のどの痛みや発熱など風邪の諸症状によく似ていて、見逃されがちな病気に溶連菌感染症があります。
溶連菌はウイルスではなく細菌感染のため、市販薬では効果がないとされています。感染力が非常に強く、種類も多いため繰り返しかかることもあり、大人にも感染する侮れない病気です。こちらでは、大人が注意するべき症状や原因、出勤の目安について紹介します。
溶連菌感染症とは
溶連菌感染症とは、溶血性連鎖球菌という細菌を原因とした感染症のひとつです。感染する原因は、日常的にでるような咳やくしゃみなどの飛沫感染が多く、感染者とのドアノブやタオルなどのものを介した接触による感染や経口感染などでもうつります。これらの感染経路で体に入り込んだ細菌が、鼻やのどの粘膜、扁桃腺、皮膚などに感染し、2~5日間の潜伏期間を経て発症します。子どもに多い病気といわれていますが、感染力が強く大人も感染しやすいため注意が必要です。
また溶連菌は種類が多いため、一度感染して抗体ができても別の種類の溶連菌感染症に感染することもあり、繰り返しかかるということも多いでしょう。春から夏にかけてと、冬に感染拡大のピークがあるとされており毎年流行する感染症のひとつですが、1年を通して感染する可能性は十分にあります。
大人が感染するとどうなる?主な症状とは
溶連菌感染症の主な症状は、のどの痛みや発熱、リンパの腫れです。だるさを感じたり嘔吐を伴ったりする場合もあり、初期症状はインフルエンザや風邪に似ています。その他に特徴的な症状は、舌に赤い斑点が出るほか、全身に発疹が出ることもあります。大人が発症すると頭痛を訴えることも多く、子どもよりも重症化したり、劇症型溶連菌感染症になったりすることがあり注意が必要です。
風邪との違いは、咳や鼻水症状が少ない点です。また、風邪がウイルスを原因とするのに対して溶連菌は細菌が原因であるため、抗生剤の服用で治療する必要があります。症状が悪化してしまうと、中耳炎や皮膚に感染してとびひ(伝染性膿痂疹)に進行したり、リウマチ熱や急性糸球体腎炎、壊死性筋膜炎などの合併症を起こしてしまうケースもあります。
具体的に、リウマチ熱は、発熱、心炎、関節痛などのつらい症状を続発させます。腎炎は、悪化すると腎機能に支障をきたし、透析が必要になることもあり、壊死性筋膜炎は、敗血症を発症し多くの臓器が機能不全となるリスクがあるなど、溶連菌感染症は軽視してはいけない病気であることがわかります。
溶連菌感染症の検査・治療法
検査方法は、長い綿棒を用いてのどの奥の粘膜を採取するだけで、痛みもなく非常に簡単です。5~10分ほどで検査結果もすぐにわかるので、症状と組み合わせて総合的に診断されます。
そのほか、検体を培養して数日間かけて検査を行う方法や、血液に含まれる抗体を検査する方法などがあります。
治療方法は、抗生剤の投与です。処方された抗生剤を服用開始すると細菌がほぼ消滅し、24時間以内には、人にうつす危険性もなくなります。通常は、2~3日で熱も下がり、のどの痛みや発疹も軽減するでしょう。ただし、症状が軽くなったからと服薬をやめてしまうと、再発したり別の病気を引き起こしたりするため、処方された抗生剤は最後まで飲み切りましょう。
溶連菌感染症にかかったあとは、急性糸球体腎炎などを起こすリスクが少なからずあるため、病院によっては2週間後と1ヶ月後に尿検査をして血尿・蛋白尿の有無を調べるところもあるようです。
溶連菌感染症になったら出勤していいの?
溶連菌感染症になったら会社は休むべきか悩む方も多いでしょう。子供は学校保健安全法で登校・登園禁止期間が定められていますが、大人については法的な規則はありません。
溶連菌感染症は、非常に感染力が強いため周囲への配慮が必要でしょう。抗生剤の服用開始から24時間経過するとまわりへの感染力がなくなり、通常であれば2~3日で症状も和らぎます。そのため少なくとも、感染したことがわかったら出勤は控え、服薬開始24時間経過後の翌日以降に、体調と見合わせ出社判断をするのが良いでしょう。
溶連菌感染症の予防方法
溶連菌感染症は、家族間での感染率が20~60%ほどといわれており、大人の場合は家庭内で子供から感染する可能性が高いといえます。
家族や会社などの周囲に罹患した人が出たら、まずはマスクをして飛沫感染を防ぎましょう。そのほか、手洗い・うがいの徹底、共有部分の定期的な洗浄・消毒を心がけてください。家族間では、タオルや食器などの共有も避けましょう。
抗生剤の投与治療が即効性があり有効な感染症ですので、疑わしい症状が見られたらすぐに医療機関を受診しましょう。周囲への二次感染や合併症のリスクを防ぐことができます。
感染症対策には空気環境の見直しも大切
溶連菌感染症は、再発や合併症のリスクがあるため、早期の診断と適切な治療が必要です。溶連菌の服用期間は、風邪薬などと比べるとやや長く、症状の回復とともに、いつまで飲み続ければいいのか悩まれる場合もあるようですが、処方された薬は最後まで飲み切り、しっかりと治すようにしてください。
適切な治療と対策が周囲の人の健康も守ります。また、家庭やオフィスの空気環境を整備することで感染症対策にもつながります。
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