ワクチン接種で予防できる感染症とは?ワクチンの仕組みや種類を解説

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新型コロナウイルス感染症によるパンデミックを機に、ワクチンに対する関心が高まっています。ワクチンとはどのような仕組みを持つ製剤で、どのような種類があり、どの感染症に対して効果があるのでしょうか。

今、あらためてワクチンについて知っておくべきことについて整理し、詳しく解説します。

 

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ワクチンでなぜ感染症を予防できるのか

 

そもそも、ワクチンを使用するとなぜ感染症を予防できるのでしょうか。感染症の免疫を獲得できる仕組みや、集団免疫の獲得に結びつく理由、定期接種するものと任意接種するものの違いなど、ワクチンの基本的な仕組みを解説します。

 

 

ワクチン接種で感染症に対する免疫を獲得できる

 

ワクチンは、人体に対して有害な感染症を引き起こすウイルスや細菌などの病原体に対し、毒性を弱くするなどの加工を施して作られた製剤です。ワクチンを人に接種すると、体の中に抗体と呼ばれる物質が作られます。

抗体は病原体の抗原と呼ばれる部分と結合し、体内から病原体を除外する働きをします。この異物に対応した抗体を作って発病を抑える能力=防御システムが「免疫」です。

ワクチンを接種して免疫を獲得できると、感染症にかかりにくくなったり、発症した場合でも重症化を防いだりできるようになります。

 

 

集団免疫の獲得に結びつく

 

個人が免疫を持つだけではなく、多くの人がワクチンを接種することで集団免疫を獲得することができます。

ある病原体に対し、集団の大部分の人が免疫を持つと、感染患者が出たとしてもほかの人に感染しにくくなり、病気の拡大が収まっていきます。この状態を集団免疫と呼びます。

ただし、すべてのワクチンが集団免疫の効果を持つとは限りません。集団免疫を獲得するために必要な免疫を持つ人の割合も、感染症の種類によって異なります。

 

 

定期接種と任意接種の違い

 

ワクチンの予防接種には、予防接種法にもとづいて実施される「定期接種」と、予防接種法に規定されてはいないものの、希望すれば受けることができる「任意接種」があります。

定期接種のワクチンの費用は原則として地方自治体が負担します(一部、自己負担あり)。一方、任意接種は原則的に一部、または全額自己負担です。

 

定期接種と任意接種のワクチンの違い

定期接種のワクチン 任意接種のワクチン
予防接種法での規定 あり なし
費用負担 原則なし あり
※一部地域によっては、一部負担か全額費用の負担
副反応が起こった場合 予防接種法にもとづく対応 医薬品医療機器総合機構の医療品副作用被害救済制度による対応

ワクチンの種類

 

ワクチンは、大きく分類すると「生ワクチン」「不活化ワクチン」「トキソイド」といったものがあります。そして、新型コロナウイルスの流行により、「mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン」「ウイルスベクターワクチン」と呼ばれる、新しいタイプのワクチンが登場しました。

 

 

生ワクチン

 

生ワクチンは、ウイルスや細菌といった病原体の毒性を弱めたものを原材料として作られる製剤です。弱毒化しているものの、病原体は生きているため生ワクチンと呼ばれます。病原性を極力抑えつつ、自然感染とほぼ同じ経緯で免疫を獲得できるため、接種の回数は比較的少なくて済みます。

 

 

不活化ワクチン

 

不活化ワクチンは、病原体の毒性を失わせ、不活化・殺菌したものを原材料として作られる製剤です。生ワクチンに比べると獲得できる免疫力が弱いため1回の接種では十分ではなく、複数回の追加接種が必要です。

 

 

トキソイド

 

トキソイドは、細菌が有する毒素を消失させ、免疫を作る能力だけを残して作られる製剤です。ジフテリアや破傷風のワクチンが該当します。

 

■ワクチンの種類と対応する病原体・感染症(一例)

