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人が感染症に感染する経路には、主に「空気感染」「飛沫感染」「接触感染」の3つがあります。このうち、空気を介して感染する空気感染を予防する有効な方法のひとつに、マスクの着用があります。
ここでは、空気感染の概要と感染症予防に期待できるマスクの効果のほか、予防効果を高めるマスクのつけ方について解説しましょう。
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空気感染とは?
空気感染とは、空気中を浮遊するウイルスや細菌を含んだ微粒子を吸い込むことで感染が起こるものです。感染者が咳やくしゃみをすることで、口からウイルスや細菌と水分を含んだ飛沫が周囲に飛び散ります。
飛沫はわずか数十秒程で水分が蒸発し、消える場合もありますが、飛沫より小さく直径5μm(マイクロメートル:1,000μm=1mm)以下の「飛沫核」という微粒子になって、空気中を漂う場合もあります。この微粒子を吸い込むことで感染するのが、空気感染です。
空気感染とマイクロ飛沫感染の違い
新型コロナウイルス感染症の感染経路のひとつに、「マイクロ飛沫感染」があることがわかっています。これは、感染者が話したり、咳やくしゃみをしたりしたときに飛沫といっしょに飛び散り、長時間空気中にとどまる小さな粒子「エアロゾル」を吸い込むことで、感染が起こるものです。
日本の厚生労働省は、このマイクロ飛沫感染と空気感染は別物としていますが、2つを同じと定義する国や機関、専門家も少なくありません。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染経路としては、ほかに飛沫感染と接触感染があります。飛沫感染は飛び散った飛沫を吸い込むことによる感染で、接触感染は物を介した感染のことです。
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空気感染や飛沫感染はマスクで防げる?
空気感染や飛沫感染を防ぐには、鼻や口からウイルスの吸い込みを防ぐことが大切です。マスクのフィルターの目は、一般的な不織布マスクの場合、5μm程です。飛沫の大きさは5μm以上なので、不織布マスクは飛沫を防ぐことができます。しかし、より小さな飛沫核やエアロゾルの侵入は、防ぎきることが難しいのです。
そのため、飛沫核やエアロゾルの侵入をしっかり防ぎたい場合は、0.3μmの微粒子を95%以上捕集できることが確認されている医療用高性能マスク「N95マスク」が有効です。
マスクの役割と効果
「飛沫核やエアロゾルの侵入を防げないのであれば、空気感染対策としてマスクはあまり効果がないのでは?」と思いがちですが、実はそうではありません。感染症対策としてのマスクの効果は、感染者が空気中にウイルスを拡散するのを防ぐと同時に、非感染者が空気中のウイルスを吸い込んで感染を防ぐ、双方の効果があることがさまざまな研究からわかっているのです。ここでは、マスクの役割と効果について詳しく解説します。
マスクの着用状況による効果の違い
感染症対策としてのマスクの効果は、非感染者が空気中からウイルスを吸い込むのを防ぐ効果より、感染者からのウイルス拡散を防ぐ効果のほうが高いことがわかっています。
厚生労働省がまとめた感染症情報「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」によると、人と人が50cmの近距離に近づいて会話をする状況で、聞き手だけがマスクを着用、話し手だけがマスクを着用、両方がマスクを着用のそれぞれのケースにおいて、ウイルスの飛散・吸い込みを抑える効果は次のとおりです。
■布マスクと不織布マスクのウイルス飛散・吸い込みを抑える効果
布マスクの場合 | 不織布マスクの場合 | |
---|---|---|
聞き手だけがマスクを着用 | 17%減 | 47%減 |
話し手だけがマスクを着用 | 70%以上減 | 70%以上減 |
両方がマスクを着用 | 70%以上減 | 75%以上減 |
マスクの素材による効果の違い
