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浮遊粒子状物質という大気汚染物質が存在することをご存じでしょうか。PM2.5や黄砂などとも関連のある物質で、屋外ではもとより、室内にも侵入してそこで暮らす人や働く人に健康被害をもたらす可能性があります。
ここでは、浮遊粒子状物質の定義のほか、種類や発生源、室内での浮遊粒子状物質対策などについて解説します。
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浮遊粒子状物質は大気汚染物質の一種
浮遊粒子状物質とは、「大気中に浮遊する粒子状物質のうち、粒径が10マイクロメートル(1μm=0.001mm)以下のもの」を指します。このことは、大気汚染防止法という法律で定義されています(大気汚染防止法施行規則 第18条の2)。
浮遊粒子状物質を「SPM」と表記する場合がありますが、粒子状物質は英語ではParticulate Matter(PM)です。これに「浮遊性の」という意味のSuspendedが加わると「SPM:Suspended Particulate Matter」となり、浮遊粒子状物質という意味を表します。
浮遊粒子状物質は、大気汚染物質の一種です。大気汚染物質には気体である二酸化硫黄(SO2)や二酸化窒素(NO2)などのガス状物質と、固体の小さな粒からなる粒子状物質(PM)の主に2種類があります。それら粒子状物質の中で、粒径(粒子の直径)10マイクロメートル以下の物質を浮遊粒子状物質というわけです。
なお、PM2.5(微小粒子状物質)は、粒子状物質の中の、粒径が2.5マイクロメートル以下の物質のことです。
浮遊粒子状物質が生成される仕組み
浮遊粒子状物質というのは、大きさで分類した総称なので、さまざまな物質が含まれています。生成過程によって分類すると、一次生成粒子、二次生成粒子のふたつがあります。
一次生成粒子
一次生成粒子は、煤塵や粉塵など、すでに粒子としての性質・状態を持つ物です。発生源から直接、最初から粒子として排出される物質ということです。
二次生成粒子
二次生成粒子は、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、揮発性有機化合物(VOC)といったガス状の物質が、大気中で光やオゾンなどと化学反応を起こして粒子化した物です。
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浮遊粒子状物質の発生源
浮遊粒子状物質の発生・生成のメカニズムは、複雑かつ多岐にわたります。しかし、大まかに分ければ、自然起源のものと人為起源のものに二分することができます。なお、発生源が存在する場所は、国内外を問いません。
自然起源
浮遊粒子状物質は、自然環境から発生する場合があります。
例として、黄砂や砂塵など、風によって巻き上げられた細かな土壌粒子、噴火などで上空に吹き上がった火山灰などの火山噴出物、海水が蒸発したあとに残る海塩粒子などが挙げられます。
人為起源
人間の活動から、浮遊粒子状物質が発せられる場合もあります。代表的な発生源は、工場や自動車、船などです。工場などで使われる燃料の燃焼によって「すす」が排出され、浮遊粒子状物質になります。ディーゼル自動車も、排出するディーゼル排気微粒子(DEP)にすすが含まれているため、浮遊粒子状物質の発生源のひとつです。
また、自動車が道路を走行するときも、浮遊粒子状物質の人為的な発生源になります。道路を走行する際、摩擦によって生じる、アスファルトやタイヤのゴムかすからなる道路粉塵も、浮遊粒子状物質になるからです。
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浮遊粒子状物質の人体への影響と濃度の目安
浮遊粒子状物質は、人体に対して健康被害を与えることで知られています。どのような健康被害がもたらされるのか、またどれくらいの濃度になると注意が必要なのか、目安も解説します。
浮遊粒子状物質による健康被害
一般的に、粒径が10マイクロメートル以上の粒子であれば、呼吸によって人が鼻から吸引したとしても、大部分が鼻腔の粘膜に吸着されます。その先の気道や肺にはそれほど多く達しないため、健康被害も限定的なものになります。
しかし、粒径が10マイクロメートル以下になると、気管にまで入り込みやすくなります。PM2.5に分類されるような、さらに小さな粒子は、気管支や肺の奥にまで吸い込まれて、肺胞という場所に付着するといわれています。肺胞にまで達しても、通常は肺胞マクロファージという白血球の一種が微粒子を捕食して消化しますが、量が多くなればそれも追いつかなくなります。
その結果、浮遊粒子状物質が気管支喘息や気管支炎といった、呼吸器の疾患を引き起こす可能性があります。また、肺がんのリスクを高めることや、不整脈など循環器への影響も懸念されています。
さらに、浮遊粒子状物質の中でもディーゼル排気微粒子(DEP)は、古くから発がん性が疑われていて、研究が続けられています。最近では、呼吸器疾患の原因物質やアレルギー疾患との関連性も指摘されています。
環境基準となる浮遊粒子状物質の濃度
浮遊粒子状物質の大気中の濃度は、環境基本法にもとづく環境庁告示によって、「1時間値」と「日平均値」のふたつを満たすように定められています。その環境基準は次のとおりです。
<浮遊粒子状物質の環境基準>
・連続する24時間における1時間値の平均値が0.10mg/㎥以下であること
・1時間値が0.20mg/㎥以下であること
環境基準というのは、「人の健康を保護する上で維持されることが望ましい」とされる数値です。
ですから、これを超えたからといって、直ちに健康に害が及ぶというわけではありません。しかし、大気中の浮遊粒子状物質濃度がこの環境基準内に収まっていれば、ひとまず安全に生活ができると考えていいでしょう。
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浮遊粒子状物質濃度の調べ方と環境基準の達成状況は?