生ワクチン 不活化ワクチン トキソイド
麻しん 百日せき ジフテリア
風しん 日本脳炎 破傷風
麻しん風しん混合 季節性インフルエンザ
水痘 肝炎
おたふくかぜ 肺炎球菌感染症
黄熱 ヒトパピローマウイルス
結核
ロタウイルス
など など など

 

mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン・ウイルスベクターワクチン

 

新型コロナウイルスに関しては、上記の3種類のいずれとも異なり、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンやウイルスベクターワクチンと呼ばれる新しい方法でワクチンが作られました。

 

■従来のワクチンとmRNAワクチンの違い

 

※スパイクタンパク質の遺伝情報

 

mRNAワクチンは、新型コロナウイルスが人の細胞へ侵入するために必要なたんぱく質(スパイクタンパク質)の設計図であるmRNAを、脂質の膜に包んで作ったワクチンです。mRNAは設計図なので、それが人の細胞内に取り込まれると、細胞内でもスパイクタンパク質が産生されます。すると、ほかのワクチンと同じように抗体が作られるなどして、免疫が獲得できます。

ウイルスベクターワクチンは、スパイクタンパク質の遺伝子コードを、人体に無害なように改変したウイルスベクター(運び手)に組み込んだワクチンです。

 

なお、mRNAワクチンやウイルスベクターワクチンのメリットは、迅速に開発し、実用化できることにあります。mRNAワクチンは、1990年頃より開発されてきた、比較的新しいワクチンです。新型コロナウイルス感染症の世界的な流行によって、ワクチンを最速で大量に供給する必要に迫られたため、mRNAワクチンが採用されました。

 

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ワクチンで予防できる感染症

 

続いては、ワクチンで予防できる主な感染症(新型コロナウイルス感染症を除く)をご紹介します。

季節性インフルエンザは、毎年流行する時期になるとニュースなどで見聞きしますが、そのほかの感染症も撲滅されたわけではありません。詳しく見てみましょう。

 

 

季節性インフルエンザ

 

インフルエンザウイルスを病原体とする季節性インフルエンザは、毎年のように世界各地で流行します。38℃以上の発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛などの全身症状が見られることが特徴です。

季節性インフルエンザのワクチンは、流行する前に13歳未満の子供は2~4週間の間隔を置いて2回、13歳以上の人は1回、または1~4週間を置いて2回接種します。

 

 

結核

 

結核は、結核菌によって引き起こされる感染症で、現在でも毎年1万人以上の患者が発生しています。空気感染によって感染し、咳やたん、呼吸困難を引き起こします。肺のほかにも、腎臓や骨、脳などにも影響を及ぼすことがある病気です。

結核は、生後1歳までに接種するBCGワクチンによってリスクを減らすことができます。生後5~8ヵ月の期間に、1回の接種を行います。

 

 

水痘

 

水痘とは、一般的に「水ぼうそう」と呼ばれる感染症です。ヘルペスウイルスである「水痘・帯状疱疹ウイルス」による、かゆみを伴う特徴的な発疹が現れす。斑点状の赤い発疹は、顔や腹部、背中から1週間程度かけて全身に広がり、やがて水ぶくれ(水痘)やかさぶたに変化していきます。

ワクチンは、水痘ワクチンが用いられます。生後12~15ヵ月に1回目の接種を行い、その後、2回目の接種は3ヵ月以上の間隔を空けて行います。

 

 

麻しん

 

麻しんは、麻しんウイルスによって引き起こされる感染症で、一般的には「はしか」と呼ばれます。発熱、咳、鼻水、目やに、発疹などの症状

が現れ、発熱は波がありますが、合計1週間程度続きます。

麻しんのワクチンは、第1期は1歳児に、第2期は小学校入学前1年間の小児に対して、原則として麻しん風しん混合(MR)ワクチンを接種します。

 

 

風しん

 

風しんは、風しんウイルスによって起こる感染症です。主な症状は発疹、発熱、リンパ節の腫れなどで、麻しんと似た症状のほか、眼球結膜の充血が見られることがあります。発疹や発熱は3日程で収まることが多く、「3日はしか」とも呼ばれます。