ウイルスの飛散と吸い込みを抑える効果は、マスクの素材によっても差があります。理化学研究所の神戸大学坪倉誠教授と富岳コロナ対策プロジェクト飛沫感染チームによる「室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策」によると、マスクの素材によって吐き出す飛沫の量・吸い込む飛沫の量は、次のとおりです。
■マスクの素材別・吐き出し・吸い込み時の飛沫量
マスクなし | ウレタンマスク | 布マスク | 不織布マスク | N95マスク | |
---|---|---|---|---|---|
吐き出し飛沫量 | 100% | 48% | 24~28% | 18~24% | 1% |
吸い込み飛沫量 | 100% | 82% | 48~70% | 25~45% | 2% |
※実際に人が市販マスクを着用して、米国労働安全衛生局が定めたフィットテストプロトコルにもとづいた試験を行い求めた数値:粒子径0.015μm以上の物質
上記の結果より、N95マスク以外の一般的に販売されている不織布、布、ウレタンのマスクの中では、不織布マスクが最も効果が高いことがわかります。
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正しいマスクの着用方法
マスクには感染症を予防する効果が期待できますが、着用方法が間違っていると隙間からウイルスが出入りしてしまい、あまり意味がありません。マスクがその効果を発揮するには、正しく着用することが大切です。重要なポイントは、下記のとおりです。
鼻と口をしっかりと覆うタイプを選ぶ
マスクは大きすぎず小さすぎず、鼻と口をしっかりと覆えて、顔にフィットするサイズや形の物を選びましょう。サイズ感がわからない場合は、親指と人差し指でL字を作り、耳の付け根のところに親指の先端を当て、鼻のつけ根から1cm下に人差し指の先端をあて、そのときの親指から人差し指までの長さを測ります。その長さが9~11cmであれば子供サイズを、10.5~12.5cmなら小さめサイズ、12~14.5cmなら普通サイズ、14cm以上なら大きめサイズが最適です。
マスクの表裏と上下を確認する
マスクの表裏と上下を正しく認識していないというケースもあります。マスクのノーズワイヤーがついているほうが上側、耳掛けゴムが接着されているほうが裏側です。プリーツ(ひだ)は下向きになるのが正しい方向です。
ノーズワイヤーを活用する
マスク着用時に顔の中心からずれないように、まずマスクを半分に折って軽く折り目をつけます。マスクを開いたらプリーツを伸ばしながら広げ、しっかりと鼻に沿わせて装着しましょう。ノーズワイヤーを押して鼻の形に合わせることで、きれいにフィットさせることができます。
隙間を作らない
片手で鼻周りのマスクを押さえながら、プリーツを伸ばして顎の下までしっかりと覆います。頬と接する側面が浮きやすいので、装着したら両手のひらで、顔に沿うようにさわってなじませるのがおすすめです。
鼻周りから呼気が抜けてメガネが曇ってしまうのは、隙間がある証拠です。ノーズワイヤーを調整するなど、マスクとの隙間をなくすようにします。
顎下に隙間ができるときは耳ひもをねじる
マスクのサイズが大きすぎて顎の下に隙間ができてしまうときは、耳ひもをねじってから装着することで隙間ができにくくなります。なお、長時間マスクを着用することで耳が痛いときは、マスク用ストラップや、専用クリップなどのグッズの活用が便利です。
二重マスクの効果はあまり変わらない
マスクは二重にしたほうが効果はあるように思えますが、理化学研究所などのチームが「富岳」を使って行った検証によると、二重にしても飛沫を防ぐ効果が大幅に高まることはなく、1枚を顔に密着させて着用する場合と大差がないという結果でした。
二重マスクには、「息苦しさが増す」「蒸れやすくなる」というデメリットもあるため、マスクは不織布であれば1枚で十分に効果があり、正しく着用することが重要です。
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空気感染対策はマスクの着用と空気環境の整備が大切
空気感染を予防するには、マスクを正しく着用し、ウイルスの飛散と吸い込みを抑えることが重要です。また、マスク着用のほかに、こまめな換気と空調設備の導入によって、室内に滞留する飛沫や飛沫核、エアロゾルを減らすことも有効です。
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