続いては、大気中の浮遊粒子状物質濃度を知る方法をご紹介します。また、環境基準が達成できているのか、最近の状況についても見ていきましょう。
そらまめくんを使うと大気汚染の濃度がわかる
浮遊粒子状物質の全国各地域の濃度は、環境省による大気汚染物質広域監視システム「そらまめくん」で確認することができます。サイトにアクセスしたら地域を選び、表示設定で「浮遊粒子状物質(SPM)」を選ぶと、その地域の大気汚染状況がわかります。
そらまめくんでは、測定局種別を「一般局」と「自排局」、そしてふたつを合わせた「全局」から選択することができます。一般局とは一般環境大気測定局の略で、大気汚染防止法第22条にもとづき、環境大気の汚染状況を24時間常時監視する測定局です。これに対し、自排局は自動車排出ガス測定局の略で、大気汚染防止法第20条および第22条にもとづき、自動車排出ガスによる環境大気の汚染状況を常時監視する測定局のことです。
出典:環境省「環境省大気汚染物質広域監視システム(そらまめくん)」
近年の浮遊粒子状物質による汚染状況は低下傾向
環境省の2021年3月の報道発表によれば、2019年度における環境基準の達成率は、一般局で100%、自排局でも100%でした。
10年前の2009年度は一般局98.8%、自排局99.5%でしたので、大気汚染の状況は改善しており、現在も汚染状況は低下しているといえます。
その理由は、工場や自動車など、浮遊粒子状物質をはじめとする発生源への規制が効果を上げているからでしょう。工場などから発生する浮遊粒子状物質は、煙突などで上空の高い場所へ排出することが義務づけられています。自動車に対しては、ディーゼル車規制をはじめとする自動車排出ガスに対する取り組みが行われ、結果につながっているようです。
室内の浮遊粒子状物質対策
外気の汚染が低下傾向にあるとはいえ、浮遊粒子状物質による人体への影響がなくなったわけではありません。ここでは、オフィスなどで実践できる室内の浮遊粒子状物質対策をご紹介します。
室内(会社内)の汚染状況は「MADO」で確認できる
浮遊粒子状物質は、窓開けや24時間換気システムなどによって、簡単に室内に入り込みます。また、室内での喫煙や暖房器具の使用のほか、消臭剤や整髪料、制汗剤などのスプレー類の使用も、浮遊粒子状物質を発生させることがあります。
そこで問題となるのは、浮遊粒子状物質は煙などの状態になっていない限り、ほとんど目に見えないこと。室内がどの程度汚染されているかが、判断できないのです。
そのため、近年は室内の空気環境をモニタリングする装置やサービスが登場しています。例えば、空気環境を可視化し、データの分析・通知・アフターサポートまでを行うクラウドサービス「MADO」は、オフィスや店舗の空気中に含まれるTVOC(総揮発性有機化合物)やPM2.5をはじめ、二酸化炭素、揮発性のガスなどの物質を計測してモニタリングすることができます。
空気清浄機を上手に使う
浮遊粒子状物質を室内の空気中から除去するには、空気清浄機を用いる方法が有効です。空気清浄機の中でも、0.3マイクロメートル以上の粒子を捕集できる「HEPAフィルター」を用いた製品であれば、浮遊粒子状物質やPM2.5を、フィルターを使って排除することができます。
換気のために窓を開けるときなどは、空気清浄機をフルパワーで稼働させるなどして、室内空気環境を良好な状態に保ちましょう。
「MADO」で会社内の空気の状況を常に監視し、数値を確認しながら換気や空気清浄機を活用すれば、より確実に空気環境を管理することができます。浮遊粒子状物質による健康被害防止にも役立つはずです。
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浮遊粒子状物質(SPM)を意識した空気環境対策を
浮遊粒子状物質(SPM)は、PM2.5や黄砂などに比べると知名度が低いため、意識して対策をすることは少ないかもしれません。しかし、PM2.5や黄砂と同様に室内にも入り込み、人体に健康被害をもたらします。その存在をしっかりと認識し、チェックして、会社などの室内空気環境を正常に保つようにしましょう。
株式会社UPDATER(旧社名 みんな電力株式会社)のエアテック事業「みんなエアー」では、空気環境を可視化し、データの分析・通知・アフターサポートまでを行うクラウドサービス「MADO」を提供しています。「MADO」は、オフィスや店舗など室内の空気中に含まれる二酸化炭素やPM2.5、揮発性のガスといった物質を計測し、クラウドに送信。事業者のコンピューターやタブレットなどのデバイスに表示し、その空間の空気がどのような状態なのかを可視化できるため、換気やその他状況に応じた対策を行うことが可能です。
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