風しんのワクチンは麻しんと同じく、第1期は1歳児に、第2期は小学校入学前1年間の小児に対して、原則としてMRワクチンを接種します。

 

 

日本脳炎

 

日本脳炎は、日本脳炎ウイルスが引き起こす感染症で、蚊を介して感染します。7~10日間の潜伏期間を経て高熱、頭痛、嘔吐などで発病、意識障害や麻痺、けいれん等の神経系の障害が現れることもあります。

日本脳炎のワクチンは、日本脳炎ワクチンが用いられます。第1期は3歳児に6~28日の間隔で2回、翌年4歳児に1回追加接種するのが標準的です。第2期は9歳児に1回追加接種します。

 

 

百日せき

 

百日せきは、百日咳菌という細菌によって引き起こされる感染症です。風邪のような症状から始まり、徐々に咳がひどくなり、息を吸うタイミングで「ヒューヒュー」という笛を吹くような音がする咳発作が見られるようになります。咳が収まるまで約100日間(3ヵ月程度)続くことから、百日せきと呼ばれます。

百日せきのワクチンは4種混合ワクチン(DPT-IPV)を用いるのが一般的です。第1期は生後3~12ヵ月のあいだに3週間以上の間隔で3回接種します。その後、追加接種を6ヵ月以上の間隔を空けて1回行います。第2期は11~12歳の期間に1回接種です。

 

 

破傷風

 

破傷風は、破傷風菌が傷口から入って体の中で増えて発症する感染症です。菌が持つ毒素がさまざまな神経に作用し、筋肉の強直性けいれんなどを起こします。治療が遅れると死に至るケースが多いことでも知られています。

破傷風のワクチンには、DPT-IPVや3種混合ワクチン(DPT)、2種混合ワクチン(DT)、破傷風トキソイドが用いられます。第1期は生後3~12ヵ月のあいだに20~56日の間隔を空け3回接種します。その後、追加接種を6ヵ月以上空けて1回行います。第2期は11~12歳の期間に1回接種です。

 

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子供のときにワクチンを接種していても油断はできない

 

季節性インフルエンザは、小児を含め13歳以上の大人も、任意でワクチンを接種することで予防が可能です。結核、水痘、麻しん、風しん、日本脳炎、百日せき、破傷風といった感染症は、現在では一定の年齢までにワクチン接種をするよう、厚生労働省含め各自治体から呼びかけられています。

 

しかし、子供のときにワクチンを接種していたとしても、大人になるにつれて免疫が弱くなることが知られています。特に、麻しん、風しん、日本脳炎、百日せきは、大人でも免疫がなければかかってしまう病気です。また、水痘などは、大人になってからかかると重症化し、合併症を起こして入院することにもなりかねません。過去の病気と思われていた結核も、毎年多くの患者が発生している油断できない感染症です。

楽観視せず、気になるようであれば任意接種となりますが、それぞれのワクチンを追加で受けるようにしましょう。

 

 

ワクチン接種と空気環境の改善で感染症対策を行う

 

ワクチン接種は、感染症を防ぐための有効な手段として活用されています。従来とは異なる新しい種類のワクチンも登場しており、今後の感染症との戦いを制するカギとなるとして、大きな期待が集まっています。

また、新型コロナウイルス感染症などの脅威に対しては、ワクチン接種だけでなく、普段からの感染症対策も非常に重要です。

 

株式会社UPDATER(旧社名 みんな電力株式会社)のエアテック事業「みんなエアー」では、空気環境を可視化し、データの分析・通知・アフターサポートまでを行うクラウドサービス「MADO(マド)」を提供しています。「MADO」は、室内の空気中に含まれる二酸化炭素やPM2.5、揮発性のガスといった物質を計測し、クラウドに送信。コンピューターやタブレットなどのデバイスに表示し、その空間の空気がどのような状態なのかを可視化できるため、換気やその他状況に応じた対策を行うことが可能です。

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