されました<引用4)>。

 

航空機の場合も、飛行中には2~3分で機内空気が入れ替わるとされています<引用5)>。

 

このように、公共交通機関の換気能力は総じて高いと言えます。しかしながら、感染経緯を分析した最新の研究において、「空気感染」を否定できない観光バス車内での集団感染事例が報告されています<引用6)>。したがって、過度の安心は禁物で、常に注意が必要であることに変わりありません。

 

次に建屋内の換気を見てみましょう。

 

2003年の建築基準法改定により、それ以降に建築された建物には、機械換気の導入と毎時0.5回以上の換気(2時間以内で室内空気が入れ替わる)が義務づけられました。しかしながら、この法定換気量は、新型コロナウイルスの空気感染対策としては不十分であることが、次に示す厚生労働省の通知によって明らかになりました。

 

厚生労働省は1127付けで「冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について」<引用7)>を通知しました。ここでは、過去の様々な研究事例に基づいて、新型コロナウイルスへの有効な感染防止策として、一人あたり毎時30㎥の換気が必要であることが提起されています。この値は、標準的な商品売リ場やオフィスにおいて、2030分毎に室内空気を入れ替えることに相当しますが、強力な換気装置が必要となるため、容易に実現はできません。

 

そのため厚労省は、建物の機械換気設備の再調整に加えて、適宜窓を開け、適切な換気を行う必要性を強調するとともに、適切な換気が行われているかどうかの指標として、室内の二酸化炭素濃度を1000ppm以下に維持することを推奨しています<引用7)>。さらに、室温を18℃以上、湿度は40%以上に保つことも併せて強調しています。

 

結論として、公共交通機関の換気能力は高いが、一般商業施設やオフィス等の換気能力は低く、新たな対策が必要である事を認識しなければなりません。個人として注意することはもちろんですが、施設を管理運営する方々がこの点を良く理解し、具体的な対策を取ることが必要となっています。

 

次回以降は、換気を含め、室内での空気感染を防ぐ様々な対策を考えてまいります。

 

<引用>

1)https://tetsudo-ch.com/10854939.html

2)https://www.jreast.co.jp/stylingthenew/actions/

3)http://www.bus.or.jp/covid-19/pdf/bus_ventilation_performance.pdf

4)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201127/k10012732991000.html

5)https://www.jal.co.jp/jp/ja/info/2020/other/200403/?location_jp

6)https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2488-idsc/iasr-news/10029-491p02.html

7)https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000698849.pdf

 

お問い合わせお問い合わせ

お問い合わせは
こちらから